(20-15)  2012年1月末日構築のポートフォリオの過去の成績-その1

 ここでは、前節で構築したポートフォリオの過去のパーフォーマンスを調べる。過去のデータの統計パラメータに基づいて最適化したポートフォリオのパーフォーマンスを過去に遡って調べても、それは“後出しじゃんけん”であって、ポートフォリオに対するフェアーな評価にはならない。しかし、将来を予知することなどできない以上、「歴史は繰り返す」と考えて、将来のポートフォリオ成績は過去の成績と似たものになるとの予測を信じれば、パーフォーマンスを過去に遡って調べることも有意義と考える。歴史に学んで将来に備えるという次第である。

 まず、1988年1月末日に、前節(20-14節)に記載の短期、中期、長期、超長期ポートフォリオに対して100万円投資したと仮定し、その後、毎年1月末にリバランスした場合としない場合の評価金額の推移を図20-15-1に示した。計算に際しては三菱UFJ信託のeMAXISシリーズのノーロードのインデックスファンドが過去にも有ったと仮定してこれを使って資産運用を行ったと仮定した。つまり、ファンドの信託報酬や売却時の留保分はeMAXISシリーズファンドのルールに従って差し引き(eMAXISシリーズには留保分なしのファンドもある)、また株式ファンド売却時には収益の20%課税による減額も計算に含めた。

この図20-15-1において、リバランスなし(細線グラフ)に較べて、リバランスあり(太線グラフ)の評価額変動は抑えられており、かつ2012年1月末の評価額は何れのポートフォリオにおいても、リバランス有りの方が好成績である。よってリバランスは必ず行うべきである。そして以下では、年1回のリバランスをすると仮定してポートフォリオのパーフォーマンス検討を進める。

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 図20-15-1の資産運用評価額の太線グラフを全体として眺めると、1988年から1998年までの10年間部分のグラフの“平均的な傾き”(一次回帰線の傾き)と、1999年以降2012年に至るまでのグラフの“平均的な傾き”は異なっている。つまり1998年から1999年の間が、資産運用に関わる大きな転換期になっているように見える。そこで、20-14節(前節)の図20-14-1の各種指数の経時変化をツラツラ眺めると、MSCI-KOKUSAI指数(黄緑グラフ)の1998年から今(2012年1月末)に至る部分の全体としての“傾き”が、最近25年間のMSCI-JAPAN指数のピンクグラフの“傾き”と同じである。KOKUSAI指数の構成株式の約半分は米国株であるが、1990年代末期の米国ITバブル崩壊後、2001年同時多発テロ後の不況、サブプライムローンバブルとその崩壊・リーマンショック、そして欧州ソブリン危機と続いてきた米国ならびに先進国経済(従って株価指数)の基調傾向は、日本の「失われた30年」の後半と平行であり、これが図20-15-1の資産運用における1999年以降のパーフォーマンスが悪い要因であると考えられる。一方、1999年以降のMSCI-EM株価指数(MSCI Emerging Markets)は短期的にはMSCI-KOKUSAI先進国株価指数と連動している様に見えるが、全体としての基調傾向は右肩上がりであり、少なくとも1999年以降2012年1月に至る期間での資産運用パーフォーマンスは、EM株への投資が多い方が良好である。

 今後、EM株への投資は重要であるが、一方で、先進国株式のパーフォーマンスも何時までも悪い筈はないので(世界の先進23カ国全てにおいて社会・経済政策失敗の連続ということは起こらないだろうという予測。大恐慌への対応の失敗が第二次世界大戦をもたらしたと言われているのだから、そのような失敗はどのようにしてでも避ける筈と読む)、先進国株とEM株の両方への投資を続けることにしておく。

 図20-15-1は、1988年1月末に100万円投資して年1回のリバランスを続けていたら、24年後の今(2012年1月末)での評価額は、超長期ポートフォリオは373万円(リーマンショック直前には485万円だったが、その後、評価額が低下)、短期ポートフォリオでも237万円と好成績である。しかし、1999年以降の投資の成績が芳しくないのは前述の通りである。1999年以降の最も不運な100万円投資のパーフォーマンスを見ておく。投資を続ける上では、最も不運な場合を見ておく方が、好成績を見ておくよりも不運に対する覚悟を決める上で大切である。

