(20-43) 実質実効為替レート建のポートフォリオ構築方法の再々考、その1

ポートフォリオを構築するとき、資産評価(つまり、元利合計の評価)の基底通貨として「日本円」でなく「日本円の実質実効為替レート」を選ぶというのは、かなり良い選択だと思う。なお、資産評価を実質実効通貨建てで行うということは、非常に大雑把な言い方では、ドル建てで行うということに近い。

資産額評価に使う基底の通貨の選択がポートフォリオ構築に多大な影響を及ぼすことは、次のような場面を考えてみると判り易い:日本の平均株価(例えばTOPIX)が下落し、同じ期間に大幅な円高が進行した場合について(例えば、リーマンショック当時のような場合)、簡単な数値を使って考えると次のようになる:
 TOPIX: 1000 → 900
 日本円実質実効為替レート: 100 → 120
 (定義により、円高では実質実効為替レートが大きくなる;$/\等の為替レートとは逆方向の数値変化)
この場合、日本円建てで評価すれば、日本株への投資は10%の損失を被っていて、「日本株に投資していて評価損を被った」ことになる。しかし、これを 日本円実質実効為替レート建てで評価すると、評価額変化は
 1000*100=100000 → 900*120=108000
であり、日本株への投資の果実は
 900*120-1000*100=8000
となり、この期間の投資収益は8000/(1000*100)=+8%である。「日本株に投資していて評価益を得た」ことになる。つまり、投資の成果を「円建て」で評価するか、「日本円実質実効為替レート建て」で評価するかによって、投資成果の評価に大幅な差異が出てくる。このようにして資産評価をどの通貨建てで行うかによってポートフォリオの組み方が大幅に異なってくる。その原因は、「 日本円実質実効為替レート建て評価」を使うと、為替リスクが海外投資のみならず国内投資にも存在することを表立たせるからである。

日本国内で生活しているからと言って、資産を日本円建てで評価するのが妥当とは限らない。日本の輸出額と輸入額の合計は151兆円(日本貿易会、2013年)であり、国内総生産(GDP)は482兆円(内閣府、GDP統計、2013年)に対する割合は31%である。つまり、我々の国内での経済活動の金額の30%が貿易に関わっている。そして海外との移動の容易さ・素早さの順は、まずお金(外国為替)、次に物(物資の輸出入)、最後に人(長期出張、移住)や工場移転であろう。したがって、為替の変動は数か月から数年の遅れで国内生活の物価や収入に反映されてくると考えられる。また、エネルギーは人間活動の基盤であるが、日本はその殆どを海外からの輸入に頼っていて、エネルギー価格も為替に直結して変動し、これもある程度の遅れを伴って生活全般に大きな影響を及ぼす。こう考えてくると、資産評価を「日本円実質実効為替レート建て」で行うことは、日本円建てで行うのと同程度に理に適っていると考える。

ところが、いざ日本円実質実効為替レート建てで債券や株式の指数の時系列データをグラフ化し、またこれらのデータからリスクやリターンを初歩的で単純な統計処理(つまり素人にできる程度の統計処理)で求めてみると(20-42の記事: http://williberich.at.webry.info/201407/article_1.html )、海外先進国の株式(MSCI Kokusai 指数)と国債(Citigroup WGBI指数)のみが妥当な投資先となり、新興国株式(MSCI EM指数)への投資は、リターン/リスク比が悪くて不適切との統計パラメータが求まってしまった。また国内投資については、最近20年間のデータで見ると、日本株(TOPIX)のリターンが負であり、日本債券(Nomura BPI)への投資のリターン/リスク比も極端に悪い。こうして国内の株式や債券への投資も不適切ということになってしまった。この結果は「投資先の分散が長期運用のリスクを下げる」という思いに反するので、どうしたものかと行き詰まり立ち止まってしまった。よく言われているように、リターンを過去の短い期間のデータから予測するのは困難なのであろう。

統計処理に基づいてポートフォリオを組むのは、過去と同様のことが将来も起こるという予想に基づいている。この方針とは全く異なって、運用は世界平均について行けばよいという考え方に基づいてポートフォリオを組む方法もある。世界中の人々は生活を豊かにすることを目指して様々な試行錯誤を繰り返し、その中で有効だったものを残して、全体としては豊かになってゆく。こう考えると世界各国にその経済規模に比例して投資し、その成果の世界平均を手に入れればよいと考えるわけである。この考え方を採用すると、株価指数や債券価格指数の時系列データの統計処理も、指数を円建てにするか実質実効為替建てにするかという問題を考えることすらも、直接的には必要ない。必要になるのは世界各国のGDP(あるいは、各国の株式総額や債券総額)だけである。しかも、三井住友アセット・マネッジメントから「世界経済インデックスファンド」という投資信託が売られていて、この投資信託の投資信託説明書にGDP比が資産運用に便利な形で纏められていて、次の通りである:
  2013年 日本 6.8%; 先進国(除く日本) 54.7%; 新興国 38.5%
このGDP比を基にして「世界経済インデックスファンド」は次の比で各地域に分散投資している:
  日本 10%; 先進国(除く日本) 55%; 新興国 35%。
株式にも債券にも上の三地域にこの比で分散投資している。そして (全株式):(全債券)=1:1 の投資金額比になっている。

このような、世界平均に追従する運用という考え方を基にすると、幾つかのポートフォリオの構築法とその運用成果の推測法を思いつく。

1) この「世界経済インデックスファンド」の実績を調べて、将来の基準価格の範囲の目安を統計的に予測する。残念ながら、このファンドの歴史は2009年1月以降の6年間しかない。
2) 日本、先進国(除く日本)、ならびに新興国の株式指数と債券指数それぞれに追従する投資信託に対して、GDP比に比例させて投資するポートフォリオを構築する。この場合、債券:株式の投資比をパラメータにしてリターン、リスクを調節できる。但し、新興国の債券指数の長期データを持ち合わせてなく、しかも新興国の債券投資のリスク(ランダムな変動幅)は大きいと考えられるので、新興国債券へのGDP比例枠は先進国(除く日本)債券投資枠の中に加え込んでしまう。

次回以降の記事で、上記1)や2)の方法でポートフォリオを組んで、それぞれのポートフォリオの将来を予測(あくまでも目安の予測)してみる予定である。

こんなことを考えながらここ数カ月間モタモタしていたら、日銀の黒田総裁の量的緩和拡大宣言により、日本円は暴落し、日本の株価指数は暴騰した。平時の先進国でもこんなことが起きるのかと驚く。世界の株価も大幅に上昇した。もう少し早く「日本円実質実効為替レート建」で組んだポートフォリオに移行していたら国内債券への投資割合を減らし、海外投資割合を増やせていたのに、残念である。儲け損ねたのではない、貯めてきた老後資金を守り損ねたである。でも、ここで焦ってはならない。長期資産運用にとって、焦りは危険である(自戒)。
(2014/11/2/UP)

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