(20-32) 節税目的の2013年内の投資信託クロス売買の実行基準

 2014年1月1日から株式、リートならびに債券の投資信託(投信)による収益(配当・分配金と売却益)への税金が従前の10.147%から20.315%に増税される(平成50年以降は20%)。
 
 従って増税前の2013年中に株式の投資信託のうち含み益のあるものを売却して節税すべきと思われる。しかし含み益のある投信を2013年中に売却し、売却して得たお金で同じ銘柄の投信を買い戻すと、元本は含み益の10.147%相当額削減されているため、その後の投信の基準価格上昇による収益力はその分だけ少なくなってしまう。このクロス取引の節税の得と元本減額による収益力減少の損のバランスはどうなるかをここで検討する。

 投信の収益の平均年利期待値を r とし、現在の評価額を y(0) とする。y(0)のうち a は現時点までの運用による値上がり益(含み益、金額)であるとする。この投信をクロス取引無しでそのまま今後 n 年間保有運用した後で売却するときに手にできる金額をy(n) とすると、
 y(n) = y(0) * (1 + r)^n
   - 0.20315 * [y(0) * (1 + r)^n - {y(0) - a}] -------- (1)
となる。
 一方、節税のためのクロス取引を今実行すると保有投信の評価額は y(0) - 0.10147*a に減額される。この元本を再投資して今後n年間保有した後に売却したときに手にできるお金をz(n) とすると、
 z(n) = { y(0) - 0.10147 * a }
   * [ (1 + r)^n - 0.20315 * {(1 + r)^n - 1}] -------- (2)
となる。

 クロス取引の後に再投資して運用を続けた方が有利になるのは y(n) < z(n)  の場合である。この不等式に上記の (1) , (2) 両式を代入して整理すると、
  2.259 > (1 + r)^n -------- (3)
となる。

 つまり、投資信託基準価格(個別株の場合は株価)が今の価格の2.259倍以下の値上がりしかしてない時点で売却(いうならば、中期運用)の見込みなら、今クロス取引で含み益の10%の税を払っておく方が有利である。逆にいうと、評価額が現在値の2.259倍以上に値上がりするまで保有する超長期運用なら、現時点のクロス取引による元本の低減を避けた方が良い。現時点では何もせず、単に運用を続けるだけの方が有利である。

 (3) の不等式の両辺の常用対数を取り、少し変形すると
  log(2.259) / log(1 + r) > n -------- (4)
となる。つまり、平均年利期待値rの投資信託の場合、[log(2.258) / log(1 + r)] 年以下の中期保有の予定なら、今の時点でクロス取引をした方が節税になり有利である。

 表20-29-1の統計パラメータ(http://williberich.at.webry.info/201307/article_1.html )を採用すると、先進外国株投資信託(MSCI Kokusai指数追従投資信託)の年利期待値は6.27%、新興国株式投資信託(MSCI Emerging指数追従投資信託)の年利期待値は6.29%である。したがって、現時点でクロス取引しておく方が節税で有利になるような運用年数(今後の運用年数)は次のようになる:
  先進外国株投資信託:13.39年以下
  新興国株式投資信託:13.35年以下。
両投資信託とも13年以下の中期保有(13年間の運用はかなりの長期投資ではあるが)の予定なら、現時点でクロス取引により現行の低減税率の恩恵を享受しておくと有利である。

 基本的には、先進外国株や新興国株の投資信託の14年以上の超長期保有であっても、保有投資信託の一部分はリバランスの時に売却しなければならい。従って、リバランスが見込まれる金額分の投資信託は現時点でクロス取引して節税しておくとよい。今後のリバランスで売却する口数は当該投資信託の全保有口数の内の1割を見込んでおくと充分であろうかと思う。ただし、一部分を節税クロス取引する場合は、クロス取引後の再投資の投資信託を保管する口座は、クロス取引しない大半の投資信託(超長期保有の部分)を保管している口座とは別の口座(別の証券会社ということになる)にする必要がある。さもないとクロス取引した部分としない部分の平均の売却収益が税務計算に使われ、一部分だけクロス取引した効果が消えてしまう。
 あるいは、クロス取引で再購入する投資信託銘柄を、売却した投資信託銘柄から変えてもよい。こうすると取引証券会社を増やさなくてもい。例えば超長期保有の投資信託はSMTシリーズのインデックスファンド、リバランス時の売買準備にクロス取引で再購入する投資信託はeMAXISシリーズのものにする。こうすると収益の税務計算は銘柄毎に平均化されるので、一部分のクロス取引であっても収益計算の平均化でクロス取引の節税効果が消えることはない。

 利用する証券会社数や保有する投資信託の銘柄数を増やすと管理が面倒で複雑になるから、細かい部分的なクロス取引節税などやめておこうという選択もある。一方、13年以内に家の建て替えや子供教育費で殆どの金融資産を現金化する見込みなら、全ての株投信を年内に売却し、再投資して元の口座で保管すればよく、話は簡単である。
 All or Nothingはいつでも話が判り易くて簡単で楽、でも結果として定量的センスが消失してゆくのは悲しい。

-------- 以下は重要な訂正 2013/12/16/ ------------

 国内外の債券の投資信託への税制を勘違いしていたため、2013/13/2/UP(2013/12/15まで訂正せず掲示)の記事の債券投信に関する部分が間違ってました。正しくは、国内外の債券の投資信託に由来する収益(普通分配金や売却益)への課税税率も2014年正月を境に増税されます。つまり、2014年正月までの税率は10.147%、正月以降は20.315%になります(株式の投資信託と同じです)。従って、債券の投資信託も投資信託基準価格が今の価格の2.259倍以下の値上がりしかしてない時点で売却の見込みなら、今クロス取引で含み益の10.147%の税を払っておく方が有利である。

 国内債券投信の利回りは2%未満という実績なので、基準価格が今の2.259倍以上になるのは遥か先(40年以上)のこと。国内債券の投資信については全額をクロス取引して節税しておくべきと考える。

 先進外国国債や新興国国債の投資信託も、最近1年に限れば基準価格値上がり率は20%以上と異常に高いが、これは急激な円安進行が誘起した短期現象に過ぎず、長期的には年利は5%未満の率でゆっくりと値上がりする。従って、20年を超える長期保有でやっと基準価格が現在値の2.259倍を超えることになる。やはり、先進外国や新興国の国債の投資信託も、年内にクロス取引しておいた方が節税になると思われる。

 最後に、投資信託の目論見書を(そして運用報告書も)時々は丁寧に読んでおくことが必要ということを身をもって悟りました。つまり、2013/12/16現存のeMAXISシリーズの全てのインデックスファンド(国内外の債券、株式、リートならびにバランス型のファンド)の請求目論見書それぞれの「手数料及び税金」の項目下の「課税上の取り扱い」の欄に「課税上は、株式投資信託として取り扱われます」という文章がありました。従って、eMAXISシリーズ(したがってSMTシリーズも同様)の全てのインデックスファンドの収益への税率は2014年正月を境に倍増され、全ファンドの収益通算や確定申告による損失の3年間繰り越しが可能であり、またNISA口座で購入管理すれば収益への課税が無い(ただしNISA口座で管理するファンドは損益通算できない点は不利)ということになる。
(2013/12/2/UP 2013/12/3/再購入時の銘柄変更を追記 2013/12/16/債券投信の記述の全面訂正)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック