(20-5) 2011年1月末の対数正規分布統計パラメータに基づくポートフォリオ

要旨: 2011年1月末までのデータから求めた対数正規分布の統計パラメータ(表20-3-1)に基づき、20-4節の記事の方法を使って分散投資ポートフォリオのμとσの期待値を計算・比較して、短期、中期、長期、超長期それぞれの運用期間に適したポートフォリオを組み立てた。


 倍率対数統計/対数正規分布において、分散投資したポートフォリオの運用において元本割れ回避に必要な運用年数はμ/σ比の二乗に逆比例して長くなる(Appendix B-2の記事)。そこで最短期間で元本割れ回避が出来るように、短期ポートフォリオはμ/σ比が最大になるように選ぶ。それにはタロット氏の公開ソフト「効率的フロンティア計算シートVer.1.1.1」(http://tarot-mpt.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/_ver110_a933.html)を使う。そうすると日債:外債:外株=79%:15%:6%のアセットアロケーションが短期ポートフォリオとして求まる。日株とEM株への投資はない。このポートフォリオの元本割れ回避に必要な運用年数の目安は2.9年と見積もられるので、3年以上運用すればまず元本割れを避けることが出来ると期待される。短期ポートフォリオの要点を表20-5-1にまとめた。

 次に超長期ポートフォリオに進む。株式投資のみ(日株、外株、EM株の組み合わせ)で達成できるμ/σ比最大のポートフォリオを計算し、このμに近い値を与え、且つμ/σ比が大きな(従って元本割れ回避必要年数が短い)ポートフォリオを内外の債券と株式の組み合わせで構築するという手順を踏みたい。しかし、表20-3-1の統計パラメータでは、計算するまでもなく外株100%投資がその答になってしまう。これでは分散投資によるリスク軽減が出来ないが、それは要求するμ期待値が大きすぎるからである。そこで超長期ポートフォリオ選択基準を元本割れ回避に必要な運用期間から選ぶことにした。

 短期ポートフォリオは3年間の運用で元本割れを回避できる。そこで、中期ポートフォリオ(元本割れ回避必要年数4年、μ/σ比=0.58)、長期ポートフォリオ(元本割れ回避必要年数6年、μ/σ比=0.47)、超長期ポートフォリオ(元本割れ回避必要年数9年、μ/σ比=0.38)を選択条件に設定し、それぞれの条件下で出来るだけμの大きなアセットアロケーションを選ぶ。この上さらに選択条件が必要になったときは、株式投資の配分比の多いポートフォリオを選ぶことにした。リーマンショック以降世界で金融大緩和が進められたので今後インフレ傾向が強くなると考えられ、債券よりは株式の方がインフレに強いとされていることによる。超長期ポートフォリオの場合、BRICSなどの新興国の成長期待を反映させて、EM株投資分率が適度である(10―30%)ことも選択の条件に加えた。

 こうして運用期間別ポートフォリオを選んでみると、短期ポートフォリオのみはほぼ一義的に定まる。その他のポートフォリオは運用期間が長期になるほど選択条件の追加が必要になり、選択の任意性が高まる。個人的思いも含まれた選択条件も追加しながら計算を進めて表20-5-1に纏めたポートフォリオを得た。

 低リスク低リターンの日債投資は短期と中期ポートフォリオで大きな配分比率であるが、満6年を越える投資期間のポートフォリオでは投資されない。外債は中リスク中リターンであり、短期 < 中期 < 長期 の順に配分比率が増えるが、超長期投資では高リスク高リターンの外株とEM株に席を譲っている。高リスク高リターンの外株投資は運用期間が長くなるにつれて配分比が増える。外株と同程度の高リターンだがリスクが外株より大きいEM株投資は、超長期投資でのみ少し配分される。この超長期ポートフォリオにおけるEM株15%の投資配分比率は、運用リスクが少し高くなるという犠牲を少し払って意図的に高めた値である。選択条件によっては外債30%、外株65%、EM株5%という配分比率を超長期ポートフォリオとして選ぶこともできる。
画像
   (log(x)は、xの常用対数を表します)
   (表をクリックすると拡大された表が出てきます)

 次項(20-6-2)(http://williberich.at.webry.info/201105/article_1.html)での検討によって、日債、外債、外株、EM株のいずれか一つの投信のみに投資運用したときの無元本割れ実績の最長年数は、上の順でそれぞれ5年、11年、14年、16年であった。これらの実績年数も勘案すると、表20-5-1の最右欄に太字で記入した「安全を見込んだ運用期間」を採択して各ポートフォリオを使う運用が無難と考える。

 ポートフォリオは考え方や統計パラメータ算出に採択するデータならびに計算方法によって変わる。いずれにしてもポートフォリオは将来予測に基づくものである。将来予測は頼りないものである。従ってポートフォリオが完全である/完成したということはありえない。気に入ったポートフォリオが変わる度に投資信託を買い替えては資産の減額も起こるし、手間も大変。

 採択するポートフォリオが変わっても、一旦は4年以上にわたる運用を目指して買った投資信託なので、収益が出てない限りそれを売却しないことにしようかと考えている。新しいポートフォリオへの乗り換えは、新規投資資金で投資信託を新しく購入するときにのみ進める。新しい投資資金が出てこないときは、年1回程度のリバランスのときにのみ投資配分比を修正するが、収益が出てない時は余り強引にポートフォリオを変えることは避けた方がいいように思う。

 最後に運用実務について一言。リスク商品(債券、株式、ならびにそれらの投資信託)に投資するとき、最短でも3年間の運用期間を経ないと元本割れに出くわす(厳密に言えば、4年間運用でも15%の確率、つまり7回に1回程度は元本割れになる)。この短期ポートフォリオの平均的な年利はたったの2%である。それなのに、その投資信託を購入する時に2%や3%の購入手数料(平均的収益の1年分以上!)を支払うなどとんでもない。こうして、表20-5-1のポートフォリオによる資産運用には購入手数料無料(ノーロード)でかつ信託経費の安いインデックス型投資信託をネット証券会社で購入するということになる。運用に使う投資信託は、住信アセットマネジメント社の「STAMインデックス・オープン」シリーズ、あるいは三菱UFJ投信社の「eMAXIS インデックス」シリーズのものということになる。
(2011/3/5/UPののち一旦削除) (2011/3/18/項目番号を改めて再度UP)(2011/6/1/手直し)

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    Excerpt:  短期、中期の各ポートフォリオ(長期、超長期は次回)の過去の運用実績を見ておく。目的は、ポートフォリオを組むことによって、元本割れ回避に必要な期間がどの程度短縮されるか、また運用期間の長期化に伴って運.. Weblog: 即物的インデックス運用実務 racked: 2011-06-08 20:19