(20-45) 日本円実質実効為替レートの中期&長期推移、ポートフォリオ構築法との関係で

まず「世界経済インデックスファンド」の円建基準価格と実質実効為替レート建基準価格の異同を調べる。図20-45-1に円建基準価格(黒線)と実質実効為替レート建基準価格(赤線)の経時変化を示した。

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ファンド開始(2009年1月)から2012年6月初めまでは、黒線も赤線もほぼ平行して価格変動していた。つまり日本円実質実効為替レートは安定していた。ところが、2012年6月以降、黒線(日本円建基準価格)が突然上昇し始めて2013年5月までの1年間に亘ってこの急上昇は続いた。同じ1年間に赤線(日本円実質実効為替建基準価格)の値動きに異常は無く、ゆっくりとした基準価格上昇が進んでいた。2013年6月以降は、赤線と黒線は再びほぼ平行な価格上昇に落ち着いている。ただし、黒線の方がやや大きな傾きで上昇しているかの様に見える。2012年6月からの日本円建基準価格(黒線)の1年間の急上昇は、ひとえに円安(外貨高ではない)の急速な進行によってもたらされた見かけだけの基準価格上昇に過ぎない。

そこで、このファンドの開始(2009年1月)以降の日本円実質実効為替レート(BIS, narrow index)の経時変化を図20-45-2に示した。

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2009年1月から2013年6月までは、日本円実質実効為替レートは±5%程度の変動を伴いながら緩やかな円高が進んでいた。ところが、2013年7月から急速な円安が進み始め、1年後の2014年5月までに日本円実質実効為替レートは25%もの幅で大きく下落した。しばしばこの円安進行はアベノ・クロダノミクスによる円安のように言われているが、それは間違いである。図20-45-2の為替レート変化のグラフに、第2次安倍内閣発足、黒田日銀総裁誕生、金融緩和第1弾(いわゆる黒田バズーカ砲第1弾)、金融緩和第2弾(黒田バズーカ砲第2弾)を赤四角点で記入したが、円安は安倍内閣発足の半年前から始まっている。黒田金融緩和第1弾が出た後、むしろ急激な円安進行は収まったというべきであろう。これから類推すると、2014年10月末の金融緩和第2弾は為替レートを短期的には動かしたが、15%を超えるような大幅な為替レート変動をもたらすとは思えない。

では、2012年夏から1年間で25%もの円安進行の原因は何だったのだろう。素人の思い付きで、エネルギー政策の転換かもしれないと思い、東日本大震災と原発事故、それに引き続くエネルギー政策(再生エネルギー全量買取制度と全原発停止)の施行月を黒丸点でグラフに描き込んだ。これらのエネルギー政策の転換が2012年後半からの大幅円安の原因だったという方が、このグラフには合う。エネルギー政策転換→経常収支悪化予測→円安 というようなことなのかな?でも、このメカニズムに対する合理的で定量的な説明が無ければ、この話は単なる思い付きでしかない。

もっと長期的に日本円実質実効為替レートの経時変化を調べて図20-45-3に示した。長期間の、したがって大きな幅の為替レート指数変動なので、縦軸の日本円実質実効為替レートの常用対数をプトッロした。1973年から1995年までは円高基調で変動していた。この間の為替レート変化の一次回帰線(黒直線)とその式を黒文字(変数xは1900/1/1からの経過日数)で示した。回帰線の傾きは平均年率2.8%での円高進行を示している。ところが、1994年、1995年頃を境にして、日本円実質実効為替レートの変化の仕方が円安基調に変わっているのが図20-45-3から読み取れる。1995年以降の為替レート変化に対する一次回帰線(赤直線)の式(赤文字)の傾きは、平均年率1.5%で円安が進行していることに相応する。

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黒直線や赤直線で示した長期平均の為替レート変化傾向に乗って、1年ないし2年の内にレートが常用対数表示で0.1-0.15、真数表示で25%-40%にも及ぶ大きくて急速な為替レート変化が5年から10年位の周期で繰り返し起こっている。為替レートの変動幅は極めて大きく、一旦変化が始まると極めて速くレートが変わってしまうことが図20-45-3から読み取れる。

これまでこのブログでは(そして殆ど全てのポートフォリオ構築の説明の本やブログでも)、日本円の購買力は一定不変で、米ドルやユーロ等の外貨の価値が変動して為替レートが動いていると理解してポートフォリオを組んでいた。円建て指数の統計パラメータをベースにする限り、そういうことになる。世界分散投資ポートフォリオにおける国内債券投資の役割は、低リターンではあるが極めて低リスクであり(値動き幅が桁違いに小さい)、しかも他の金融商品指数(MSCI KokusaiやCitigroup WGBIなど)と逆相関傾向なので、海外投資の運用成果の過大な変動を抑えることにあり、国内債券投資の割合が多くなっていた。

一方、日本の国債残高がGDPの2倍(2014年:日本の借金1000兆円、GDP490兆円)に達し、しかもまだ国債残高の増加が続いている。黒田日銀総裁は「消費税10%を前提に、日銀は2014年10月末の追加緩和を行った」と言っている。一方、安倍総理は消費税増税先送りのために2014年12月中に国会解散をするらしい。日本経済舵取り役の両船頭がそれぞれにちぐはぐな方向に舵取りをしている。国内債券投資が低リスクではなくなる可能性が大きくなっていることを心配する。だからと言って、国内債券から全面撤退してその金額の全てを海外債券や海外株式に運用先を変更というのも情緒的すぎる。何か新しいプリンシプルを見つけて、頼りない予測や感情に流されないようにアセットアロケーションの変更を行いたい。

そういった状況の中で、日本円も国際経済の中に置ける購買力の揺らぎとして為替リスクを負っていて、日本円の国際的購買力は日本円実質実効為替レートで表されているということに注目した。そして日本円実質実効為替レート建ての金融商品指数に基づいてポートフォリオを構築するということにした次第である。
(2014/11/18)

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