(20-3) 株式指数と債券指数の対数正規分布の統計パラメータ(リターン、リスク、相関係数)

 統計パラメータ表に掲載の値の一部に誤入力があった。これらを訂正し、それに沿って図や文章も一部訂正した。以下の表や図には誤記は無いはずである。(2012/9/12)

 日債、外債、日株、外株、EM株の5つの“投信指数”の統計パラメータ(リターン、リスク、相関係数)は、各指数の月次データのチャート(図20-2-1、20-2節の図)を見て、プロットが基本的に一本の直線の周りに上下均等に分散していると見なせる期間のみを用いて計算する。これにより無視されることのなるのは、1)1980年台の中頃の日本資産バブル開始以前の日本株式の値動き、2)1997年の三洋、山一、拓銀倒産以前の日本債券の値動きの二つである。つまり、過去の日本経済栄光の時代をパラメータ評価に含めない。具体的には図20-3-1に太線チャートで示されている期間のデータのみを統計パラメータ算出に使う。すなわち、日株は1988年2月以降のデータを、そして日債は1998年2月末以降のデータのみを使う。外債のリターン計算には全データ(1984年12月末以降)を使うが、外債のリスクと相関係数は1998年11月末以降のデータのみを使う。外株は全データ(1969年12月末以降)、そしてEM株は全データ(1987年12月末以降)を使うことにする。外債の扱いが特別なのは、1998年9月以前のデータは同指数のチャートから読み取った値なので変動幅を過小評価しているため、これらデータをリターン算出には使えるがリスクや相関係数の算出には使えないからである。

 こうして、日株と日債のデータだけが最近20年・30年の日本経済不調期間のみのデータを採用して投資配分を考え、先進諸外国の株式や債券ならびにEM株への投資はデータの有る全期間の統計パラメータを基にして投資を考えることになった。これは丸で、外国かぶれ・自虐趣味の投資を好んで選んでいるかの印象を与えるが、そうではない。先進外国でも、エマージング国でも、経済不調・政治不調の国はある。しかし、先進国の株式や債券への投資、あるいはEM株への投資とは、先進諸外国22(債券は21)ヶ国やEM国21カ国の平均指数への投資であり、数カ国の特異的な経済不調は平均値を取る課程で緩和されている。一方、日株投資や日債投資は先進国平均の中に含めてもいいのだが、為替リスクが株式投資そのもののリスクや債券投資そのもののリスクに較べてかなり大きい。従って為替リスクが無い日株投資や日債投資を外国の株や債券への投資と分けて扱う必要がある。こうして日本の株や債券への投資が海外投資とは別の扱いになってしまう。そして “失われた30年”に入り始めた日本経済の不調を表立って取上げざるを得ないことになっている。

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  (図をクリックすると拡大図が出ます)

 まず、「log月倍率」月次データの平均値(“月μ”と表示する)を求める方法を検討する。もし、「log月倍率」のデータの単純相加平均を取ると、その結果は log指数値 の期首値と期末値の差を月数で割った値となる。平均する期間途中の値動きは平均値(月μ)には全く反映されない。もし期首値や期末値が異常な値であった場合(例えば、期首や期末が金融危機あるいはバブルの最中)、月μは異常値になってしまう。よって単純平均は不適切である。
従って、「log月倍率」の平均値“月μ”は、算出に採択する期間全体に亘るlog指数値 の日付(経過日数)に対するプロットの一次回帰線(結局、図20-3-1に示した点線)の傾きkから求めるのが最も妥当であると判断する:
  月μ = 30.4375 k
  年μ = 365.25 k
  ここに k = d log指数値 / d経過日数 (kの定義式)
となる。ここに365.25は閏年も含めた1年の平均日数、それを12等分した1ケ月の平均日数の30.4375を使っている。

log倍率 の月次データから標準偏差σや相関係数ρの求める手順は、上のように求めた平均値の値を使う以外は、通常の“公式”に従って計算する。しかし平均値の取り方が相加平均ではないのでEXCELの組み込み関数(STDEVなど)を利用できず少し手間がかかる。

 2011年1月末までの月次データを使い、上述の手順で求めたlog倍率 の年平均値μ、年標準偏差σならびに相関係数ρを表20-3-1に纏めた。

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     (表をクリックすると拡大した表が出て読みやすくなります)

 表20-3-1に纏めた年倍率の対数正規分布の平均値と標準偏差を、通常良く見られる年利の正規分布の平均値(リターン)と標準偏差(リスク)に換算すると(Appendix B-1参照)、表20-3-2の様になる。勿論、「年倍率の対数正規分布」と「年利の正規分布」とは異なる分布なので変換は一義的ではないが、一応の目安として役に立つ。

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   (表をクリックすると拡大した表が出て読みやすくなります)

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2009年6月23日付けの公表会議資料(http://www.gpif.go.jp/kanri/pdf/kanri02iinkai192.pdf)によると、GPIFが使うリターンとリスクは次の様になっているとのことである:日債(リターン3.0%、リスク5.4%)、以下(リターン、リスク)の書式で略記すると、外債(3.5%、13.25%)、日株(4.8%、22.15%)、外株(3.0%、19.59%)。GPIFの統計パラメータは日本のCPI(インフレ率)を1%と評価してインフレ補正も加えているので、表20-3-2の名目値とは1%程度ずれていてもおかしくないが、それを考えても今回算出したパラメータとGPIFのパラメータの差は大きい。統計パラメータの今回の計算値(表20-3-2に掲載の換算値)を赤菱形でプロットし、GPIF2009年6月発表値を黒四角でプロットして図20-3-2に示した。

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   (図をクリックすると拡大図が出ます)

 図20-3-2から統計パラメータの両セットの値が大きく異なっていることが良く分かる。GPIFのパラメータを使った場合は、1)日債は低リスクのわりに高リターンなので外債投資に較べて日債投資額が多くなる;2)日株のリターン/リスク評価の違いはもっと大きい。GPIFは「日株は高リスクだがそれに見合って高リターンである」と評価しており、外株投資に較べて日株投資額が多くなる。要するにGPIFの統計パラメータは投資するときに“愛国的”アセットアロケーションをもたらす。これとは異なる考え方として、投資成果を上げる(運用成果の現金化の)ときに愛国的(年金基金を積立てた国民が大きな利益を得る)であるべきというのが本来の理屈である。統計処理には厳密や公正から外れるバイアスが入り易いという例でないことを願う。金融工学や統計学の系統だった学習も訓練も積んでない素人が無料入手できるデータのみを使って計算した統計パラメータを、統計学・金融工学の専門家集団が評価したGPIFのパラメータと較べる方がナンセンスとも云えるが、・・・。 図20-3-1の金融商品指数の対数のチャートを比較すると、日債の右肩上がりは極めて緩やかであるが、しかし変動幅は他の四つに較べて格段に小さい。長期の傾きが右肩下がりの日株は別としても、外株指数、EM株指数、外債指数の三つの指数とも変動の幅が極めて大きい。これは為替レートの大きな変動の反映のためと考えられる。 ということは、短期・中期の運用では日債投資のウエートをそこそこ大きくせざるを得ないと予測される。

 最後に、表10-18-1に掲載の統計パラメータと今回計算したパラメータ(表30-3-1)の差異についてコメントしておく。両パラメータセットで大きく異なるのは外債とEM株のパラメータである。1)外債のリターンが今回高い値に変わった。これは長期データが手に入って、長期間で見れば、外債リターンがかなり高いものであることが判ったためである。2)EM株のリターンが今回の計算では悪くなった。従来、EM株のリターンには単純平均法の値を加味していて、そのためにリターンが高く出ていた。今回はこの加味を取止めた。前記のように、単純平均法のリターンは指数の期首値と期末値の差のみで決まり不適切であることが歴然としたので、この加味を取止めた。結果として、EM株のリターンは外株と同程度、リスクは外株よりも大きいことがわかった。これらの統計パラメータの変化を反映して、ポートフォリオにおける外債への配分比率は大きくなり、EM株への配分比率は小さくなると予期される。
(2011/3/2/UP) (2011/4/4/修正)(2012/9/12/誤記を訂正)

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この記事へのコメント

たま
2013年08月25日 11:29
一次回帰線では、事象の発生時刻の影響が大きいのでは?
-___----のとき、回帰線の傾きは右上がり、
----___-のとき、回帰線の傾きは右下がり、
となってしまいます。

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