(20-10) 期間別ポートフォリオのまとめと運用の実例

 運用期間別の適切ポートフォリオについて、2011年2月以降今(2011年6月)の半年足らずの間に亘って検討してきたことをひとまず纏めておく。2011年1月末までの金融商品(株式と債券)の指数(配当・利息・分配金を税引き再投資、インデックス型投資信託のコストも差し引き済み)の長期月次データから、指数変化の倍率表示の対数正規分布統計(常用対数で定義・計算)に基づいて求めた基本統計パラメータを使って、短期、中期、長期、超長期ポートフォリオを組み立てると表20-10-1のようになった(20-5節の表20-5-1の部分再掲; http://williberich.at.webry.info/201103/article_6.html):
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 これらのポートフォリオに対して過去に遡って投資し、そのまま長期保有していた(リバランス無し)と仮定して、ポートフォリオ評価額推移の実績を調べた(“後出しジャンケン”になっている)。これらの推移に基づいて、元本割れ無しになるために必要だった運用年数(ただし、長期や超長期ポートフォリオの実績調査においては、リーマンショックの株価暴落の底の2-3ヶ月のような短期間だけの元本割れは無視する;長期間運用の場合は現金化時期を2-3ヶ月遅らせることは無理なく出来るからである)、また過去の運用実績の年利表示の平均値や標準偏差(これらは対数統計でなく、真数統計で扱った。その方がこれら値を実感しやすい)を求めた。さらに、投資時期の分散(ドルコスト法、積立て投資)の推奨期間の検討結果も付け加えて、調べた結果を表20-10-2に纏めて示した。
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 “運用年数”とか“何年目に使う”とか、時点や期間を表す用語は誤解・混乱を招きやすいので、ここで使う用語の意味とともに期間別でのポートフォリオ適用を図20-10-1に示した。
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 なお、過去の実績からリターンやリスクを検証するとき、即ち表20-10-2の作成のとき、短期・中期ポートフォリオは1998年以降現在(2011/6/25)に至る13年間余り、長期・超長期ポートフォリオは1988年以降の23年間余りの実績を平均した。これは、短期・中期ポートフォリオは(1)国内債券への投資が中心であり、かつ国内債券のリターンは徐々に、そして確実に低下していてこれは“偏差”ではなく“傾向”であると考えたので最近の値のみを平均した;(2)適した運用期間が8年以内と短く、過去のデータ採録期間も短くて良いと考えた。一方、長期・超長期ポートフォリオは海外株式と海外債券が投資対象であり、(1)為替の変動は長周期で大きく波打っていて短期間平均では本当の平均にはならない;(2)将来の運用期間は長くなるので、可能な範囲でなるべく長期間の実績を用いる方が良いと考えた。これらの考えの下で、これら各ポートフォリオの実績採録期間に差をつけて、表20-10-2のリターン・リスクの実績を得ている。

さて、ポートフォリオの対数統計パラメータμ、σの値と、そのポートフォリオの元本割れ回避に必要な運用期間年数nの間にはAppendix (B-4)の記事の (B-2-1) 式の関係がある:
  n > (-z × σ / μ)^2 ------------------ (B-2-1)
ここに、z は標準化確率変数の受け入れ可能な下限値(未知数であり、ここではこれを求める)である。 各ポートフォリオの表20-10-1のμ、σの値と表20-10-2に掲載の元本割れ回避必要年数の実績に基づいて、z の値(の受け入れ可能下限値)計算して平均すると、z = -1.36 となる(各ポートフォリオから計算したzの下限値: 短期1.35、中期1.41、長期1.32、超長期1.35;平均値1.36)。これはインデックス運用において確率8.9%以下の元本割れ不運は実際上起こらないと判断することに相応する。或いは起きたとしても、運用期間を数ヶ月間伸ばすだけで元本割れの不運を回避できる。
 
 資産運用の関する書籍や記事(特に新聞や雑誌の記事)に、「株価や債券価格の急落に備えて・・・」などという記述を見ることが時々あるが、“今の”金融商品の値下がりが“今後も続く”長期の値下がりか、あるいは短期の単なる“揺らぎ”かを的確に判断することなど不可能である。金融商品の値動き予測などできないからこそ、専門家集団の山一證券やリーマンブラザースが倒産し、各国大手銀行に政府が税金を投入せざるを得ない事態が起きている.
後から実績を見て、適当に運用損発生回避法を説明しても、将に“後出しジャンケン”であって、読み物として面白いだけでしかない。ここでは金融商品の短期の値動きの予測など不可能と認め、“長期的には歴史は繰り返す”と考えて、資産運用を出来るだけ機械的に行うよう心掛け、平均的な収益だけを目指す。

 資産運用において評価損に出くわすのは当たり前である。もし評価損が無く、そして銀行預金よりも高い収益が得られるのなら、全ての人がその資産運用方法を採用しようとお金を出す。従って金融商品価格は値上りして必要な元本金額が大きくなり、結果として運用収益率は低下する筈である。従って、「評価損に出くわす」ことは、そこそこの運用益を手にするための必要条件である。しかし評価損は高収益の充分条件ではない。かくして、「歴史は繰り返す、This time is not different」を根拠として、運用途中では評価損に出くわすことは当たり前である自覚の上で資産運用を始めるべきと考える。

 資産運用において、所定期間より短い期間では評価損が出るのは当たり前という例を示す。図20-10-2は長期ポートフォリオに1998年4月末に投資した例を示している。長期ポートフォリオは表20-10-2によると満8年以上満13年未満の投資期間がお勧めである。その実績を図20-10-2に示した。この図には1998年4月末の一括投資の後単に投資信託を保有するだけ(黒線グラフ)の実績と、1997年11月末から1998年10月末までの12回にわたって積み立て投資(ドルコスト法)したのち、毎年1月末にリバランスしたときの評価額推移(赤線グラフ)が示されている。投資直後から赤線グラスの方が黒線グラフよりより成績が良いのは、1998年前後は株価上昇と急落があったためで、投資直後の赤グラフの方が好成績なのは偶然の産物である。しかし、長期間経過後の成績が赤線グラフで好成績なのはリバランスの効果で、一般的である。
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 さて、図20-10-2に示した1998年4月末頃の投資の場合、投資後5ヶ月目には元本割れ状態になり、その後2003年末頃までの5年半に亘って元本割れ近辺の状態が続いている。その後評価額に急上昇が続き、2007年頃には評価額は150万円を越えた。その後にリーマンショック金融危機に陥り、2009年1月前後には短期間だけではあるが再度元本割れになり、2011年には評価額は110-120万円まで戻った。全く酷い乱高下である。長期の資産運用とはこのようなものであるが、でも平均金利は銀定期預金よりも高い。資産運用とは図20-10-2の様になるのが不可避であると知り、その覚悟で投資を行うべきである。このような不安な乱高下があるからこそ定期預金以上の金利を手にできる。チョッと評価損が出たからと言って慌てたり運用市場から逃げ出したりしてはならない。逃げ出すくらいなら、始めから投資・運用の世界に入らない方がよい。その場合は銀行定期預金や個人向け国債の金利で満足することがお勧めである。もっと高い金利を得ようとすると、悪質詐欺や、良くても銀行や証券会社の手数料稼ぎの鴨にされてしまう。
(2011/6/29/UP)(2012/1/28/元本割れ回避運用年数計算の z = 1.36 を追記)

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