(5-3). 最適長期ポートフォリオの構築と検証

この節の要旨:日債:外債:日株:外株:EM株 = 34:20:0:0:46 の金額比の「最適長期ポートフォリオ」は、リターン期待値7.16%、期待リスク13.29%で、6年間以上の運用期間なら元本割れは起こらない(1998年以降の実績)。寝かせておける期間が6年以上のお金は「最適長期ポートフォリオ」で運用し、6年未満のお金は「最適短期ポートフォリオ」(3年未満なら普通定期預金)で運用する。長期ポートフォリオに従う投資の1年・2年スケールの評価額変動は極めて大きい。
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 長期投資のポートフォリオを組み立てる。長期投資は高リスク高リターンの株式投資が中心になるが、債券価格が株価変動と逆相関を示すのでこれを混ぜ込んだポートフォリオを組上げて高リターンを保ちながらリスク低減を図ることになる。
 表5-1-1のリターン・リスク・相関係数に基づいて、タロット氏の「効率的フロンティア計算シート Ver.1.1.1」を用いて、日債、外債、日株、外株、EM株の5つのインデックスファンドの組合せから出来るポートフォリオのリスクとリターンを計算すると図5-3-1の青点群のようになる。この図では、同一リスクの内で高リターンのポートフォリオが重点的にプロットされている。
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    (図をクリックすると拡大図が出てきます)

 ”長期投資”ポートフォリオとして、円表示のMSCI World Index (先進23ヶ国の市場規模比加重平均株価)の対数プロットの傾きから求めたリターン( リターン=10^{365.25×(対数vs日数プロットの傾き/日)} -1 ; 2009年11月末現在計算値、r = 7.16%;(3-6)節の記事の図3-6-1のプロットを参照 )と同程度のリターンを与える組み合わせの内でリスク最小のものを選ぶことにする。あまり高リターンを狙って高リスクを背負い込むよりは、7.2%前後という適度のリターンで低リスクのものを選ぶ。最適として選び出したのは、図5-3-1の赤菱形点のポートフォリオで、
  日債:外債:日株:外株:EM株 = 34:20:0:0:46 の金額比
期待リターン=7.16%
  期待リスク=13.29%
  リターン/リスク=0.539
の組み合わせになる。このポートフォリオは、高リスク高リターンのEM株にそれと逆相関の日債とほぼ無相関の外債をかなり混ぜ込んで中リスク中リターンにしたものと見なせる。表5-1-1を見ると、日債、外債とEM株のSharpe比が同程度で、他の2クラスの金融商品のSharpe比よりも大きいこと、且つ日債や外債とEM株の間の相関係数が負あるいは小さい正値であることから、日債、外債とEM株の組合せが長期と短期の両方の“最適”ポートフォリオになることは当然の結果である。このポートフォリオを妥当な「最適長期ポートフォリオ」として採択するか否かの総合判断が求められる。このポートフォリオは、国債発行残高が先進国中で突出している日本の債券と、社会制度や金融制度の未熟なエマージング国(中国、ブラジル、インド、ロシア、メキシコ、旧ソ連圏の東欧諸国など)の株式への投資が中心で、それに欧米先進国の国債への投資が加味されたポートフォリオである。欧米や日本などの先進国の株式投資が全く無いポートフォリオである。ちょっと怖いポートフォリオである。

 最近20年間の日本株の指数が右肩下がり傾向であること(第3章第2節、図3-2-1参照)、ならびに日本債券への高比率の投資で為替リスクの軽減が図られているので、修正市場比株投資(日株:外株:EM株=33:40:27)に較べて日本株への投資無くなっていることは妥当と考える。最近は外株(先進国株式;MSCI KOKUSAI指数)とEM株(MSCI Emerging Markets 指数)の間の強い相関と後者のSharpe 比(r/σ)が前者のそれよりかなり大きいことを考えると、外株への投資が無くても良いのかなとも考える。以上から、「最適長期ポートフォリオ」として計算したとおりの日債:外債:日株:外株:EM株 = 34:20:0:0:46 の組合せを選んでみることにする。株式投資がEM株のみというのは危険ではあるが、半年毎にポートフォリオの検討を行ってリバランスすることにして、2009年11月から半年間はこの“最適長期ポートフォリオ”を試してみるのも悪くない選択と判断する。

