(20-17) 期間別ポートフォリオへの資金配分比決定方法の検討(アセットアロケーション実務)

 生涯収支概算表を使ってどのようにアセットアロケーションを決定すれば良いかについて、単純化したモデルを使って検討する。そのモデルは、(1)現在(2012年年初)100万円の資産がある、(2)今後5年間の全収支はトントンで資産の増減は無い、(3)5年後(2017年初)には100万円の資産の全額を使う(例えば中古車を買う)、(4)資産運用のポートフォリオのリターンとリスクは表20-14-2 ((20-14)節の記事) に従う とする。この例について、幾つかのアセットアロケーションで5年間運用したとき、元利合計がどのようになるかを調べる。

運用A: 運用期間5年なので、表20-14-2の短期ポートフォリオ(μ=0.0090、σ=0.0121)で5年間運用する。5年経過後の最終の運用成績期待値は、
μL = 0.0090 × 5 = 0.0450,
σL = 0.0121 × √5 = 0.0271
となる。 5年後の運用結果は確率95%(正規分布の下で±2σ以内)で次の範囲に入る:
log(元利合計/元本) = 0.0450 ± 2 × 0.0271
= -0.0092 ~ 0.0992
尤もらしい元利合計範囲 = 元本×10^(-0.0092 ~ 0.0992)
= (97.9 ~ 125.6)万円
最も確からしい元利合計 = 元本×10^ 0.0450 = 110.9万円

運用Aは考えうる範囲内で最も大胆な(ハイリスク・ハイリターン)運用である。

運用B: 資産取り崩し直前2年間(2015年、2016年)は定期預金(無リスク運用、ネット銀行の1年定期、年利0.35%)、それまでの3年間(2012年、2013年、2014年)は超短期ポートフォリオ(μ = 0.0030, σ = 0.0024) で運用する。短期ポートフォリオが元本割れ回避に必要とする運用期間は満4年なので、このポートフォリオでの運用は採択できない。なお、年利0.35%の運用を元利合計増加倍率の常用対数で表すと、μ(0.35%) = log(1.0035) = 0.00152 となる。つまり年利0.35%の定期預金をμとσで表すと、 μ = 0.00152, σ = 0 となる。従って、モデルBの運用成果は確率95%で次の範囲に入ると期待される:
log(元利合計/元本) = 0.0030 × 3 + 0.00152 × 2
               ± 2 × 0.0024 × √3
              = 0.0120 ± 0.0083
              = 0.0037 ~ 0.0203
尤もらしい元利合計範囲=(100.86~104.78)万円
最も確からしい元利合計=102.80万円
運用Bは考えうる範囲で最も用心深い(低リスク・低リターン)運用である。

運用C: 運用資産取り崩し2年間の預金まで含めて(20-16)節の記事で採用したアセットアロケーション決定法に従う。即ち、収支の将来予測は頼りないので、将来予測を平均してアセットアロケーションを組むという次第である。まず、生涯収支概算表20-17-1を作る。

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   (表をクリックすると拡大しものが出てきます)

次に表20-17-1に基づいて、アセットアロケーションを組むために計算の表を作る(表20-17-2)。

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   (表をクリックすると拡大しものが出てきます)

 この表の結果(表20-17-2の最下欄)として、元本100万円を、定期預金(ネット銀行の年利0.35%普通定期)40%(40万円)、超短期ポート-フォリオに40%(40万円)、短期ポートフォリオに20%(20万円)というアセットアロケーションで5年間運用するのが妥当と言うことになる。この5年間運用のリターンは
μL = (40%×0.00152 + 40%×0.0030 + 20%× 0.0090)× 5 
= 0.01804 = 0.0180
と求まる。一方このアセットアロケーションの標準偏差(リスク)の計算は、元の日債、外債、・・・の構成比にまで戻すと、
定期預金:日債:外債:外株:EM株=72%:22%:4.5%:1.2%:0.3%
となる。各クラス間の相関係数等は表20-14-1 ((20-14)節の記事の表) を使ってσを計算して、
1年当たりσ = 0.00345 と求まる。従って、
σL = σ × √5 = 0.00345 × √5 = 0.0077
従って5年運用の元利合計は
尤もらしい元利合計範囲=10^(0.0180 ± 2×0.0077) * 100万円
                = (100.60~108.02) 万円
最も確からしい元利合計=10^0.0180 * 100万円 = 104.23万円
となる。この運用Cは運用Aと運用Bの中間に位置する運用であり、中リスク・中リターンである。運用Cの5年間運用元利合計の100.60万円、104.23万円、108.02万円を年利に換算すると、それぞれ、0.12%、0.83%、1.6%である。元本割れの可能性を小さくして、5年程度のやや短い運用期間では、この程度の運用成果に落ち着く。最近(2012年早春)の固定金利5年償還の個人向け国債の金利が0.27%なので、0.12-1.6%の年利は妥当なものと考える。

