(20-9) リバランスの効果の追跡

 短期、中期、長期、超長期ポートフォリオの、1988年以降2011年までの運用成績を、リバランス有と無の二つの場合について追跡した。ポートフォリオを組んで資産運用する場合、半年ないし2年に一度くらいの頻度でリバランスをするのが良いとされている。ここではノーロードのインデックス型投資信託(しかも、国内と先進外国の債券、日本と先進国とエマージング国の株式の計5銘柄の投資信託のみしか使わない)でポートフォリオを組むものとする。
 リバランスの効果は、株式値上りによる評価上の収益を、値動きの小さな債券に移し替えて将来の株価暴落の被害を小さく抑える点にある。あるいは逆に株価暴落時には、値動きの小さかった債券運用分の一部を暴落した株式購入に廻し、将来の株価回復時の収益を増やそうという目論見でもある。そしてリバランスのもっと重要な点は、これらの操作を、債券や株式の時価金額比を定率に保つというルールに従って機械的に行う点にある。機械的に運用操作を行うことによって、株価急変動時の強欲や恐怖から生じるかもしれない失敗を避けることが出来る。
 一方、投信売買には税金支払や投信の留保分支払などで運用資産金額の減少を伴う。そこで、実際に年1回のリバランスを行ったとき、運用資産の評価額がどう変わるかを過去に遡って調べた。結果は年1回のリバランスを行うと運用資産の評価額の変動幅は少し小さくなり、実施がお勧めである。

 短期、中期、長期ならびに超長期ポートフォリオ(表20-5-1 http://williberich.at.webry.info/201103/article_6.html )のそれぞれに従った100万円ずつの投資を1988年1月末に実施したとして、その後の各ポートフォリオの、二通りの評価額を追跡した結果を図20-9-1に示した。一つ目の追跡はリバランス無しで単に初期投資の投資信託を保有していただけというBuy & Hold 運用の成績追跡である。リバランス無しの成績追跡は、図20-9-1に中抜の○印で打点した細線で表されている。もう一つの追跡は、投資後毎年の1月末に保有する各投資信託の評価金額が初期の金額比になるように投信を売買しながら(年1回のリバランス有)の成績追跡である。リバランス有の成績追跡はこの図の太線グラフで表されている。短期、中期、長期、超町期のポートフォリオの区別は、細線・太線それぞれの青、緑、緑茶色、赤の色で表されている。
画像
   (図をクリックすると拡大図が出てきます)
この図の追跡において、投信売買に伴う税金と留保分の差し引きは、B-3項に示された方法 (http://williberich.at.webry.info/201106/article_3.html ) で算出されて成績追跡の計算に含まれている。なお、ここではeMAXISシリーズのインデックスファンドを使うと仮定している。つまり、投信売却時の留保分は新興国株式ファンドの売却のときしか発生しない。また、分配金は再投資を仮定している。この図からわかるように、いずれのポートフォリオにおいても、リバランス有り運用の成績の方が評価額上昇幅は小さくそして下落幅も小さく、リスクは小さくなっている。特に、ITバブル崩壊やリーマンショックの株価底打ちの時、リバランス有り運用の評価額がリバランス無し運用の評価額よりも高く、その後の回復も少し好成績である。従って、年1回程度のリバランスは是非実施すべきである。

 次に最近の各ポートフォリオのリバランス有り運用の成績を追跡しておく。追跡の運用年数は、各ポートフォリオの推奨運用年数の中央値で選ぶ。すなわち、短期ポートフォリオは2011年1月から数えて5年前、中期ポートフォリオは7年前、長期ポートフォリオは10年前、超長期ポートフォリオは15年前に、それぞれに100万円を投資したと仮定して、それぞれのポートフォリオのこれら推奨運用期間に亘る運用の最新の成績追跡を図20-9-2に示した。
画像
   (図をクリックすると拡大図が出てきます)
 図20-9-2を見ると、リーマンショック株価暴落の底の2009年1月には、短期、中期、長期の評価額は元本まで戻った。中でも、2001年の長期ポートフォリオへの投資は、満8年経過後の2009年に元本まで戻ったのだから本当にガックリくる。しかしその後の2年間で回復に向かい、2011年1月末の各ポートフォリオの評価額は 短期<中期<長期 の順に高くなっている。超長期ポートフォリオはリーマンショック底値のとき、既に13年間の運用を経ており、評価額は元本までは戻らなかった。そしてその後の2011年1月に至る2年間の回復も四つのポートフォリオの中では最も華々しい。

 図20-9-2を見ると、2007年1月前後に株式ファンドを全て売払い、定期預金と国内債券ファンドだけにし、2009年1月以降に再度所定のポートフォリオを組めば良かった筈であると判る。しかしこれは将に“後出しジャンケン”そのものであり、決してそんなことを事前・事中には判断・実行できない。2002年にグリーンスパン前FRB議長はジャクソンホールで「バブルは崩壊して初めてわかる」と講演している。

 図20-9-1や図20-9-2を見て云えることは、運用資産の評価額が暴落したとき(異常な急落中や急落直後に)リスク金融商品を売払ってはならない;絶対に売ってはならない。それ以上に大事なのは、株価暴落時の評価額減少で困らないようにポートフォリオを組む(投資先を選ぶ)ことである。その上で評価額急落・低迷中にすべきことは、少し消費を抑えて不足分を預金の引出しで補える範囲に押さえるべきである。自動車の買い替えは1-2年先に延ばし、旅行も少し控え、耐久消費財の購入も交際費も少な目に抑える。そして運用資産の元本割れから回復した後になって始めて、必要に応じて運用資産を現金化する。暴落後は運用期間を延ばせるだけ延ばすと運用成績は良くなる(回復する)。それは、2003年1月の米国ITバブル崩壊の株価底打ちの後の運用成績回復(2003年から2008年)に見られるとおりである。

 国内債券ファンドのリターンは年1%と極端に低い。これは日本の経済成長率が低いことの反映であって、現在のような国内経済閉塞状況の中(東北大震災のことではない;失われた20年、失われつつある30年のことを言っている)ではどうしようもない。従って長期間投資における国内債券ファンドの比率を増やすと運用成績が極端に落ち込む。それかといって海外投資を増やせば、世界的金融危機のとき低金利通貨高が進むので、外貨安・円高の為替変動が不利に働いて、海外での株式投資の評価損の上に更に為替リスクの損失が上乗せされる。生活に日本円を使う限り(つまり日本に住む限り)資産運用成績は悪くなってしまう。あるいは運用成績は極端に乱高下するが、銀行定期預金の年利0.数%や0.0数%よりもマシなので、やむを得ないと考えておこう。
(2011/6/23/UP)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック