(20-46) 日本円実質実効為替レート建の2014/11/1付けポートフォリオ

政府による国債発行の残高の巨大化、日銀の異次元金融緩和とインフレ推進(穏やかなとの形容詞付ではあるが)など、日本円や日本国債のリスクが高まるかもしれない政策が進められている。これに対応するには、国際経済の中における日本円の購買力を表す指数である日本円実質実効為替レート建てで資産運用を考える方が、日本円建で考えるよりも合理的であると考える。

なお、投資信託などの金融商品の日本円実質実効為替レート建の基準価格は次式のように計算する:
  日本円実質実効為替レート建基準価格=円建基準価格 × 日本円実質実効為替レート 。
ここでは、日本円実質実効為替レート (Effective Real Exchange Rate of Japanese Yen)として、BIS が発表する narrow indeces (http://www.bis.org/statistics/eer/index.htm) を使う。この為替レートは1ヶ月間平均値が翌月の16日以降に発表されるので、直近のレートは前月の値で代用する。そして、投資金額配分比はある瞬間における比率なので、円建比率と¥ERER建比率の間には差がない。ポートフォリオ全体の評価値は円建と¥ERER建の間には当然のことながら差が有り、その経時変化にも差が生じる;¥ERERは時の経過とともに変動すからである。

日本円実質実効為替レート(\ERER)建の金融商品指数の推移を、ここではBIS narrow indexを使う)建の金融商品指数の推移を、その常用対数のプロットで図20-46-1に示す。データの採録期間は、MSCI Emerging markets 指数(新興国株価指数)の最も古い手持ちデータの日付け(1987/12/31)以降とした。このグラフにおいて、通常の日本円建ての金融商品指数の経時変化グラフと比べてもっと顕著な差異は、国内債券指数(赤グラフ)の変動の幅の方が、先進国国債指数(黒緑グラフ)の変動幅よりも大きい点である。 国内債券指数の変動は日本円実質実効為替レート(茶色グラフ)と並行していて、国内債券のリスクが日本円実質実効為替レート変動から生じていることがよく判る;当たり前ではあるが。しかも国内債券のリターン(右肩上がりの傾き)は先進国国債の傾きよりも小さい。よって、\ERER建ての金融商品指数に基づいてポートフォリオを組むと、国内債券への投資ウエイトが格段に小さくなると予測される。

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図20-46-1の指数変化から統計パラメータを算出する。具体的には、図20-46-1の指数対数プロットに基づき、対数正規分布の考え方でのリターン(μ)、リスク(σ)ならびに指数相互間の相関係数を求めて、表20-46-1に示した。

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表20-46-1のリターンをリスクに対してプロットすると、図20-46-2のようになり、¥ERER建金融商品指数のリスクとリターンの関係が直観的によく判る。残念ながら、国内株式インデックスへの投資は長期的には損失をもらたす可能性が高い。国内債券への投資は正のリターンをもたらすが、投資に際して取るリスクに対してもたらされるリターンが少し低い。

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    (図をクリックすると拡大図が出てきます)


こうして、世界経済ならびに日本経済の基調が大きく変わらない限り、つまり今後数年間の短期間については、投資に適したポートフォリオは、先進国国債(Citigroup WGBI)、先進国株式(MSCI Kokusai)を中心とする投資の組合わせになると予測できる。

まず短期ポートフォリオとしては、表20-46-1のパラメータに基づき、ネットネーム「タロット」氏が公開していて、いつもお世話になっている「効率的フロンティア計算シート Ver.1.1.1」(http://tarot-mpt.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/_ver110_a933.html)を用いてμ/σ比最大(つまり、元本割れ回避に必要な運用期間が最短)のアセットアロケーションを選ぶと、次の結果を得る:
アセットアロケーション
  日債:外債:日株:外株:EM株=3:82:0:13:2
そのリターンとリスク(年倍率常用対数表示) 
  μ=0.0171、σ=0.0334
このポートフォリオのリターンを真数の幾何平均期待値で表すと、年利4.0%、真数のリスクの目安値は年利表示で8.3%になる。1987年12月以降の毎月末にこのポートフォリオに投資したとして実績を調べると、満5年以上のBuy&Hold運用(リバランスなし)を実施していれば元本割れは回避できている。1987年12月以降の5年間運用実績の成果は、年利表示で2.2% ± 1.0% であった。なお、ここでいう運用実績は、実質実効為替レート建の運用成績であって、日本円建の運用成績ではない;念のため。

