(7-1) 運用リスク管理実務:マネーフロー表作成と運用期間別投資先決定

 資産運用における「リスク管理」の大切さは色々な資産運用関連の書籍、新聞記事、ブログで強調されている。ここでは、極めて具体的なリスク管理方法を提案する。全ての理念も概念も、具体化方法を伴ってこそ有用である。将に、戦略は細部に宿る。

 注意:このブログでは、リターン、リスク、相関係数を、金融商品時価の時系列データに、半減期20年で過去に向かって減衰する“統計的重み”を付けて算出した。これに基づいて長期と短期のポートフォリオを算出した。この統計処理の欠陥は、もし金融商品の一部にバブルが起こっていると、このバブル商品を高く評価して、ポートフォリオ中の投資割合を高めてしまう。一方、長所はその裏返しで、停滞/衰退中の国への投資を減額し、興隆してゆく国への投資を増やす。そして、このブログで算出されたポートフォリオの投資先は日本国債、先進国国債、新興国株式となっている。日本ならびに海外先進国の株式への投資は殆どゼロである(全部で2%以下)。現在の状況を、(1)新興国バブルの可能性がある(でもバブルではないかもしれない)、(2)国債バブルかも知れない(でも当分は弾けないかもしれない)と論じられている。新興国バブル、国債バブルの両バブルが現在進行中なら、ここで提唱するポートフォリオの近い将来は悲惨である。迷う。(2010/1/11/“注意”部分追記)

 資産運用における適切なリスク管理の基本は、運用に使った金融商品(投資信託や銀行定期預金)の現金化に際して元本割れを起こさないことであると考える。それ故、(1)元本割れに出くわさない、(2)出来るだけ高い期待リターンを狙う、この2点両立を目指して資産運用全体のポートフォリオを組立てることが、”資産運用のおけるリスク管理”であると考える。

 これまで見てきたように、「最適短期ポートフォリオ」への投資は半年以下の短期間内の時期分散で投資して計3年を超えて運用すれば、元本割れはまず起こらない。「最適長期ポートフォリオ」への投資は3年分散投資3年運用、計6年を超えた期間を経過すれば、元本割れは大抵の場合は起こらい。そして「最適短期ポートフォリオ」の期待リターンは定期預金よりも高くて2.0%、「最適長期ポートフォリオ」ではもっと高くて7.2%。一方、銀行預金金利は低いが元本割れは起こらない。

 従って、寝かせておける期間に応じて保有資金を分割し、寝かせる期間に応じて資金の投資先を変えることになる。このためには、家族の全ての収入と支出を1年単位で纏めた時系列表(これをここでは「マネーフロー表」と呼ぶ。ヘンな名前だが、良い名前が出てこない)を作成しなければならない。マネーフロー表の作成は大変であるが、取り敢えず大まかにエイヤッと山勘で、収入は何歳頃幾らと予測し、家の購入(なお、少子化時代の今は、持ち家よりは借家の方が経済合理的であるとの見解が多く出始めている)やその補修は何時で予算はこの位、家族旅行や帰省の予算推定、車の買換えや車検費用、大型家電や給湯器・調理加熱器具の買換え費用、家屋の改装費用、子供の教育費の予算推定、子供の結婚資金援助の時期と予算など、決めようのない予算の時期と金額を強引に表に記入する。その後は老後生活費が続く。マネーフロー表の最後は自分達自身の介護・入院費と葬式費用で終わりになる(それ故、死亡予定年も計画する。このためには平均余命表が役立つ)。マネーフロー表の最左欄は家族の年齢欄になる。家族の年齢に応じて様々な家族史が築かれ、そしてお金が流れてゆくからである。この表には気付く度に修正を加えてゆく。マネーフロー表が生きている間に出来上がるということは有り得ない、常に改訂してゆくことになる。そして、人生は「まさか」と「してきたことの必然的成行」の織り成す綾錦、予測し計画した通りには展開しないが、でも予測と計画がまるっきり無意味でもない。というわけでマネーフロー表を作り、それに基づいて資産運用を進める。

