(3-2) 日本、先進外国、エマージング国の株価の歴史

 近年の資産運用理論によると、市場発行されている全ての株式をそれぞれの時価総額に比例した金額比で購入し長期保有するのが最も“効率的な”投資法であるとのこと(CAPM理論、キャップエム理論と読む)。これを基に、追加型インデックスファンド(通常の投資信託のうち、インデックス型と呼ばれるもの)やETF(Exchange Trade Fund、株式市場で一般の株と同様に取引されている投資信託。例えば東証コード1306の銘柄「TOPIX連動型上場投資信託」などがこれである)購入によるパッシブ運用(Passive, 「受動的」)を基本として以下の話を進める。プロがアイディアと投資技術を駆使して積極的に運用するアクティブファンド(Active, 「積極的」。運用者が手間暇掛けるのでその手間賃として信託報酬が高い。ところが、それに見合う高い成果が出ることは論理的に有り得ない。なぜなら現代の株式市場参加者の80%以上が投資のプロ。投資成果競争で勝つのも負けるのもプロ同士。よってプロが運用するから勝つ、高い確率で勝つという論理はありえない。一方、プロの極めて高い給料を負担するので、その分だけ投資家の取り分が減額される)を買ってはならない[チャールズ・エリス著「敗者のゲーム」日経出版]。また、個別株も買ってはならない。本業に忙しいサラリーマンが個別株を選ぶ為にかける時間が、投資成績に見合うことはまず無いからである。

 米国の投資顧問会社 MSCI Barra 社(MSCIの語源はMorgan Stanley Capital International) は、世界の株式市場を日々調べ、各国の平均株価を纏めて指数化し、様々な株価指数を毎日更新しながら無料で公開している。公開しているのは毎日の市場株価指数(Price)のみならず、配当再投資を仮定した株価指数(Gross)の計算値や、更に課税で減額された配当の再投資まで考慮した株価指数(Net、ルクセンブルグの投資家が手にする投資成果で計算)の日々の値と、これら指数の過去の全データを数表として無料公開している。これらの指数は、http://www.mscibarra.com/products/indices/stdindex/performance.html から得ることができる。日経新聞社や東証が日経平均株価やTOPIX指数(Priceに相当する指数)のみの現在値のみしか無料公開していない(その他の指数や過去データは有料らしい)のとは大違いである。これが、株式投資を開始するとすぐに「MSCI」の4文字を目にする程に投資の世界でMSCIの株式分類や株式評価が行き渡っている(つまり、世界の株式投資を牛耳っている)理由である。なお、「日経平均」の株価(Price)は日本銀行のHPの経済統計(http://www.boj.or.jp/type/stat/dlong/fin_stat/rate/index.htm#stock)の中に時系列データが無料公開されている。

 ここではMSCIの投資哲学に沿い、各国を先進23ケ国とエマージング25ケ国に分類し、それぞれの国の発行株式時価総額で加重平均した得たNet株価指数(Japan, Kokusai, Emerging指数)を使う。
  Japan (ここではJPNと略記) TOPIXないし日経平均に近い性格の日本株価の指数
  Kokusai (KKSIと略記) 日本以外の先進国(22ケ国、シンガポール、香港まで含む)の株価指数
  Emerging (EM)  エマージング25ケ国の株価指数(BRICs、メキシコ、イスラエル、東欧諸国など)
  World Index (WI) 先進23ヶ国全て(含日本)を株式時価総額で加重平均した株価指数
  All Countries World Index (ACWI) 先進国とエマージング国、計48カ国の加重平均株価指数

 なお、2009年6月時点において、世界の株式時価総額における各国の占有率は、日本10%、日本以外の先進22カ国78%、エマージング国12%であった。日本株:先進外国株:EM国株の時価総額比の最新の値はNYSE (New York Stock Exchange市場)で取引されるETFである、iShares MSCI ACWI Index Fund (Ticker code = ACWI)Vangard Total World Stock ETF (Ticker code = VT) の ”Fact Sheet” を調べると得られる。
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MSCI社の日本(Japan、JPNと略記)、日本以外の先進国(Kokusai、KKSIと略記)並びにエマージング国(Emerging countries, 発展途上国、略号はEM)の税引配当再投資株価(Net)の指数の時系列データを図3-2-1に示す。

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      (クリックすると拡大図が出ます)

 まず言えることは、1990年(平成2年)正月の日本の資産バブル崩壊以降、2009年9月の現在に至る20年間に亘って、日本の株価は大局的には緩やかな下降線に乗っている。と言うことは、残念ながら、この期間における日本株式への投資は基本的に損失をもたらしている。日本株投資で資産増額に成功した投資者は、小泉改革中期(2002年、2003年)に日本株を購入し、そして米国サブプライムローン金融危機顕在化前に株式を売払った投資家だけである。

 一方、先進外国の株式(具体的には、MSCI KOKUSAI指数追従のインデックス・ファンド)への長期投資(14年間以上)はどの時点で投資を開始していても正のリターンを得ている(図3-2-1より明らか。2008年夏までの話)。

 ここで言いたいのは、為替リスクを避けて国内投資に限定することは、世界への投資に較べて遥かに収益が減額され、あるいは損失をこうむる可能性が高い。そして、図3-2-1をじっくりと眺めると、1985年のプラザ合意(ドル高円安推進の合意)の後の金融過剰緩和政策による資産バブル開始ののち、或いは1990年正月のバブル崩壊後は今に至るまでの約25年ないし20年に亘って、日本経済は歪んだままで、正常な発展をしているようには見えない。よって日本への投資は小額に留めておく方がよいだろう。日本経済回復が読み取れた段階で、日本株への投資を増額し始めればよい。とは言っても、日本株への投資は為替リスクを担わないし、政治経済の現状把握も容易なので、海外株式投資に較べて魅力的である。

 図2-2-2に示された日本円の実効実質為替レート推移を見ても同じ結果が得られる。即ち、日本円の価値は2000年頃をピークに下落し続けていて、全資産を日本国内に留めておいた人は、資産の実質価値の下落に巻き込まれている。図3-2-1の赤線(MSCI Japan指数、日経平均に近い指数;配当再投資、日本円表示値)は、1990年1月以降2009年4月の現在に至るまで、日本株式への投資は基本的に損失をもたらしてきたことを示している。世界の株式投資の常識は、「何時投資をしても、株式へのインデックス投資は10年(あるいは15年)保有すれば正のリターンをもたらす」(先進外国株式については、少なくとも2008年夏まではこれは正しい。しかし、1998年から2008年年末の10年について、これは正しくない)であるが、日本株式にはこの常識が通じてないのは残念である。

 なお、アメリカ経済も1966年頃から1979年頃までの13年間に亘って不況継続、株価低迷に苦しんだが、1979年のボルカーFRB議長のインフレ退治策成功(ボルカー ショック)後、米経済・米国株価の順調な成長が始った。日本の経済低迷脱出がどのような形で誰の指導の下で進むのだろうか?世襲政治家にこれを出来るとは思わない。徳川家(世襲政治家の典型)に明治維新が出来なかったのと同じである。 (2009/9/11 UP)

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