(20-40) 実質実効為替レート建てで「最安全MMFセット」を組む

日本円実質実効為替レート建ての評価に基づき、先進国通貨MMFを組合せてμ/σ最大のポートフォリオを組む。

ここで求めた「最安全MMFセット」の配分比や求め方に少し改訂を加えましました:次項の(20-41)の記事を見てください。(2014/6/28)

日本で生活する我々にとって、日本国債、個人向け日本国債あるいは定期預金は最低リスクないし無リスク金融商品であると考えていた。しかし、資産の名目金額ではなく購買力を保全するためには、むしろ実質実効為替レート(Effective Real Exchange Rate, ERER)ベースで運用先を選ぶべきであると考えるに至った。そうなると便利な低リスク運用先として外貨MMFと日本の個人向け国債(変動10年)の組合わせで作るポートフォリオということになると考える。外貨MMFとしては先進国通貨のもののみを選ぶ。途上国通貨のMMFはリスクが高くなるので、最安全ポートフォリオ(元本割れ回避必要年数が最短のポートフォリオ)の構築には適さない。結論は、個人向国債(変動10年):ニュージーランド・ドルMMF=26%:74%の金額比のポートフォリオが最安全で、最近11年間の実績では投資後5年を経過すれば購買力(すなわち、日本円実質実効為替レート建評価値)の元本割れは無い。その詳細は以下の通りである。

外貨MMFは”現地通貨建てで元本割れが起きない”ことを原則に運用されている。個人向け国債は元本保証(勿論、日本円建てで)の中では高利回りである。したがって、ERER建てで(すなわち、購買力ベースで)元本割れ回避必要期間が最短となるポートフォリオを組むには、これらを組み合わせが適していると考える。

前項記事("http://williberich.at.webry.info/201406/article_1.html")に示したように、上記目的に適するのは日本円ERER建ての評価である。

外貨MMFの取引にはカブ・ドット・コム証券がよい。この証券会社の為替スプリット幅は小さく(つまり為替手数料が安い)且つ扱う外貨MMF種類数も多い。カブ・ドット・コム証券の扱う外貨MMFがニッコウのものなので、ニッコウMMFの利回り時系列データを選び、前項記事("http://williberich.at.webry.info/201406/article_1.html")に説明のようにして日本円ERER建ての外貨MMF元利合計の時系列データを作った。すなわち:
1. ニッコウ外貨MMFの年利回りデータを使う(目論見書に掲載のもの、年次データしか出てない);
2. 往復の為替手数料は今(2014年6月、カブドットコム証券)のスプリット幅を手数料率に換算し、5年間運用を仮定して、5年間の手数料として均分し、負の利息の扱いで計算に含める;
3. 分配金は20%の税引後再投資して元利合計を計算する;
4. 日本円建てMMFとしては、利息を税引後再投資した個人向け国債(変動10年)の元利合計を使い、5年間運用を仮定して、利回りは財務省発表値の4/5で計算した;
5. 各年末の現地通貨MMF元利合計に、みずほ銀行発表の外貨・日本円の為替レートの年末値と、BIS発表の日本円ERER年末値を掛けて、当該時点の日本円ERER建てMMF元利合計値を得た。
この手順で算出した日本円ERER建てMMF元利合計値(2002年末に10円の投資を仮定)の常用対数を確率変数として統計処理を行い、以下に述べるような結果を得た。

まず日本円ERER建MMF元利合計の常用対数の経時変化を下の図20-40-1に示した。豪ドル、ニュージーランド・ドル、カナダ・ドルのMMFの利回りが高い(グラフが右肩上がり)。日本の個人向け国債(変動10年)運用の元利合計の日本円ERER建て元利合計は、変動幅が他通貨MMFのものに比べてかなり大きい。また、個人向国債元利合計の変動は、豪ドルMMFやニュージーランド・ドルMMFの元利合計とかなり大きな逆相関を示している。米ドルMMFの変動幅は小さいが長期的には減価基調である。なお、この図に太紫線で示されているのは後述の「最安全MMFセット」の元利合計の常用対数の推移である。

