(20-20) 元本割れ発生時に辛抱する期間の目安

 運用初期には元本割れが発生しやすい、特に高リスク高リターンのポートフォリオに投資した場合は初期の元本割れ期間が長くて心配になり、投資雑誌や投資ブログで「損切りの勇気をもて」などという記事を見るとそうかなとも考えてしまう。そこで、不運な投資で元本割れしたとき、どれくらいの期間待てば元本割れが回復に向かい始めるか、つまり元本割れの底打ちまでに何年待つべきかを検討する。

 ポートフォリオが適切であれば(その確信が持てないのが問題だが)、適度な長期運用で収益を手にできる。しかし投資が不運だったとき、「長期」の辛抱を続けるには、何年待てばよいかをなるべく早く確かめたい。そこで、不運な投資の元本割れの底打ち、つまり運用損失額の減少の始まり(評価額の上昇の始まり)までに要する期間を推計することにした。

 1年当たりのリターンとリスクがそれぞれμとσのポートフォリオでn年間運用したときの累積リターン、x(n)、の不運下限は、20-18節記事の(20-18-3)式から、
  x(n) = μ(n) – z × σ(n)
これに(20-18-1)と(20-18-2)の両式を代入して、
  x(n) = μ × n - z × σ × √n --- (20-20-1)
となる。z はどの程度の出現確率の不運までを想定内にするかというパラメータで、何度も出てきたように
  z = 1.4 なら出現確率 8% 以下の極端不運は想定外として無視
  z = 2 なら出現確率 2.5 % 以下の極端不運は想定外として無視
  z = 3 なら出現確率 0.15 % 以下の極端不運は想定外として無視
ということになる。

 高リスク高リターンなポートフォリオでは一般に μ < σ なので、不運な投資の初期(n が小さいとき)には(20-20-1)式の x(n) は負になって元本割れが起こりやすい。しかし n が大きくなって行くとき、 √n は n よりも大きくなるのが遅い。しかも n が大きなると √n (20-20-1式右辺第2項)の大きくなり方はどんどん遅くなるが(なぜなら、d√n/dn = 0.5/√n )、n (20-20-1式右辺第1項)の大きなり方はn に依存せず一定である(なぜなら、dn/dn = 1 )。かくして、μ が正でありさえすれば、長期運用していれば何時かは必ず不運な累積リターン、(20-20-1)式の x(n) 、 でも正になって収益が出始める。つまり(20-20-1)式のx(n) をn に対してプロットしたときの傾きは、n が小さいときは負、充分大きいときは正になり、途中で傾きは水平になり、以後は不運時の下限評価額は上昇する。従って、
  dx(n)/dn = 0
となる n を求めると、それが不運な投資の元本割れ底打ちまでに要する年数となる。上の式を解いて n を求めると、
  n = {(z σ)/(2 μ)}^2 --------- (20-20-2)
となる。この式によって想定内の最不運時の元本割れ回復開始までの必要年数が計算できる。この式はインデックス投資に限らずどんな投資にでも成立する;ただし評価額値動きが正規分布しているという条件はある。
 
 20-14節の表20-14-2に掲載の五つのポートフォリオそれぞれの想定内の最不運時元本割れ回復開始までの必要年数を (20-20-2)式で計算し、下の表20-20-1に纏めた。

画像
   (表をクリックスると、拡大した表が出てきます)


 この表から中期ポートフォリオの初期元本割れの回復開始は、投資後1年から2年余り経過した頃となる筈である。そこで、(20-18)節の図20-18-1を見ると、ロシア通貨危機直前の1998年7月末投資の桃色グラフは投資後1年半頃から元本割れからの回復が始まっている。米サブプライムローンバブル頂上の2007年12月末投資の青色グラフは、投資の2年ないし3年後に回復が始まっているかのように見える。かくして表20-20-1は役に立ちそうである。いずれにしても桃色グラフ、青色グラフどちらも一括投資の結果であって、投資時期の分散を忘れて酷い目に遭った例である。せめて、投資を1年間にわたって分散して進めていれば、このような酷いことにはならなかった筈である。

余談: 適切な構成比のポートフォリオであっても、投資時期の運が悪ければ初期元本割れは起こる。世の中が好景気に沸いているときに、少し投資してみたら評価額がぐんぐん上がってゆく。この幸運に乗り遅れまいとして急激に投資額を増やしたりする(投資時期の分散を忘れるという失敗)。間もなく経済が失速して、あれはバブルだったと気付いても既に手遅れで、投資は元本割れ。これは案外とよくあるパターン。投資のプロ達は「損切り、損切り」と素人をあおり、多くの素人衆が損切りすると株価はもっと下がる。これを待ってプロ達は株を買って少し待てばぼろ儲け。という次第で、証券会社営業ウーマン(マン)のお勧め、投資雑誌や投資ブログの記事には鋭い分別感覚を働かせながら付き合わねばならない。何よりも大切なことは、幸運に乗り遅れてもいいが、不運にどっぷりとまり込むことだけは避けるという心掛け。こうして、平均的で平凡な投資収益を求めることこそ資産運用の王道と判る。
(2012/4/7/UP)

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