(20-6) 日債、外債、外株、EM株への長期投資と元本割れ回避必要期間の実績

 資産運用の最重要ポイントは、運用資産の現金化の際に元本割れしてないことである(運用中に元本割れが起こるのは当たり前のことなのだが)。このように考える故に、内外の株式と債券へのインデックス投資の実績を調べた。

 外株(先進外国株式、MSCI KOKUSAI指数)へのインデックス投資信託での長期運用(分配金も再投資)の実績を、1969年12月末から2011年4月末までの月次データから調べた。10年運用の最悪成績と最良成績を与えた投資の評価額推移ならびに14年運用の最悪実績の評価額推移を図20-6-1に示した。
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   (図をクックすると拡大図が出ます)

 最も幸運な10年間運用(図の緑線)は1988年5月末から1998年5月末までの10年間で、100万円投資していればその元本は472万円に増えており、これを平均年利(年複利)に換算すると16.8%という高利率となる。そして最も悲劇的なのは(図の赤線)1999年2月末から2009年2月末(リーマンショック金融危機の株価の底打ちに当たる)までの10年間で、100万円の元本は57万2千円に減少していて、平均年利換算値は-5.43%である。しかし、この最不運10年投資もそのまま更に2年間待って2001年2月末になると評価額は146万になって、元本割れを悠々と回避できている。

 外株インデックス投資は14年間以上運用すると、いつ運用を開始しても元本割れは起こってない。即ち最悪成績の14年運用(図の青線)は1997年1月末から2011年1月末までの運用で平均年利+1.83%であり、元本100万円はこの14年間運用で129万円になっている。この平均年利は同一期間の都市銀行の1年定期預金よりも(多分)高い利率である。つまり、先進外国株のみにインデックス投資するとしたら、それに廻せるのは14年以上寝かせておけるお金のみに限られる。そうすれば最も不運なときですら、元本割れは無く、定期預金よりも高い利率で運用できる。その上「運がよいとき」には、銀行の定期預金よりも数倍高い利率という良い結果が得られることもある。

 外株投資(先進外国株式、MSCI KOKUSAI指数追従の投資信託、分配金再投資)の運用年数を変えながら、各運用年数毎の最良と最悪の運用実績調べた結果を図20-6-2に示した。この図では運用実績を運用期間に亘る平均年利(年複利)で表している。運用期間1年では評価額増減に年利±60%の広い幅が投資時期に依存して出てくる。運用期間が長くなるにつれて最悪・最良両実績とも狭い範囲に向かって納まってゆく。そして、14年以上の運用では元本割れは起こってない。なお、外株の log10(1年間の評価額倍率) の平均値と標準偏差はそれぞれ0.0276、0.0781であり(これは対数正規分布を想定した統計解析)、この収益の年率換算値は6.56%(= 10^0.0276 - 1)である。
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 このグラフはMSCI KOKUSAI指数(先進外国株式)へのインデックス投資を理解し利用する為の基本データであり、有用である。

 そこで、日債、外債、EM株それぞれの運用期間別の最悪と最良運用実績を外株と同様の手順で調べ、それらの相互比較を図20-60-3に示した。投資対象それぞれの指数と調査期間は次の通りである:
  日債:日興BPI:1998年1月末―2011年4月末
  外債:Citigrp WGBI ex JPN 円建:1984年12月末―2011年4月末
  外株:MSCI KOKUSAI 円建:1969年12月末―2011年4月末
  EM株:MSCI Emerging Mkts 円建:1987年12月末―2011年4月末
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   (図をクリックすると拡大図が出ます)

 まず、最不運時でも元本割れ無しの運用成果を得るために必要な期間は、日債<外債<外株<EM株の順に長くなり、その年数は以下にとおりである:
  日債:  5年
  外債: 11年
  外株: 14年
  EM株: 16年
 このことは、インデックス投資をしている限りどのようなポートフォリオを組んでいても、16年以上待てば元本割れ無しの成果を得ることができ、多分、定期預金よりも高い平均利率で運用できることを示している(「歴史は繰り返す」を信じるならば)。そして10年未満の運用結果で「インデックス投資も分散投資も無意味である、信じたばかりに大損こいた」と言うのは、単なる調査不足・勉強不足を表明しているだけである。不勉強のまま焦ったのが「大損をこいた」真の原因である。

 なお注意すべきは、この話に日本株式への投資が含まれていない点である。何度もこのブログに書いたように、1989年に3万円を越えていた日経平均は2011年の今まだ1万円前後と1/3以下に減価したままである。20年以上経過しても平均株価が1/3以下に減額したままという失態は、アメリカの大恐慌と同じかもっと悪い。昔の総理大臣の息子や孫が総理大臣になっているようでは、アフリカからの留学生の孫が大統領になるアメリカや、両親とも移民(難民とユダヤ人)の息子が大統領になるフランスなど、実力・実績を尊重する国々と競争して勝負になるとは思えない。お世継ぎ国会議員がほんの小数になり、 “格差是正”とか“安全安心住みよい国”とか“食料自給率を高めよう”などを声高に言う人が少数になっとき日本株式への投資を再開しようと思う。“格差是正”等々の主張の後に続くのは“社会正義のために”の様な雰囲気の中で「だから国は金を出せ」と続いて、結局のところ、他人の財布から自分(または自分の仲間)の財布にお金を移せと主張する。こうしてチャレンジを避けた者達がチャレンジし努力した人々の成果を浪費することになる。そして日本の経済が疲弊してきたと感じる。