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 (図をクリックすると大きな図が出ます)

これまで、米ドルや豪ドルなどの外貨の価値が変動して為替レートが動くと考えていた。しかし、図20-40-1を眺めると、むしろ外貨・円為替レートを動かしている大きな要因の一つは日本円の購買力変動で、それに加えて外貨の価値変動も加わって、外貨・日本円為替レートを大きく動かしているように見えてくる。為替レートは10年ないし15年周期で大きく波打っている様にずっと感じていたが、国際分散投資における為替リスクは極めて大きい。日本円実質実効為替レート建(すなわち、日本円の購買力)で金融商品価格を評価すると、外貨だけでなく日本円にも大きな為替リスクがあることを「陽」に含めることになる。そのため、元本割れ回避必要年数は、日本円建てで考えるときに比べて、長くなる筈である。そして同時に、”日本円購買力”の為替リスクを「陽」に考慮することにより、国内資産への過剰投資(ホームバイアス)を順当に避けることができると期待する。

図20-40-1に示した各通貨MMF元利合計の常用対数の推移に基づく統計パラメータは表20-40-1のようになる。

画像
  (表をクリックすると、拡大した表が出てきます)

この表の統計パラメータを使って(すなわち、対数正規分布に基づく推計)、元本割れ回避必要年数が最短のポートフォリオ(すなわち、μ/σ期待値が最大になるポートフォリオ)を組むと、表20-40-1の下段に太字で示したような結果が得られた。各通貨MMFへの投資配分比は
  豪ドル:日本個人向国債:ニュージーランド・ドル:米ドル:カナダ・ドル
  = 0% : 26% : 74% : 0% : 0%
となる。このポートフォリオの期待μ=0.0101、期待σ=0.0238、μ/σ期待値=0.425となり、元本割れ確率17%以下(確率変数<μ - 1×σ)になるために必要な運用年数は5.5年である。期待μの真数換算値(年利の幾何平均表示の期待値)は年利2.4%であり、かなり高い利回りになっている。このポートフォリオを「最安全MMFセット」と呼ぶことにする。このポートフォリオ算出には、いつものように、タロット氏の効率的フロンティア計算シート(MS EXCELマクロ;http://tarot-mpt.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/_ver110_a933.html)を使っている。この計算シートの公開は本当に有りがたい。

この「最安全MMFセット」の運用実績は、図20-40-1の太紫線で示されている。これを見ると、過去11年間の場合には、投資後5年経過したら元本割れは回避できている。この11年間にはリーマンショックという世界規模金融危機やクロダ・アベノミクス政策による日本円価値の急落があった(2014年6月現在、まだ進行中?)が、それでも投資後5年経過で「購買力」の元本割れは回避できている。しかし注意してほしい:統計処理などを通して恣意性は排除されてはいるが、過去11年間のデータを基にして最安全ポートフォリオを組んだので、このポートフォリオの過去11年間の成績には「後出しじゃんけん」の色彩があり、都合良過ぎる推計になっている可能性は高い。

なお、「最安定MMFセット」がニュージーランド・ドルMMFと日本個人向国債だけの構成になったのは次の理由によると考えられる: (1)単独でμ/σ比が高いのは豪ドルMMFとニュージーランド・ドルMMFの二者、(2)二者の内で他の通貨とより強い負の相関をもつのはニュージーランド・ドルMMF。かくしてニュージーランド・ドルMMFがポートフォリオの中核要素となり、(3)ニュージーランド・ドルMMFの変動幅を抑える要素として、これと強い逆相関の個人向国債(変動・10年)が組み合わされ、かくしてμ/σ比の期待値が最大となるポートフォリオ「最安全MMFセット」が上記のように構成されたと説明できる。

次のステップで、ここで求めた「最安全MMFセット」と、日債、外債、日株、外株、EM株の日本円実質実効為替レート建評価値の時系列データを基に統計処理を経て、運用期間別に適したポートフォリオを組んでゆく。狙い通りに、順当なポートフォリオが組めるといいのだが、さてどうなるか?
(2014/6/23/UP)

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