(8-3) リーマンショック株価暴落と過去の株価暴落の比較

 2007年10月に始ったリーマンショック世界金融危機の株価暴落が今後どのような経過をたどるか推測する参考にしたいので、1929年の大恐慌、1989年の日本資産バブル崩壊、1990年のスウェーデン資産バブル崩壊における株価の経時変化をグラフにして比較した。やはり、今回の危機では、近い内に、小幅であっても、もう一度は株価下落が起きそうな気がする。あるいは株価低迷横這いが今後(今=2010年3月)1年間前後の間続くのかもしれない。

 1929年の大恐慌前後におけるダウ平均(Price指数、US$表示、これしか入手できない)、1989年の日本資産バブル前後におけるMSCI-JAPANの日本円表示NET指数(税引配当再投資した日経平均のようなもの。ちなみにTOPIX指数も日経平均指数も配当再投資時の指数の時系列データを無料では入手できない。一方MSCI社の指数は長期時系列データがPrice, Gross, Netの3指数とも無料で簡単に入手できる)、日本バブル崩壊と同時期に起きたスウェーデンの資産バブル崩壊におけるMSCI-SwedenのUS$表示 Net指数、2007年のリーマンショック世界金融危機における米ドル表示のMSCI World Index のNet 指数(先進国23ヶ国の平均株価の米ドル表示、税引き配当再投資の指数)の常用対数を、それぞれ株価指数のピーク時点で重ねてグラフにすると、図8-3-1のようになる。黒線が大恐慌前後におけるダウ平均の値動き、赤線が日本資産バブル崩壊前後における配当再投資日本株価平均の値動き、青線がスウェーデンバブル崩壊前後のスウェーデン平均株価、そして緑線が今回のリーマンショック世界金融危機におけるMSCI World Index/US$(先進国平均株価指数のドル表示、税引配当再投資)の値動きである。2009年以降2010年3月の現在も進行中の金融危機のデータ(緑線)は2010年7月末まで含めて図8-3-1に示した(図8-3-1を2010年7月末までのデータを含むものに更新した)。4つの株価指数とも、それぞれのバブルピーク株価指数(月末値表示)の対数値ならびに指数ピーク時を一致させてグラフにしている。

画像
(/2010/8/7/図を更新。2010/7/30株価までグラフに含めた。グラフをクリックすると拡大できます)

 バブル株価ピーク打ちの5年前までの四者の値動きはよく似ている。しかしよく見ると、今回の金融危機の直前5年間の株価上昇率は、大恐慌、日本バブル崩壊、スウェーデンバブル崩壊(北欧バブル崩壊とも呼ばれているらしい)のときに較べて、やや傾きが小さい、即ち株価暴騰速度が緩やかであった。これは今回の危機が株を主舞台としてなかったためと考えられる。今回の株価暴落は債券での失敗のトバッチリの面が大きいと推測される。と言うことは、株価の持ち直しは比較的速いと期待できるかもしれない、金融崩壊誘導の主役を演じるほど大きく下落したのではなかったのだから。

 ピーク打ち後の株価変化の様子は四者で大いに異なる。最も悲惨なのは大恐慌(黒線)でダウ平均株価は下落してピークの11%になり、日本バブル崩壊(赤線)はピーク3年後の底打ちまでは大恐慌より遥かに良くてピーク値の47%になっただけだったが、ピーク打ちの11年後(グラフ右端)になると、大恐慌と同様な悲惨さである(日本の“失われた13年とも20年”とも言われている)。スウェーデン株価は下落してピーク2年半後にピーク値の59%までの下落で底を打って、以後は極めて順調な株価上昇(景気回復、好景気)である。世界では日本の失敗、スウェーデンの成功と言う具合に対比して評価されているらしい。

 いずれにしても、大恐慌、日本バブル崩壊、スウェーデンバブル崩壊において、株価底打ちは株価ピークの2年半から3年後であったが、最近の危機の方が早めに底打ちが来ているようにも見える。以上より、今回の金融危機の底打ちは、株価ピーク2007年10月の2年ないし3年足らずの後で2009年秋ないし2010年夏・秋であろうと予測される。今回のリーマンショック危機における現時点(2010年3月中旬)までのMSCI-WI Net/US$指数の最低値はピークの1年4ヶ月後(2009年2月)でピーク値の46%までの減額で、既に日本バブル以上の株価下落を経験している。過去の危機前例(特に日本バブルとスウェーデンバブル)に似た振舞いなら、今回の危機ではもう一度株価下落が来た後で本格的な回復開始かもしれない。あるいは、そうでないかもしれない。

 2009/4/28のNew York Timesに、1929年の大恐慌後の米国平均株価回復は底打ちの4年半後だったという研究結果が紹介されていたらしい(Yahoo-Finance-USAへの転載)。その要旨は以下の通り: 
ダウ平均(Dow Jones Industrial Average)は1929年9月3日の$381.17をピークに以後暴落して大恐慌に入った。ダウ平均がこのピーク株価に戻ったのは25年後の1954/11/23(第二次世界大戦終了の9年後)であった。しかしこれは、名目上の株価についてであって、実質的には1936年年末頃(株価暴落開始の7年後、株価底打ちの4年半後)には、米国の平均株価は大恐慌前のピーク価格に回復していたという。そのからくりは、(1)1936年当時は、1929年に較べて18%のデフレだったので、株価にデフレ補正を加えた購買力基準の株価で測る;(2)1932年7月の株価底打ち(ピークの2年7ヵ月後、ダウ平均はピークの11%にまで下落)の頃、米国株の平均的な配当は株価の14%くらいあった。これを再投資していれば、株価暴落による損失からの回復も早い(Yale Univ., Prof. Shillerの主張による;Case-Shiller不動産指数のShiller教授らしい);(3)米国の全上場株式の平均株価の方がダウ平均(ダウ平均は30社平均株価)よりも早く回復していた(イボットソン社の統計)。即ち米国の全上場株式の時価平均でみると、1932年7月の株価底打ちのとき株価はピークの20%(ダウ平均の11%ではなく)にまで下落していた;これら3つの要素を勘案すると、大恐慌下の米国の平均株価(配当再投資、インフレ・デフレ補正した購買力基準の株価、全ての米国株式への広範囲分散投資)は、株価底打ち後4年半経過した時点で、大恐慌前のピーク株価まで回復していたことになる。今、株式投資で大損を被っている個人投資家も投げ出さずに頑張っていれば、数年の後には損失は回復すると希望を持ってよい。

 今回の金融危機が1929年の大恐慌に類似して進むと、株価の2回目の底打ちは2010年夏か秋、暴落前の株価に戻るのは2014年後半ということになる。或いは、大恐慌や日本と北欧のバブル崩壊に学んで、今回の金融危機への対策が有効に働いて、もっと短期間に経済が回復するかもしれないし、或いは人間はそれ程賢くないかもしれない。こうなると、当たるも八卦当たらぬも八卦の世界である。

 今(2010年3月)から2年間くらいに亘って定期的に(つまり、投資時期の分散、例えば月末毎の定額投資)、充分に分散の効いた株式投資(投資先の分散:先進国やエマージング国の株式に分散投資、この株式投資に日本株を含めても高々10%程度にする方が無難ではなかろうか)を実施し、その後4―5年放置すれば、そこそこの投資収益を手にできるかもしれない。これが、図8-3-1をつらつら眺めると頭に浮かぶ夢想である。

 この項の図と文章の一部を改訂して新しい項を作りました(http://williberich.at.webry.info/201107/article_2.html)。
(2009/6/16 11:15) (2009/10/5/改訂)(2010/8/7/図の更新)

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