(20-27) “インフレ目標2%”は資産運用に何をもたらす?

 2012年12月衆議院選挙で自民党が圧勝し、安部首相のインフレ率目標2%達成のスローガンに向かって物事が押し進められ始め、同時に円安・日本株高が始まった。ところが、運用期間がやや短いインデックス運用では日本国債への投資のウエイトが大きいので、インフレ率上昇→金利上昇→既発国債時価下落が進むと怖い。そこで、金利と債券時価の関係を少し丁寧に勉強しておくことにする。

 インフレ率が2%になると、金利2%以下でお金を貸す人はいない。踏み倒される可能性や他への投資(例えば海外投資)での収益の可能性を考えると、金利は インフレ率 + α の筈である。2011-2012年の日本の年インフレ率は0 ~-0.5%位であり、ここではとりあえず0%としておく。国債(10年国債)の金利は0.8%前後だが、これも簡単に1%としておく。つまり10年国債の金利は大略
   国債の金利 = インフレ率 + 1%
と考えられる。従って、インフレ率2%が達成されたら、10年国債の金利は 2% + 1% = 3% になると類推できる。

 今、1%の固定金利の既発10年国債の1万円分を持ち、利息を再投資していると、10年後には元利合計11046円(次の計算)を受け取れる:
   10000 × (1 + 0.01)^10 = 11046  
   (記号^はべき乗をあらわす;例えば1.01^10 は1.01の10乗)
 ところが、インフレ目標2%が達成されると金利が上り、そのとき新しく発行される10年国債の固定金利は3%となる。この新発3%国債を買って10年後に既発1%国債1万円と同額の元利合計(1万1046円)を受け取るには、
   8219 × (1 + 0.03)^10 = 11046
の計算が示すように、8219円分の新発3%国債を購入すればよい。こうして、今直ちにインフレ目標2%が達成されたら、既発1%国債の価値は、1万円から8219円へと17.8%の減価をこうむる。

 次に、今から3年後に(日銀総裁の任期5年の6割)インフレ率2%が達成できたとする。この場合、今発行の金利1%の10年国債1万円の3年後(インフレ率2%達成時点)の価値がいかほどになるか調べてみる。今発行の10年国債は3年後には満期までの残存期間が7年になっているので、3年後から満期までの7年間に受け取れる元利合計は次の計算が示すように、
   10000 × (1 + 0.01)^7 = 10721
10721円である。3年後の新規10年国債は金利3%(インフレ率2%達成なので、2+1=3%)であり、この3%国債の8717円分を7年間保有して売却すると、次の計算が示すように
   8717 × (1 + 0.03)^5 = 10721
1%国債1万円の元利合計と同じになる。従ってもし3年後にインフレ目標2%が達成できたら、インフレ率0%の今の時点で新規発行の1%国債1万円分の時価は、3年後には8717円になっていて、13.2%の減額を被る。
   
 日本国債の時価が3年で13%余り減価したら、(1)たっぷりと日本国債をもっている郵貯銀行はじめ国内の銀行や保険会社は大変困り、金融危機の再来;(2)年金基金も資金120兆円の7割近くを国債で運用していて、大損失を被って年金制度の維持が難しくなる;(3)償還時期の来た国債は、新しい3%国債発行で得た資金で償還され、国の金利負担額は増え始める;といったことが起こる。

 これらは税金投入、年金減額などの国民負担で軽減できるような金額で済むようには思えない。日本の経済規模はそんなな小さいものではない。 そして、個人はたまったものではない、様々な負担増の上に、個人資産が大幅に減額し、その上社会は大混乱で失業と就職難、踏んだり蹴ったりの状態に落ちてゆくことになる。

 あるいは金融業界や経済界のトップ達は、インフレ目標2%は単なるお題目で本気ではなく、本当の狙い(それは何?)は他所にあることを知っていて、黙っているのだろうか?でも日銀総裁まで“インフレ目標2%”に言及するとなると何がなんだか全くわからない。

 個人の資産運用の方針としては、中期、長期、超長期ポートフォリオにおける日本債券分率をそれぞれ60%、40%、20%と選んでいて、これまでは運用期間別ポートフォリオをうまく構築できていた(と思う)。しかし、これからは配分率を5%余り下げ、取り敢えずそれぞれ53%、35%、15%くらいに変更しておく方が良いと考える;たとえその為に各ポートフォリオのリスクが大きくなっても、日本国債で変なことが起こり始めたときの被害を少し小さく出来るし、日本国債から逃げるのも多少は楽になる。

 なお、日本の新聞やテレビでは、アベノミクスで日本の経済は好転し始め、外人投資機関(家)も日本に投資し始めたというムードである。しかしBBCの経済ニュース(2013年年初)などを視聴していると「アジアの国々の経済は発展・成長している。でも日本は別で、その経済は絶望的である」といった調子である。日本のマスメディアが海外情報を紹介するときにはかなりの歪みを掛けているように見える。海外との人・物・資金の交流が日本の経済の根幹にまで入り込んでいて、しかも日本のマスメディアが信頼度が低いとなると、海外のニュースや評価を日本のマスメディアを通さずに直接入手することも必要であると思う、わが身を守るために。月千円余りで、例えばBBCのテレビを日本語訳付きで視聴できるのだから便利な世の中になっている。
(2013/1/3/UP)

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