 次に、最適長期ポートフォリオ(日債:外債:日株:外株:EM株 = 34:20:0:0:46)の運用成績を、1998年10月以降2009年10月までの期間について調べる。これ以前の外債ファンドの時価が判らないので、この期間の検証しか出来ない。結果を図5-3-2に示した。
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   (図をクリックすると拡大図が出てきます)

 一括投資のリターン(年利表示)の運用期間依存性は、半年間運用(空色細線)では-50%から+80%の幅で分布しているが、1年間運用成績(黒細線)では‐30%から+30%の分布幅に狭まり、6年間運用(赤太線)では+3.7%から+20%の範囲になり、1998年10月以降の検証期間内(これ以前の外債ファンドデータを入手できず、これ以前の検証は不可能)では元本割れ実績は無い。投資時期の分散の効果を調べる為に、3年間の毎月末に定額投資を行った後3年間放置(3年分散3年運用:緑太線)と3年分散6年運用(茶色太線)の成績も図5-3-2に含めて示した。3年分散3年運用(緑太線;運用期間は3年間から6年間に分布する)は一括投資6年間運用(赤太線)よりも全般的には少し良好なように見え、3年分散6年運用(茶色太線)は一括投資9年運用(ピンク太線)よりも良好な成績である。

 図5-3-2に掲載の運用実績期間にはリーマンショック世界金融危機のどん底期(2009年1月-同年5月)を含むので、この図以上に悪い運用成績はめったなことでは出てこないと期待してよい。よって、ここに掲載の「最適長期ポートフォリオ」(日債:外債:日株:外株:EM株 = 34:20:0:0:46)は6年間以上の長期間に亘って寝かせておけるお金の運用に適していると判断する。退職金などの纏まったお金を「最適長期ポートフォリオ」に投資する場合は、3年間くらいの期間に分散させて毎月定額を投資するのが良い。現役サラリーマンの場合は、毎月の定額投資で期待リターン7.2%前後の運用成績を達成できるはず。

 なお、寝かせておける期間が6年未満のお金は、この最適長期投資ポートフォリオで運用してはならない。6年未満の運用期間で換金した場合はピンク細線の3年運用のシミュレーションのように元本割れになってしまうことがある。3年以上、6年未満の運用期間しか取れないお金は、前項の最適短期ポートフォリオで運用するべきである。

 最後にこの「最適長期ポートフォリオ」への100万円投資が時間経過と伴にその評価額を変えていったシミュレーションの幾つかを図5-3-3に示した。また、98.8%の確率で起こりうるポートフォリオ評価金額の推移を3本の点線で示した。評価額実績推移は点線の範囲からはみ出している。このはみ出しの主因は、リターン期待値の計算値が過小に算出されたことだと考えている。検証期間末期にリーマンショック金融危機の株価暴落があり、リターン・リスク計算において過去に向かっての統計重み減衰を取り入れていることがこのズレをもたらしている。
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   (図をクリックすると拡大図が出てきます)
図5-3-3は、合理的分散投資であっても、株式投資の重みが大きいときは、評価額の乱高下の大きいことを示している。12ヶ月、24ヶ月(つまり1年・2年)の期間での評価額乱高下は時として本当に大きいが、それでも、長期間(70ヶ月、つまり5年)位のタイムスケールでゆったりと評価額変動を眺めると、これが右肩上がりになっていることが判る。長期投資はこのゆっくりした右肩上がりを狙うものと言うことを肝に銘じて、短期乱高下に惑わされないことが肝要であろうと考える(自戒)。
(2009/11/8/UP) (2009/12/5/改訂)
 

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