(20-14)  2012年1月末日構築のポートフォリオなど

 前回の(2011年1月末までの金融商品指数の統計パラメータに基づいて計算した)ポートフォリオ構成から1年が経過し、リバランスの時期になった。そこで、2012年1月末日までの金融商品価格推移にもとづいて、新しくポートフォリオを構成しなおす。なお、ほぼ1年前に載せた、2011年1月末の統計パラメータ算出値に誤りが見つかった(式や方法は正しかったが、数値入力にミスがあった)ので、訂正したパラメータとポートフォリオを、いずれ掲載しなおす。誤りを点検した上で、以下の記事を書いている。

 まず、各種インデックスの2012年1月末までの履歴を図20-14-1に示す。日株、外株、EM株の指数はリーマンショックの底から少し這い上がったが、まだまだ低迷中。ここ2年の株価指数の値動きでは、残念ながら日株(図のピンクグラフ)はやや右肩下がり、外株(黄緑)は横這い、そしてEM株(青)はほんの少し右肩上がりに見える。

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   (図をクリックすると拡大図が出ます)

 茶色実線グラフはUS$/\と€/\ の為替レートの平均値の常用対数(他グラフと重ならないよう定数を加えた)の経時変化を、茶色点線はその一次回帰線を表す。茶色点線を見ると、1970年以降長期的には年率 -3.11% で外貨安・円高がコンスタントに進行し続けている。茶色実線と点線グラフを比較すると、2012年1月末の為替レートは2002年以来の円安領域から抜けて平常なレートに戻ってきた。2012年1月の為替レートが長期的に見たときの正常値であって(実線と点線が重なった)、マスコミで言われているような特別な円高ではなく、最近10年間の円安が修正されただけに見える。短期的に見ると、為替レートが2008年以降は円高方向に動く(正確には円安の修正)傾向が続いており、今後は本当の円高領域に入りそうな勢いである。この円安修正・円高進行に伴って、外債指数(指数の円表示、黒緑グラフ)は2008年以降の値下がりがまだ続いている。今の為替変動傾向が円安方向に反転すると外債の価格上昇は凄いことになりそうである。

 一方、日債指数(赤グラフ)は狭い変動幅の中で極めて緩やかに上昇している。この図のインデックス変動グラフの内、太線部分のみを選び、対数正規分布を前提として統計パラメータを求め(計算法詳細は20-3節参照)、表20-14-1に纏めた。なお、ここで使う対数は全て常用対数である。日株のμは負であって、中期・短期的には日本の株式への投資は損失をもたらす。よってここ数年は、日本株式に投資しないのが基本姿勢にならざるを得ない。

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   (表をクリックすると拡大したものが出ます)

 表20-14-1の統計パラメータで重要な点は、日債指数だけが他指数に対して負の相関を示している点である。それ故、ポートフォリオのパーフォーマンスの変動を小さくするには、日債投資をある程度高めることが必要である。日債の収益率が低いので、日債投資を高めることはポートフォリオの収益率低下をもたらすが、これはポートフォリオ評価額変動リスクの低下のためにやむを得ない。

 表14-20-1の統計パラメータを基に、μ/σを大きくするという原則のみで中長期のポートフォリオを組むと、外債、外株、EM株が主たる投資先になってしまう。ところが、図20-14-1の茶色グラフから読み取れるように、為替レート変動は大まかにいって10年余りの周期で“正常な”レート(図の茶色点線)の周りを大きく波打つ。そうすると、運用期間6-7年はまさに為替変動周期の半周期であり、円安期の投資は円高期に換金することになり、多数回投資平均では妥当な収益であっても、たまたま円安期投資になったときは元本割れに出くわす。

