(3-1) 複利金融商品時価の経時変化グラフには対数目盛縦軸を使う
株式会社は毎年の利益の一部を設備投資や研究開発に回して、結果として会社の価値を高め(つまり株式の市場価格、Priceの上昇)、更に、利益の一部を配当として株主に還元する。国は配当に課税(20%、不況対策で10%になることもある)し、株主は税引き後の配当を得る。この配当を我々株主が株式に再投資すれば株式投資による資産価値は一層増加する(税引き前の全配当を再投資できたとしたときの計算上の“株価指数”は「Gross指数」と呼ばれる;一方、税引き後の全配当を再投資したときの計算上の“株価指数”は「Net指数」と呼ばれる)。こうして得た利益は翌年の企業利益(株式投資利益)の原資となり、資産の増加は年数経過と共に複利で増えてゆく。
現実に株主が株式投資の成果として手にできるのは、Price上昇と税引配当の再投資による保有株式の増加であり、株式投資(そして債券投資や預金も)は複利で資産価値増加(Price やGrossやNetの時価上昇)が起こる。株式のように複利で増額する金融商品の評価額の経時変化をグラフ表示するときは、縦軸を対数目盛りにすべきであって、線形目盛(一次比例の目盛、通常の目盛、金額増分が縦軸の長さに比例するような目盛)の軸を使うのは良くない。その理由は次の通りである:
a 円を、n 年間に亘って、年利 r (分率表示、%表示の年利は100×r % になる)の複利運用した結果 y 円になったとすると、
y = a × (1 + r)^n ------------- (3-1-1)
(x^n は「x の n 乗」という指数関数をあらわす記号です)
となる。高校か大学の数学で習ったように記憶しているのだが、定数( (1 + r) のこと、ただし、定数 > 1)のn乗というタイプの関数(指数関数)は、n の増加に伴って最も急激に値の大きくなる関数であって、縦軸が線形目盛のグラフにすると右端で急に立ち上がる(図3-1-1)。
一方、(3-1-1)式の両辺の常用対数を取ると(なお、このブログでは対数の底である 10 はいつも省略する。 つまり log(x) は x の常用対数を意味する)
log(y) = log(a) + n × log(1 + r) --- (3-1-2)
となり、株価のPrice, Gross あるいはNet 評価額の対数 を投資期間 n に対してプロットすると、切片が初期株価の対数「log(a) 」で、傾きが(1 + 利率)の対数、つまり傾き「log (1 + r) 」の直線になり、分かり易く、そして様々な金融商品の成績比較が容易なグラフが得られる(図3-1-2)。なお、常用対数目盛りにおける 0.1 の増減は、価格そのもの(数学用語では真数)では概ね25%の増減に相当する。常用対数目盛の+1の増加は元の値(真数)では10倍増である。
線形縦軸目盛のグラフと対数縦軸目盛のグラフの差異は、次のような二つの株式の価格の経時変化を図示・比較するとよく判る。ここで比較する二つの株式とは赤株式(赤線グラフ)と青株式(青線グラフ)であり、それぞれの初期株価と運用成績の年利表示値が
株式名 初期株価 運用年利
赤株式 ¥1000 4%
青株式 ¥50 8%
とする。投資先として選ぶべきは年利の高い青株式で、100万円を投資して30年間運用したら、1006万円になっている。一方赤株式に同じ100万円を投資していたら、324万円にしかなっていない。
ところが、図3-1-1を見れば判るように、株価をそのものの値を縦軸とするグラフでみると、赤株式の株価上昇(赤線グラフ)は、青株式の株価上昇(青線グラフ)よりも華々しく急上昇していて、赤株式に投資すべきであるように見える。赤株式の初期株価(単価)が青株式より高額である為に起きた錯覚による。こういった錯覚をもたらすグラフを使うべきではない。
一方、常用対数目盛の縦軸を使って赤株式と青株式の株価の経時変化を図示すると、図3-1-2のようになり、青株式の傾き(右肩上がりの傾斜)の方が、赤株式の傾きよりも大きい。こうして対数目盛の縦軸を使って株価(金融商品価格)の経時変化を図示すると、選択すべき金融商品は右肩上がり傾斜の大きい方の商品で、グラフから直感的に選ぶことが出来る。
従って、金融商品の価格の経時変化を図示するときは、縦軸に対数目盛を使うべきである。そのとき、値そのものの大小ではなく、グラフの傾きの大小に注目して、傾きの大きなものを探せば、適切な金融商品選択ができる。
更にもう一つ大事なことがある。グラフを描いて相互に比較したいときは、出来るだけプロットが直線になるように、グラフの軸(線形目盛か対数目盛かなど)と関係式の形を整えておくのが良い。なぜなら、複数の曲線の相互比較に較べて、複数の直線の相互比較(ズレや直線同士の傾きの差異など)は格段に判り易いからである。
