(10-3) 短期ポートフォリオ(2年以上運用で元本割れなし)

 この記事よりは、(10-6)の改訂版の短期ポートフォリオの記事をご覧下さい。
 日債:EM株=95:5の固定比のポートフォリオを「短期ポートフォリオ」と名付ける。この短期ポートフォリオへの投資実績シミュレーションは、一括投資後2年の投資期間を経過すれば元本割れは起らないことを示した。そしてその平均リターンは定期預金利息よりも高い。纏まったお金を「短期ポートフォリオ」で運用する場合は、投資時期分散よりも一括投資する方が良い。そして半年毎にリバランスすれば一層良い短期投資結果を得る。

 運用期間が2年から4年くらいの短期投資のポートフォリオを考える。運用期間2年未満の資金(生活防衛費と2年未満で使う予定のお金)は定期預金や円建MMFなどの安全金融商品で運用した後に現金化する。これらはリスク無し(つまり元本割れ無し)の金融商品での運用である。その次に“長い”期間(つまり、2年間以上)寝かせておけるお金をどのように運用するかを考えるわけである。

 まず、最も安全と考えられるリスク商品である日本債券インデックス投信のみへの投資の場合について、その実績を調べる。日興BPIの総合指数を基に、国内債券インデックス投信(信託報酬など投信の経費を差引いた評価額)に月末一括投資して1年間、2年間、或いは3年間放置した場合の投資成果を平均年利(つまりリターン)で表して図10-3-1に示した。平均年利は投資実行月に大きく依存する。国内債券投資リターンの大きな変動が落ち着いた西暦1996年以後のみに注目して、1年間、2年間、ならびに3年間運用のリターン平均値とリスクは表10-3-1のようになる。
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 年間リターンの平均値は1.2ないし1.3%、リスク(標準偏差)は投資期間1年での1.86%から3年間運用での0.85%まで長期運用に伴い評価額変動幅の1年間換算値は小さくなる(注:変動幅そのものは長期投資の方が大きい)。
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 図10-3-1で注目すべきは、最安全(最低リスク)金融商品である国内債券投資への3年間投資であっても、不運ならば元本割れが起こっている。即ち2002年12月末から2003年8月末の9ヶ月間の国内債券インデックスファンド一括投資は、投資して3年経過した後でも元本割れとなっている。この時期の国内債券投資の元本割れは、投資時期を半年間や1年間程度分散しても(即ち、定額積立投資しても)2年間程度の運用期間では元本割れから逃れることは出来ない。次に悪い結果は、2005年6月の投資で、2年経過後でも元本割れ、3年経過後にやっと元本回復であった。

 そこで、国内債券に、海外先進国債券や海外株式への投資をも組合わせることによって(つまり、負の相関や無相関の金融商品間の組合せを利用して)元本割れを短期間で逃れることを検討する。Appendix A-7で示したように、元本割れでなくなるのに要する投資期間はリターンrのリスクσに対する比の二乗、 (r/σ)^2 、に反比例するので、(r/σ)比 が最大になるような金融商品の組合せを試してみればよい。元本割れ回避最短期間の投資とは、最安全投資であり、低リスク低リターンであり、短期間の運用に適した投資であり、国内債券投資が中心になると予測される。そのようなポートフォリオを組む為の金融商品統計パラメータは、直近5年間の指数値の単純平均で算出することにしよう。5年間という期間は短期投資という観点でエイヤッと決めた。

 5年間の統計が取れる期間内での最悪国内債券投資は前述の2005年6月の投資である。そこでその直前5年間の統計に基づいて(r/σ)比 が最大になるような金融商品の組合せを探してみる。統計処理は2000年5月末日から2005年5月末日までの5年間のデータについて行う。すると表10-3-2のようなパラメータが得られた。
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 表10-3-2の5年間のリターンが負になる日株(国内株式)と外株(海外先進国株式)はポートフォリオからはずし、残る3つの金融商品(日債、外債、およびEM株)で(r/σ) 比が最大になるような組合せを探すと、日債:外債:EM株=66:29:5(期待値:r = 4.64%, σ=3.67%)の金額比が選ばれる。2005年5月末日までの直近5年間の単純平均法統計に基づいて選ばれた上記ポートフォリオに従って翌月(2005年6月)末に投資をすると、その運用実績は図10-3-2のようになる。
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 2005年6月末の100%日債投資なら2007年10月末までの2年4ヶ月間に亘って元本割れであるが、2005年5月末計算の「最大r/σ比ポートフォリオ」なら、投資後に元本割れは起こってない。この投資の2年間の毎月の評価額変動実績を年リターンと年リスクに換算すると、リターン4.75%、リスク2.53%であった。
 
