(3-5-(3)). 株式投資はジェットコースター

 図3-5-3(記事(3-5-(2)で既掲載の図の再掲)は、株式投資を長期間続けたときの平均リターンがどのような範囲に収まるかを示したもので、このようなグラフは資産運用本や投資解説ブログでよく目にする。そのとき、しばしば陥る誤解は次のような錯覚である。例えば、図3-5-3の“最悪実績”グラフ(黒点付太線)を見ると、投資1年後に実績リターン‐53%だったのが、2年、5年、7年、10年、15年と経過するにつれて‐34%、-9%、‐2.9%、‐1.5%、+0.10%と年数経過と共に実績の年利換算値が改善されて行ったように錯覚する。しかし、この図は1回の最不運投資の時間経過を追ったのではなく、1969年12月以降2009年9月までの間の全ての、例えば、10年間投資の中の最悪実績の年利表示が‐1.5%(これは1999年2月末の投資)であったこと、1年間投資の最不運投資が年利‐53%(これは、2007年2月末の投資)だったと言うばらばらの事実を纏めて図示したものである。
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 一回の投資の経時変化の追跡は、例えば、1999年2月末開始の投資の1年後の成績は年利+30%の好成績であったが、5年後の成績の年利換算値は+1.2%に低下、7年後には+7.6%まで回復したのに、10年後の成績の年利換算値は元本割れの‐1.5%で(10年間経過後に元本割れ!)、10年間投資の実績の中の最悪例になってしまった。

 1990年代における1年間運用実績が最良(1995年6月の月末投資)と最悪(1994年5月の月末投資)だった投資の、その後の経過を追ったものを図3-5-4に示した。またこの図には、最悪の10年間投資実績となった1999年2月の月末投資と、運用成績が乱高下になった1998年3月の投資成績追跡もあわせて図示した。いずれにしても株式投資の運用成績は常にジェットコースターに乗っているような乱高下の連続である。しかしこれを平均年利で表すと図3-5-4のように、投資果敢が長期になるにつれて平均年利表示の成績は平均値に近づいてゆく。
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 株式投資がジェットコースターということは、修正市場比株投資(JPN:KKSI:EM=33:40:27)への100万円投資の評価額そのものの時間経過を示した図3-5-5でもっとよく実感できる。
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 精神衛生上最も幸運だった投資は1995年6月の投資(赤線)で、投資翌年には150万円、3年後には200万円になり、以後上下するが評価額が130万円を切ったことが無い。1998年3月の投資(緑線)は、投資後5年で60万円まで減額したが、10年後には140万円になった後、11年後に70万円に下落して元本割れ、でもその半年後には元本までは戻った。1999年2月の100万円投資(青線)は1年後に130万円、ところが2年後には105万円になって5年後まで続き、7年後になって155万円に増加、ところが10年後になって80万円まで値下がりの元本割れである。将に株式投資はジェットコースターの乱高下の連続である。図3-5-3のグラフを「株式への短期投資は乱高下だけれども、長期投資になると乱高下は緩和されると」と理解するのは全くの誤解で、株式投資は短期も長期も緩やかな右肩上がりに載ったジェットコースターの乱高下の連続であり、乱高下が穏やかになることなど無い。僅かながらも右肩上がりの故に充分長期間経過すると、ジェットコースターが急降下しても元本割れまで下がらなくなると言うことは事実である。

 この評価額乱高下が統計学的にはどのように見えるかを、図3-5-5の3本の細線グラフによって示した。修正市場比投資(JPN:KKSI:EM=33:40:27の金額比の投資)のリターン期待値とリスク期待値はそれぞれ r = 7.36%, σ = 18.11% である(表3-5-1に掲載済)。図3-5-5の緑色細線は平均リターンの複利計算曲線 y = (1 + r)^n で(「^n」はn乗を表す)、赤色と青色の細線は確率98.8%の限界(平均値からのズレが±2.5σ以下)を示す曲線 y = (1 + r)^n ± 2.5σ√n (nは投資年数) である。統計学は、修正市場比投資の運用成績は98.8%の確率で赤と青の2本の細線グラフの間に収まると予測するが、図3-5-5の4本の実績曲線(4本の太線)は全てこの確率98.8%の2本の曲線には囲まれた領域内での乱高下に過ぎない。

 図3-5-5の青細線曲線によると、修正市場比株投資においては、投資の5年後頃に元本の40%程度にまで評価額下落が起こりうると覚悟しておくと、それ以上に悪いことは起こらず、その最悪の5年投資に遭遇しても更に5年待てばかなりの成績まで評価額は上昇する。

 図5-5-5から判るもう一つのこと:最不運株式投資でも、株式投資後ほったらかしにしていても14年経過後なら元本割れは無いとの予測(当たる確率99%)。逆に言えば、株式投資のみの資産運用で且つ投資後ほったらかしなら、14年経過するまでは何時元本割れが起こってもおかしくない。

 なお、株式のみに限った投資の成績乱高下を緩和する方法として、(1)株式と逆相関の債券への投資を同時に行って評価額総和の変動を抑える、(2)半年ないし1年毎に株価上昇で収益が上がっていればその一部を変動の少ない債券投資に廻し、株価下落中には債券投資からお金を株式投資に廻して次の株価上昇に備える(リバランスと呼ばれる操作)と良いことが知られている。株式投資と債券投資の組合わせについて、そしてリバランスについても後で検討する。(2009/11/2/UP)

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