 このような不運(為替リスク)を回避することを目指して、運用期間満6年以上のポートフォリオには強制的に日債投資を含め、半年ないし1年毎のリバランスを通して、海外投資の為替リスクを緩和する。取敢えず山勘で、
 中期ポートフォリオ(満6年以上-満8年未満の運用) 日債60%
 長期ポートフォリオ(満8年以上-満12年未満の運用) 日債40%
 超長期ポートフォリオ(満12年以上の運用) 日債20% 
という条件を強制することにした。中期ポートフォリオで日債投資割合を特に高くするのは、その運用期間が為替レート振動の半周期程度である故に、不運なときに最も為替リスクの被害を受け易いからである。これは同時に、円高期の海外投資の高収益を犠牲にする。しかし、資産運用において欲張ると失敗するので、用心深くポートフォリオを組み立てる。なお、長期と超長期ポートフォリオの運用期間は為替レート振動の1周期以上を含むので、日債の割合が少なくてもリバランスによる為替レート変動の緩和(ならびに変動を利用した増益)効果をそこそこ期待してよい。

 更にもう一つパラメータを増やす。元本割れ回避必要運用期間 n 年のポートフォリオのμとσ(常用対数対数正規分布に基づく平均値と標準偏差)は、規格化標準確率変数 z をパラメータとして、
  n > (z * σ/μ)^2
の関係がある(記事B-2の式B-2-1)。このパラメータ z の値を運用期間に従って変える。
  超短期ポートフォリオ z = 1.9
  中期、長期、超長期ポートフォリオ z = 1.4
を山勘で選んだ。なお、短期ポートフォリオは σ/μ を最小にするように構成し、一義的に定まるので、z の値は不要である。

 これらの条件の下で表20-14-1の統計パラメタを用いて、更になるべくμが大きくて且つEM株割合が多いアセットアロケーションを選んで、運用期間別のポートフォリオを組み立てた結果を表20-14-2に示した。すなわち、
  短期:μ/σが最大になるようにポートフォリオを組む;
  超短期:短期ポートフォリオと無リスク投資(年利0.35%、ネット銀行の定期預金)の組み合わせで元本割れ回避必要年数が2年(よってμ/σ=1.3)となるポートフォリオを組む;
  中期:元本割れ回避必要年数が6年(よってμ/σ=0.57)の中でμが大きいもの;
  長期:外株:EM株=9:1の条件の下、元本割れ回避必要年数が8年(μ/σ=0.50)の中でμが大きいもの;
  超長期:元本割れ回避必要年数が12年(よってμ/σ=0.40)の中でμが大きいもの。
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   (表をクリックすると拡大したものが出ます)

  今回の提案のポートフォリオにおいては、他の金融商品と逆相関の日債への投資割合が大きいことにより、ポートフォリオ評価額の変動は少し抑えられる。また価格変動の極めて小さい日債への投資割合が大きい故に、リバランスに際して日債が他の金融商品(外債、外株、EM株)の大きな価格変動に対する“ため池”の働きをして、為替変動を収益源として多少利用できることになると期待する。

 また一方、日債投資割合が高いので、欧州で2011年夏から起こっているようなソブリンリスクが日本国債で表面化し始めると資産価値の急落が起こる。国内大手行が日本国債の手持ちを減らし始めているとの話(http://agora-web.jp/archives/1390374.htmlhttp://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2011/11/post-407.php など)もある。金融危機はムードの高まりで激甚になるようなので、日本の国債の金利の上昇、すなわち野村BPI指数連動投信の価格下落には充分注意し、そのときは大胆に日債投信を売り払わねばならない。

 そもそも資産運用について100%判ることは無いであろうが、それでもまだまだ判らないことや勘違いしていることがある。ここで算出されたポートフォリオでの運用への移行はゆっくりと5年くらい掛けて進めるのが無難であろう。

 最後に、既に何回か紹介したが、ネットネーム「タロット」氏が作ってネット上に公開してる、ポートフォリオ構成のためのエクセル上で走るVisual Basic ソフト「効率的フロンティア計算シート Ver.1.1.1」(http://tarot-mpt.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/_ver110_a933.html )無くしては、このような運用方法を構築できなかった。再度紹介してソフトの効用を示し、ソフトの公開を讃えそして感謝する。
(2012/2/8/UP)(2012/3/28/修正)

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この記事へのコメント

2012年02月27日 16:46
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

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