 次にリーマンショック金融危機直前の株価絶頂時点(2007年10月)、同危機の株価下落進行最中の2008年5月、ならびに同危機の株価ドン底時点(2009年3月)の計3つの時点の「最大r/σ比ポートフォリオ」を算出し、それぞれの投資をシミュレートして、「最大r/σ比ポートフォリオ」投資の有効・非有効を点検した。リーマンショック金融危機の3時点ならびに日債投資成績不良の2005年6月(図10-3-2の投資日)の計4時点の「最大r/σ比ポートフォリオ」投資のシミュレーション結果を表10-3-3に纏めた。投資日の後に世界株価急落の続いた2007年10月末と2008年5月末の投資の成績は、2年以上の長期に亘る元本割れという結果になってしまった。この悪い結果は、過去の株価上昇に引きずられてEM株投資の比重が大き過ぎるためである。やはり、投資各時点の直近5年間統計に基づくポートフォリオ算出の方法は、投資実行直近5年間内に起こっていたバブルに引きずられて株式投資の重みが高くなり過ぎるので、バブル崩壊後の株価下落期(2007年10月と2008年5月の投資)の運用成績が悪い。
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 そこで、運用期間5年以内の短期投資の適したポートフォリオとして、表10-3-3作成などこれまでの諸検討を通して妥当と感じられた、日債:EM株=95:5の固定比のポートフォリオの運用成績を調べた。このポートフォリオの2年間運用成績は、1987年12月末以降現在(2010年5月5日)に至る245回の月末投資のうち元本割れになったのは1988年9月末の投資ただ1回のみであり、残り244回の月末投資は全て2年経過後に元本以上に殖えていた。このポートフォリオの1987年12月末以降現在に至る245回の月末投資の2年間運用の年リターン平均値は3.13%であるが、最近の成績はこれ程良くはない。2000年1月以降の平均リターンは1.74%である。それでもこの投資成績は2年定期よりも高い利率となっている。この日債:EM株=95:5のポートフォリオは2年以上寝かせておけるお金の運用に適しており、これを「短期ポートフォリオ」と呼ぶことにする。「短期ポートフォリオ」の運用成績の投資実行日依存性を図10-3-3に示した。 
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 2年以上寝かせておける纏まったお金があるとき、「短期ポートフォリオ」で2年間運用する場合、一括投資するか、或いは投資時期をずらして数回に分けて投資するか(時期分散投資)を検討したところ、予期に反して一括投資の方が好成績と分かった。即ち、3ヶ月に亘る時期分散投資と一括投資を比較した結果を図10-3-4に示した。この図の3ヶ月分散投資で全2年間運用(全金額の1/3ずつを1年10ヶ月、1年11ヶ月、2年間運用することになる)した場合の成績を黒線で示し、一括投資した場合の運用成績を赤線で示した。グラフから分かるように、一括投資の方が好成績である。2000年1月以降の100円投資の場合の2年運用後の成績の平均値は、3ヶ月分散投資で103.0円、一括投資なら103.5円である。時期分散投資の場合、時期分散のためにお金を寝かせておく期間が出来てしまうが、一括投資ならそのような“無駄な”期間ができない。これが一括投資に有利な結果をもたらしたと考えられる。
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 更にこの短期ポートフォリオに対して半年毎のリバランス(rebalance, 時が経つと評価金額比が初期の95:5からずれてくるので、元の95:5の金額比になるように金融商品の売買を実施すること)を加える効果を調べた。1998年10月末に短期ポートフォリオ(日債:EM株=95:5)に投資し、その後は毎年4月と10月にリバランスした場合(図の赤太線)とリバランス無(黒太線)の場合それぞれの評価額推移を対数目盛で図10-3-5に示した。リバランスにおいては、eMAXISインデックス・シリーズの投信を使うことを想定して解約留保分なし、また株式部分の解約時の利益の20%の税金分は差引いて(1998年から2010年までの全リバランス時の納税額合計は初期投資金額の0.0031%だった)評価額推移を算出した。
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 またこの図にはそれぞれの対数プロットへの一次回帰直線(x=経過日数、y=評価額の常用対数)の式を挿入した。直線の傾きから平均年利を算出すると、
   リバランス無の平均年利  1.95% 
   リバランス有の平均年利  1.79%
となって、リバランスした方がリターンはやや悪い。しかし、リバランスすれば(赤線グラフ)評価額変動幅は明らかに小さくなる。1998年10月以降の一括投資において、リーマンショックのような大きな金融危機を経験したにも拘わらず、1年半の運用期間を置けば元本割れは起きてない(大恐慌当時に較べて世界の中央銀行、行政府、議会のリーダ達は格段に優れた金融危機対策を打ったということの反映であり、世界の有能なリーダ達に、そしてその基礎を築いた真摯な経済学研究者達に感謝する)。短期ポートフォリオとしては、平均リターンが少々低下しても半年毎にリバランスして、2年以上の運用期間で確実にプラスの収益を得る方が大切である。

 以上纏めると、日債:EM株=95:5の「短期ポートフォリオ」は運用期間2年以上の短期間投資に適している。このポートフォリオへの投資は投資時期分散よりはドーンと一括投資し、その後は半年毎にリバランスするのが良い。1998年以後の投資実績では、最不運投資でも1年半の投資期間後には元本割れは無く、2年経過すれば正の収益を得ている。最近10年間の平均リターンは銀行定期預金金利よりも高くて、1.79%である。

注: 日債とは、「eMAXIS国内債券インデックス」 或いは 「STAM国内債券インデックス・オープン」 を指し、
   EM株とは、「eMAXIS新興国株式インデックス」 或いは 「STAM新興国株式インデックス・オープン」 を指す。
(2010/5/5/UP) (2010/5/12/リバランスの検討結果を追加)
(2010/5/19/ (10-6)に改訂された短期ポートフォリオの説明を掲載しました)

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