運用D: 有リスク運用についてのみで(20-16)節で採用したアセットアロケーション決定法に従う。この平均化には運用資産取り崩し2年間の預金は含まない点が、運用Cとは異なる。
 先に挙げた表20-17-1に基づいて、アセットアロケーションを組むために計算の表20-17-3を作る。

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   (表をクリックすると拡大しものが出てきます)

 この表の結果として、元本100万円を、超短期ポート-フォリオに67%(67万円)、短期ポートフォリオに33%(33万円)というアセットアロケーションで2012年から2014年末までの3年間運用し、2015年と2016年の2年間は定期預金で保有するのが妥当と言うことになる。この5年間運用のリターンは
μL = (67% × 0.0030 + 33% × 0.0090 )× 3 + 0.00152 × 2) = 0.01798 = 0.0180
となる。これは運用Cと同じである。
  一方、対応するリスクは、後半2年間は無リスクであり、前半3年間分のリスクのみになる。短期ポートフォリオ33%、超短期ポートフォリオ67%のアセットアロケーションは、
定期預金:日債:外債:外株:EM株=54%:36%:7.5%:2%:0.5%
であり、このアセットアロケーションの1年当たりのリスクは σ = 0.00566 となるので、5年間の運用期間全体については(有リスク運用は3年間)、
σL = 0.00566 × √3 = 0.0098
となる。5年間全体にわたるリスク0.0098は、運用Cのそれ(0.0077)よりも大きくなり不利である。よって、運用Cの方が運用Dよりも優れているのではあるが、一応、確率95%で期待される元利合計範囲と最尤期待値を計算しておく:
尤もらしい元利合計範囲=10^(0.0180 ± 2×0.0098) * 100万円=(99.63~109.04)万円
最も確からしい元利合計=10^0.0180*100万円=104.23万円

これら四つの運用方法それぞれにおける、5年間運用後の「尤もらしい元利合計範囲」を図20-17-1の示した。 

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   (図をクリックすると拡大した図が出てきます)

 運用Aと運用Cの中間くらいのリスク・リターンの運用が有るといいが、汎用性の高い良いアセットアロケーション構築ルールを思いつかない。今の段階では一応、運用Cか運用Dくらいが妥当なアセットアロケーション構築法と考える。つまり、20-16節に記載したような手順で、生涯収支概算表からアセットアロケーションを算出しこれに従うと、各人の経済状況(すなわち、保有資産や収入・支出)、生活スタイル(すなわち、お金の使い方)に適してリスク管理された資産運用が具体的に決まることになる。

  ここまでは、資産の蓄積期間(現役で働いていて、資産が増額する期間)におけると資産保有・運用の手法を述べてきた。上記の方法では、資産が蓄積されるに連れて順次、 高リスク高リターンの長期間ポートフォリオへの投資金額が増大し、アセットアロケーション決定法として妥当である。

 一方、運用資産の取り崩し方法(定年退職し、資産を取崩しながら余生を送る時期の資産取り扱い方法)を考えておくのも大切である。生涯収支概算表に基づいて基本的に上述のようなアセットアロケーションを実施すると、結局は高リスク高リターンの長期間ポートフォリオへの投資をまず売却・現金化することになってしまう。これはおかしい。高リスク高リターンのポートフォリオへの投資の取り崩しは、なるべく長い期期の運用を経た後にすべきである。運用資産の現金化は、まず低リスク・低リターンのポートフォリオへの投資から始めるべきである。引退後の資産取り崩し期間におけるアセットアロケーションの方法については項を改めて考えることにする。
(2012/3/13/UP)(2012/3/14/手直し)(2012/3/28/修正、手直し)(2012/9/8/資産取崩期について改訂)

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