 話を元に戻して図20-6-3をもう少し詳しく調べる。日債は運用実績の年利平均値は低いが、最良・最悪実績の差は小さく、5年間以上運用すれば元本割れは起こらない。日債はまさに低リスク・低リターンである。

 図20-6-3は外債(先進外国の国債)が中リスク・中リターンの投資先であることを示している。とは言え、元本割れ回避必要年数は11年でかなり長い。為替レートの変動は、長周期現象で且つ変化のときには激変するので厄介である。外債投資は債券発行国通貨でのリスク・リターンの上に更に為替レート変動リスクが乗っている。これが元本割れ回避必要年数が長い原因であろう。しかし、この図6-20-3を見ても、また図20-2-1 (http://williberich.at.webry.info/201102/article_4.html) を見ても外債への長期投資は日債投資よりも明らかに高リターンである。これに関して、「長期的な成績の見通しは、国内債券も外国債券と同じと考えるのが基本」という企業年金にコンサルタントをしている格付投資情報センターの川村孝之フェローのコメントとして、2011年5月15日(日)の日経新聞朝刊13面に掲載されていたらしい(梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー氏のブログ、 http://f.blogos.livedoor.com/opinion/article/5563124/ からの孫引き引用。山崎元氏も同じ趣旨の主張をしていたとのこと)。これらの権威者とこのブログの外債と日債に関する見解の差は、日債のデータ収録期間の差から生じている。図20-2-1に示された日債指数の対数プロットにおいて、このlog(日債指数)の経時変化プロットが“滑らかに”寝てきている。この“滑らかさ”は、日債の今の低リターンがランダム変動(つまり金融用語の“リスク”)ではなくて、“傾向”であり長期に継続することを予測させる。一方、図20-6-2における外債指数のプロットはかなり大きな振幅でギザギザであり、今のリターンは低いがこの低さはランダム変動(リスク)の内であると推測できる。更に、外債指数(Citigroup WGBI ex Jpn, 円建)は日本以外の先進17カ国の国債指数の加重平均値であって、中に一つか二つヘンな経済状況の国があってもその被害は大多数の“まともな国”の経済の中に薄められるので影響は相対的に小さくなる。こういった理由で、権威者達の主張に反して、このブログでは、日債は低リスク低リターン、外債投資は中リスク中リターンと判断する。

 最後に、高リスク・高リターン投資先は外株(先進外国の株式)とEM株(新興国の株式)である。図20-6-3で見ると、両者のリスクやリターンに顕著な差は無い。ただし、EM株の15年以上運用の最悪実績と最良実績は、運用期間が長いほど上昇していて奇妙な傾きである(最悪実績も最良実績も共に、運用期間長期化に対して右肩上がり)。MSCI社はEM株指数を発表し始めたのが1988年で、今から23年前である。当時はエマージング国の株式への投資などは不人気だったのだと思う。その後7―8年かけて徐々に人気が高まって行きEM株価がゆっくりとそして着実に上昇したのであろう。最近15年間はそのようなEM株の旨味は消えてしまい、先進国株価とよく似た価格変動になっている様だ。

 以上、図20-6-3から見えてくることは、株式や債券などのリスク商品への投資は短くても4・5年以上の運用、長ければ16年以上運用するべきである。必要な運用期間はポートフォリオの組み方に依存して決まる。そして金融商品は、買ったら最後、元本割れ状態では売らない(ただしリバランス時の売買は別)となるように買わなければならない。従って投資するのは長期間寝かせておけるお金だけ。なぜなら高リターンは長期運用のときだけ手にできるのであって、短期では元本割れになるのが普通だからである。資産運用話には「リスク管理」という用語がよく出てくる。ところがこの言葉は、さも重大そうに使われるにも拘らず、その意味は抽象的で具体性の無いままに使われる謎の言葉である。用語のそういう使い方は、卑劣であり実に腹立たしい。“即物的”で“実務”を重視するこのブログにおいては、リスク管理とは、寝かせておける期間に応じて運用するお金を分け、そしてその期間に応じたポートフォリオに投資することであると理解している。リスク管理の具体的な作業は生涯収支概算表の作成・修正ということになる(http://williberich.at.webry.info/201006/article_4.html)。

 なお、この項で検証した日債、外債、外株、EM株のいずれかの投資信託の単独運用での元本割れ回避必要年数実績は予測以上に長いと感じる。これら実績と比較すると、前項の表20-5-1に示した各ポートフォリオに対する“適した投資期間”は少し短すぎるように感じる。多分もう2-5割長い投資期間(長期間のポートフォリオほど割り増しにする)が必要と考えておく方がよい。しかし、これはリバランス無の、まさに字義通りのBuy&Hold運用の場合の投資年数である。リバランスを1年ないし2年に一度実施すると、株価と債券価の逆相関(ないし無相関/弱相関)の効果で評価額変動の緩和が起こり、元本割れ回避必要年数の短縮が起こる。こうして結局、リバランスを1年ないし2年に一回実施すれば、表20-5-1の年数をやや長くする程度(1-4割?)で大間違いではないと考えるが、さらなる検証が必要だ。このように考えて、前項(http://williberich.at.webry.info/201103/article_6.html)の表20-5-1に手直しを加えた。
(2011/5/18/UP)(2011/5/19/一部手直し)(2011/6/1/手直し)

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