(B-2) 元本割れ回避に必要な運用年数の推計―対数正規分布の場合

  資産運用において、運用していた金融商品を換金するとき、元本割れしてないことが重要である。ある金融商品の年倍率の常用対数が正規分布(対数正規分布)していて、その平均値がμ、標準偏差がσとする。この商品のn年間運用を多数回行ったとしたら(思考実験)、そのn年間運用による資産増加倍率の常用対数
   y = log[(n年後の金額)/(初期投資金額)]
は、平均値がn×μ、標準偏差が√n×σの正規分布に従って分布すると期待される。このとき、元本割れ確率とはyの値が負になる確率である。つまり、y < 0 となる確率のことであり、この確率が小さくなることが望ましい。

確率変数yを標準確率変数zに変換する(A-6節のA-6-2式)と
  z = (y – n × μ)/(√n × σ)
となる。この式を変形すると、
  y = z×√n × σ + n × μ
となり、y < 0 となるときは
  z < -n × μ / (√n × σ) = -√n × (μ / σ)
すなわち、
  n > (z × σ / μ)^2  --------- (B-2-1)
となる。すなわち、不等式(B-2-1)を満たすような長い期間(n年間)の運用を行うと、元本割れの確率は標準確率変数が-z以下になる規格化標準正規分布の確率まで低下する。具体的には
元本割れ確率  -zσ  運用必要年数
  16% 以下    1σ  (1×σ/μ)^2 以上
  2.5% 以下    2σ  (2×σ/μ)^2 以上 
  0.15% 以下    3σ  (3×σ/μ)^ 2 以上
である。いずれにしても、元本割れ回避に必要な運用期間は (σ/μ)^2 に比例して長くなるので、この期間を短くする為には、その逆数 μ/σ の値が大きくなるようなポートフォリオを組めば良い。

 なお、記事(20-10)で書いたように、 z < -1.36 σ となる様な不運な事態はめったに起きないと考えてよい。正規分布における標準確率変数 z < -1.36 σ の事象の起こる確率は8.9%であって、
元本割れ確率8.9%以下: z < -1.36σ: 
運用必要年数(n) > (1.36 × σ/μ)^2 ----- (B-2-2)
であり、このブログではこの判断基準を採択する。
 逆に、普通に(確率91%以上で)元本割れを回避できるのに必要な年数が n 年のポートフォリオは、
(μ/σ) > 1.36 / √n ------------- (B-2-3)
を満たす(μ/σ) をもつように組み立てればよいことになる。
 なお、(B-2-2)や(B-2-3)式で計算したn年の運用の後、確率8.9%の不運に出くわして元本割れしているときは、世の中はかなり酷い不景気に陥っているのであり、対策が打たれて不景気脱出に向かい始める可能性が高い。その結果、元本割れした“n年ポートフォリオ”の現金化を少し(数ヶ月)待てば元本割れだけは回避できる可能性が高い。

 最後に、金融商品(年平均値μ、年標準偏差σの対数正規分布)をn年間保有したときの時価の累積増加倍率Y(倍率そのもの、真数)の期待される範囲を見ておく。定義により、y = log Y なので、Y = 10 ^ y である。n年運用後のy の値は、平均値がn × μ、標準偏差が √n × σ の正規分布に従って分布すると期待されるので、確かさのパラメータ(標準確率変数)zを用いて、Yの値は
Y = 10 ^ (n × μ ± z × σ × √n) ------- (B-2-4)
の範囲内になると期待される。時価累積増加倍率がこの (B-2-3)式の範囲内になる確率は z σ の値に依存して次の通りになる:
z σ    確率
1 σ    2/3
1.15 σ  70%
1.36 σ    82%
2 σ    95%
3 σ    99.7%

(2011/3/1/UP)(2011/5/16/追記)(2012/1/28/改訂追記)

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