 まず、失業や大病・事故などに備える“生活防衛資金”(木村剛著、「投資戦略の発想2008」より)の金額として、直近2年分の全支出金額(生活費、通常の娯楽費、まだ残っているならローン返済なども全てを含める。年金受給者の場合は前記の全支出金額から受取る年金額を差引く。年金には“失職”が無いので差引いてよい)を算出する。この生活防衛資金の金額の預金を常に保有する。これは失職(リストラ、勤務先倒産など)や大病という非常事態になって収入が途絶えたときに慌ててしまって失敗しない為に備えて保有しておくお金であり、万一の非常事態乗り切り資金である。この金額のお金はリスク金融商品購入に廻してはならない。この金額のお金は6ヶ月から1年位の普通定期預金(仕組預金や新型預金などは駄目)の自動継続で常に保有しておく。繰り返すが、この生活防衛資金は、平常時には保有しているだけで、使うことはない。使うのは交通事故や大病、失業や災害時などの緊急事態に巻き込まれたときのみである。

 次に、今後3年間の“貯蓄取崩額”を査定する。車の購入や家屋補修など大きな買物の予定金額、生活費不足の補充金額(年金生活者や下宿中の大学生が2人以上の現役サラリーマンにはこの金額が出てくる)を積算し、その予算金額分の預金を準備する(つまりリスク金融商品の売却やボーナスの貯め置きなど)。通常の状態の現役サラリーマンには“貯蓄取崩額”は零であり、生活運転資金として一カ月分の生活費位が普通預金で置いてあれば充分である。この貯蓄取崩額は実際に使ってゆく。

 以上を纏めると、預金(長くて1年定期預金、主として6ヶ月定期預金を使う。金利の高いネット銀行の定期預金を使いたい。繰り返すが、普通定期預金を使う。)で保有すべき金額は、生活防衛資金と今後3年分の貯蓄取崩し見込額の合計金額ということになる。

 次に、住宅ローン、自動車ローンなどがあれば、まずこれらローンを全額返済する。複利計算の効用は、投資の時には自分自身の資産増加に鼠算で(数学用語では指数関数的に)大変有利に働く。その裏返しで、借金は複利で大きな負担をもたらす。ローンの金利は必ず国債の金利よりも高い。国債よりも高い金利のローンを抱えながら、国債に投資をするのは自己矛盾である。国債(あるいはその代替金融商品)への投資をせずに株式投資だけするのは暴挙であり、将来、巨額損失を抱え込む。よって結論は、国債よりも高い金利のローンは、投資を始める前にまず返済すべきである。

 上記の生活防衛資金と貯蓄取崩予定金額の預金を確保し、ローンを完済したら、マネーフロー表に照らして手持ち資金を寝かせておける期間別にリスク商品購入金額を割り振る。全資産金額を表7-1-1の様に割り振る。このような割り振りの理由は、最初に書いたように、資産運用ポートフォリオの元本割れ無の換金に必要な投資期間が、ポートフォリオによって異なるからである。即ち、低リスク低リターンの“最適短期ポートフォリオ”はリターン2.0%で、元本割れ無の最短運用期間は3年。高リスク高リターンの“最適長期ポートフォリオ”のリターンは7.2%と高いが、元本割れ無になる為には6年間の運用期間が必要である。
画像
   (表をクリックすると拡大された表が出てきます)
(2009/12/11/UP)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 横並び運用富生かせず ~2009/7/17日経より

    Excerpt:  少し古い記事だが、今なおこの状況は変わらないと思うので、この記事を紹介いたいと思う。  よく聞く話だが、日本の個人金融資産は全... Weblog: 金融起業家 河合圭のオフショア投資ブログ racked: 2010-02-13 16:13
  • マネーの管理術

    Excerpt: マネーの管理術を紹介します Weblog: マネーの管理術 racked: 2010-03-10 21:27