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最も不運な1月末投資はリーマンショック直前の株価ピーク付近での投資であり、それは2007年1月の投資である。二番目に不運な投資は2001年1月の投資である。これらの不運な投資のパーフォーマンスを図20-15-2に示した。

 2007年1月の投資は運用2年後にはリーマンショックに巻き込まれて、超長期ポートフォリオは元本の6割にまで減額、最もリスクの小さい短期ポートフォリオですら4%の元本割れである。しかし、短期ポートフォリオは投資の3年後には元本を回復し今に至っている。しかしリスクの大きな中期、長期、超長期ポートフォリオの投資後5年経過した2012年1月末の評価額はそれぞれ、96万円、87万円、77万円で元本割れのままである。何れもまだ元本割れ回避必要年数未満であるが、必要年数を満たしたときどの程度の成績になるのか見ものである。

 2番目に不運な投資、すなわち2001年1月末の投資の成績は、超長期ポートフォリオでは2003年と2009年に元本割れしている。長期ポートフォリオの元本割れは2003年のみである。短期から超長期までの四つのポートフォリオとも2012年1月末時点では元本を回復し、短期ポートフォリオは117万円、中期は120万円、長期は118万円、超長期ポートフォリオは113万円になっている。

 インデックス運用は、資産運用法としては用心深い方法だと思うがそれでも、図20-15-2に示されている程度の元本割れには出くわす。このことは充分に覚悟しておき、2009年の評価額どん底期のようなときに怖くなって撤退するようなことをしてはならない。運用を更に数年続けていれば、評価額は大幅に回復する(または、する筈である)。

 インデックス運用を進める上で大切なことは、運用のルールを固守することであると思う。景気が悪くなって、評価額が低下しても計画通りに投資を継続する。また、景気が良くなって評価額が急上昇中であっても初期の計画通りにリバランスし、また、生活防衛資金をリスク商品購入に廻したりしない。平常時にはこのようなことは当たり前に見えるが、評価額の急落や急上昇に直面すると、恐怖心が頭をもたげて逃げ出したり、好成績に浮かれたりする。恐怖心や過度の楽観(はっきり言えば、欲の皮のツッパリ)が運用に影響を及ぼさないようにすべきである。そのためには、運用操作の手順をできるだけ機械的に決めておき、その手順を遵守するのがベストな方法になる。新聞やテレビや週刊誌の車内広告に惑わされず(彼らは大げさに騒ぐのが生活費を稼ぐための仕事である)、ネット証券会社の「千円積み立て」等を利用して機械的・自動的に投資を進めるのがいい。またリバランスは、半年か1年毎に厳密に定期的に機械的に実施するのがよい。

 景気悪化で金融商品価格が値下がりすると悲観的になって保有商品を売却し、好景気になって株価が値上がりすると投資額を増やす。その時々の理屈はあるにしても、これでは金融商品を高値で買って安値で売ることになる。これが資産運用の典型的な失敗パターンとなる。これを避ける方法は運用操作を機械的にしてそれを遵守することだと考える。

 最後に、2007年1月の投資のその後の評価額推移を標準確率変数に換算して経時変化をプロットすると図20-15-3のようになる。ここに標準確率変数 z への変換は次の式の通りである:
   z = {log(x /a) - μ×n}/(σ×√n)
ここに、a は当該ポートフォリオへの投資金額(すなわち元本)、x は投資n年後の評価額、logは常用対数、μとσそれぞれはポートフォリオの常用対数正規分布の年平均値期待値と年標準偏差期待値である。

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 図20-15-3から、投資2年後の2009年1月の評価額はかなり稀な不運であったことが判る。この時の超長期と長期ポートフォリオ減額などは確率0.1%以下でしか起きないような本当に稀な不運であった。しかしそのような不運も、投資後5年を経過すると確率95%で予期される範囲内(-2 < z < +2)まで評価額が回復している。一瞬の極悪不運も、不運がずっと続くわけではないので、時間経過と共に緩和されてくる。そして、元本割れ回避必要年数まで運用を続けると、元本割れだけは回避できると期待する(その時になってみないと判らないのではあるが)。
(2012/2/17/UP)

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