と言う次第で、このブログでは金融商品評価額の経時変化グラフには常用対数目盛の縦軸を使う。グラフ作成に MS Excel 2003 を使うと、対数尺度目盛に真数値を入れるという便利なグラフが画けないので、対数値そのものを目盛に書き込むことになり、慣れるまではヤヤ不便である。
(2009/6/15)(2011/5/19/手直し)
現実に株主が株式投資の成果として手にできるのは、Price上昇と税引配当の再投資による保有株式の増加であり、株式投資(そして債券投資や預金も)は複利で資産価値増加(Price やGrossやNetの時価上昇)が起こる。株式のように複利で増額する金融商品の評価額の経時変化をグラフ表示するときは、縦軸を対数目盛りにすべきであって、線形目盛(一次比例の目盛、通常の目盛、金額増分が縦軸の長さに比例するような目盛)の軸を使うのは良くない。その理由は次の通りである:
a 円を、n 年間に亘って、年利 r (分率表示、%表示の年利は100×r % になる)の複利運用した結果 y 円になったとすると、
y = a × (1 + r)^n ------------- (3-1-1)
(x^n は「x の n 乗」という指数関数をあらわす記号です)
となる。高校か大学の数学で習ったように記憶しているのだが、定数( (1 + r) のこと、ただし、定数 > 1)のn乗というタイプの関数(指数関数)は、n の増加に伴って最も急激に値の大きくなる関数であって、縦軸が線形目盛のグラフにすると右端で急に立ち上がる(図3-1-1)。
一方、(3-1-1)式の両辺の常用対数を取ると(なお、このブログでは対数の底である 10 はいつも省略する。 つまり log(x) は x の常用対数を意味する)
log(y) = log(a) + n × log(1 + r) --- (3-1-2)
となり、株価のPrice, Gross あるいはNet 評価額の対数 を投資期間 n に対してプロットすると、切片が初期株価の対数「log(a) 」で、傾きが(1 + 利率)の対数、つまり傾き「log (1 + r) 」の直線になり、分かり易く、そして様々な金融商品の成績比較が容易なグラフが得られる(図3-1-2)。なお、常用対数目盛りにおける 0.1 の増減は、価格そのもの(数学用語では真数)では概ね25%の増減に相当する。常用対数目盛の+1の増加は元の値(真数)では10倍増である。
線形縦軸目盛のグラフと対数縦軸目盛のグラフの差異は、次のような二つの株式の価格の経時変化を図示・比較するとよく判る。ここで比較する二つの株式とは赤株式(赤線グラフ)と青株式(青線グラフ)であり、それぞれの初期株価と運用成績の年利表示値が
株式名 初期株価 運用年利
赤株式 ¥1000 4%
青株式 ¥50 8%
とする。投資先として選ぶべきは年利の高い青株式で、100万円を投資して30年間運用したら、1006万円になっている。一方赤株式に同じ100万円を投資していたら、324万円にしかなっていない。
ところが、図3-1-1を見れば判るように、株価をそのものの値を縦軸とするグラフでみると、赤株式の株価上昇(赤線グラフ)は、青株式の株価上昇(青線グラフ)よりも華々しく急上昇していて、赤株式に投資すべきであるように見える。赤株式の初期株価(単価)が青株式より高額である為に起きた錯覚による。こういった錯覚をもたらすグラフを使うべきではない。
一方、常用対数目盛の縦軸を使って赤株式と青株式の株価の経時変化を図示すると、図3-1-2のようになり、青株式の傾き(右肩上がりの傾斜)の方が、赤株式の傾きよりも大きい。こうして対数目盛の縦軸を使って株価(金融商品価格)の経時変化を図示すると、選択すべき金融商品は右肩上がり傾斜の大きい方の商品で、グラフから直感的に選ぶことが出来る。
従って、金融商品の価格の経時変化を図示するときは、縦軸に対数目盛を使うべきである。そのとき、値そのものの大小ではなく、グラフの傾きの大小に注目して、傾きの大きなものを探せば、適切な金融商品選択ができる。
更にもう一つ大事なことがある。グラフを描いて相互に比較したいときは、出来るだけプロットが直線になるように、グラフの軸(線形目盛か対数目盛かなど)と関係式の形を整えておくのが良い。なぜなら、複数の曲線の相互比較に較べて、複数の直線の相互比較(ズレや直線同士の傾きの差異など)は格段に判り易いからである。
と言う次第で、このブログでは金融商品評価額の経時変化グラフには常用対数目盛の縦軸を使う。グラフ作成に MS Excel 2003 を使うと、対数尺度目盛に真数値を入れるという便利なグラフが画けないので、対数値そのものを目盛に書き込むことになり、慣れるまではヤヤ不便である。
(2009/6/15)(2011/5/19/手直し)
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