(10-5) 株式指数と債券指数の統計パラメータ値(リターン、リスク、相関係数)

 要旨: 金融商品指数の対数時系列データの長期プロットにおいて、プロットが直線周りに分布していると見なせる直近の期間範囲を選び出し、その期間のデータのみを使って統計パラメータセットを計算する。またリターンは、指数の対数の経時変化プロットの傾きからの計算値と、標準的な単純平均法の計算値の両者の平均値で評価する。こうして得たリターン、リスク、相関係数の値は順当であり、やっと信頼できるセットを算出できた。

 株式や債券の指数の統計パラメータ(リターン、リスク、相関係数)はデータ採録期間や統計的重みの有無とその関数形に依存して大きく変わることは、10章2節で見てきた。そしてポートフォリオの選択は統計パラメータに全面的に依存する。中長期投資のポートフォリオ組立に際して、金融商品指数の統計パラメータの選び方を決めねばならない。ポートフォリオの構築とは、取りも直さず将来予測である。従って、その基礎となる統計パラメータ算出法は、将来予測に適切でなければならず、極端に機械的になってもならないし、また極端に任意性を持たせて恐怖や欲に駆られて、失敗に向かってパラメータ弄りに堕してしまうのも良くない。

 図10-1-1の金融商品指数の対数値の時間推移をじっくりと眺める。指数毎に異なるけれども、直近の或る期間に限ってみれば、どの指数対数値の時系列データも傾き一定の直線の周りにばらついた不規則変動のグラフのように見える。具体的には次の様に見える:
1) 日株(ピンクグラフ)は、1988年から現在(2010年5月)までは、大雑把に言ってプロットは直線に載っている;
2) 外株(黄緑グラフ)は、1974年頃から現在までのプロットが直線に載っていると見なせる;
3) EM株(青グラフ)は、その全範囲(1988年から現在まで)のプロットが直線に載っているように見える;
4) 日債(赤グラフ)は、1998年頃から現在までの範囲のプロットなら直線に載っていると見なせる;
5) 外債(緑グラフ)は、データが採録できた全範囲のプロットが直線に載っていると見なすしかない。
 
 以上のように選んだ期間の直線を将来に向かって外挿して、将来はこの外挿直線を中心にして各金融商品指数値が不規則変動すると予測する。現時点での外挿が将来10年以上に亘る予測として適切とは思えないが、リバランスを半年毎ないし1年毎に行うのであれば、ポートフォリオ修正は余り大きな損失を出さずに出来ると期待しよう。“This time is different” が投資家にとって最も危険な四つの単語と紹介され、ハーバードの経済学担当教授の書いた金融関連書籍のタイトルにもなっている。最近の、ある程度長期の対数表示値動き直線の、将来に向けての外挿に基づく投資は “This time is similar” であって、順当な方法というべきと考える。またまた言葉遊び。

 さて本題に戻って、金融商品指数時系列データから、上の1)から5)の範囲のデータのみを選び出し、それから統計パラメータを算出する。この期間の指数の対数の変動を図示すると、図10-5-1のようになる。褐色プロットで示した $/\ と €/\ 為替レート平均値の推移は単なる参考データであるが、外債指数の緑プロットとの平行関係に注目しておくとよい。
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   (図をクリックすると拡大された図が出てきます)

 リターンを図10-5-1の一次回帰線の傾きから算出してみた。また、通常のように、指数の月間値上り率の単純平均からもリターンを求めてみた。一般に単純平均法でリターンを求めると、データ採録期間の始点と終点の指数値だけでリターン値がほぼ決まり、その信頼性が低い。とはいえ、回帰直線から求めたリターン値と単純平均法で求めた値の間には、特に外債とEM株の場合に極端に大きな差が有る(外債、5.81%と3.68%;EM株、6.60%と14.1%)。どちらを使うかで、ポートフォリオはかなり違った物になってしまいそう。そこで両者の平均値をリターン値として採択することにした。こうして求めたリターン値と各金融商品指数の月間値上り率の差から、それら指数値動きのリスクと相関係数を算出する。この計算において統計的重みを均一とした。こうして求めた統計パラメータ(リターン、リスク、相関係数)を表10-5-1に纏めた。
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   (表をクリックすると拡大された見やすい表が出てきます)

 表10-5-1の統計パラメータセットは極めて順当な値になっていると感じる。と言うよりも、やっと順当な統計パラメータセットを算出・入手できたと感じる。日債は日株、外株、EM株と弱い逆相関を示し、外株とEM株には強い順相関があるのは尤もである。外債と、外株とEM株の二者それぞれの間には並の強さの順相関が認められ、海外投資における為替リスクの重さが感じられる。リターン/リスク比は外株の方がEM株よりもやや大きい(投資にとって、より好ましい)というのも順当なパラメータ値である。

 図10-5-1と表10-5-1に見られるように、1990年以降現在までの20年間に亘って日本株価指数は負の傾きを示し、我が身を守るためには日本株への投資を暫くの間休んでおく方が良い。しかし、早くこのような悲惨な国内経済状態から抜け出さないと、いずれどうにもならない事態に陥る。国が混乱したり、落ちぶれたりしている中にあって、我が身だけを守れるわけがない。(2010/5/18/UP)(2010/5/19/修正、表の差替え実施)(2010/6/3/手直し)



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