次に、長期間の投資に対しては、世界経済の基調も今後変わるかもしれない。そして表20-46-1の統計値は過去のデータなので、遠い将来に対しては有用性は減少する。そこで、日本、先進外国、新興国それぞれの国・地域のGDPに比例させたアセットアロケーションを採用し、全債券:全株式の投資比のみをパラメータとして中長期のポートフォリオを構築する。つまり世界経済の成長の平均値に並走する運用を目指す。「世界経済インデックスファンド」を参考に、債券:全株式=50:50辺りのアセットアロケーションが与えるμ/σ比から検討してみる。また、新興国の国債の指数(JPモルガンGBI-EM指数など)の長期間時系列データを入手できないので、債券投資は日本債券:先進国国債の投資比を日本GDP:(先進国GDP+新興国GDP)に変更して投資する。つまり、新興国国債への投資分も先進国国債購入に充てる。GDP比としては2013年の値、日本:先進外国:新興国=7:55:38 を使う。

超長期ポートフォリオは株式100%投資という高リスク高リターンのポートフォリオにする。つまり、 日本株:先進外国株:新興国株=7:55:38 のアセットアロケーションとなる。リスク・リターンの目安値を表20-46-1を使って計算すると、年間倍率の常用対数表示で、μ=0.187、σ=0.0768となり、真数のリターンの幾何平均期待値は4.4%、相応するリスクは20.2%である。1987年12月以降の各月末投資を追跡してみると、13年間以上のBuy&Hold運用で元本割れは起きてない。運用期間に少し余裕を付け加えて、この超長期ポートフォリオは15年以上の運用に適していると判断する。1987年末以降の各月末投資の16年間運用の実績を年利で表示すると、5.0%±2.1% であった。

長期ポートフォリオは「世界経済インデックスファンド」と同じにして、債券:株式=50:50 の投資比を使うと、日本債券:先進外国債券: 日本株:先進外国株:新興国株 =4:46:3:28:19 のアセットアロケーションとなる。このアセットアロケーションの1987年12月以降の運用実績では、10年間以上の運用で元本割れは起きてない。よってこのポートフォリオは運用期間満10年以上の運用に適していると判断できる。

中期ポートフォリオは、[(短期ポートフォリオ)+2×(長期ポートフォリオ)]/3の投資比率にする。つまり、日本債券:先進外国債券:日本株:先進外国株:新興国株 =4:58:2:23:13 のアセットアロケーションを選ぶ。過去の運用実績では、7年間運用で元本割れは回避できている。よって、この中期ポートフォリオは満7年以上の運用に適している。

このようにして構築した運用期間別ポートフォリオとそのリターン・リスクの期待値ならびに運用実績を表20-46-2に纏めて示した。5年以上経過した後に使う(取り崩す)予定の資産を、使用予定時期に合わせてそれぞれの運用期間別ポートフォリオに投資・運用すると、元本割れを避けつつ高いリターンで運用できる;つまり各個人(家族)に適した投資、個別にリスク管理の行き届いた投資が可能になる(筈である)。

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   (表をクリックすると拡大した表が出ます)

5年以内に使うお金は投資せず、取り敢えず、定期預金や個人向国債などの、元本割れリスクのないもの(日本円で考えての無リスク金融商品)に振り向ける。日本で生活している限り、リスク商品に投資できないお金については、日本円のリスク(陽には物価変動リスク、その上更に日本円の為替リスクも陰に含まれている)に否応なく曝されるが、これはやむを得ない。だからこそ選挙権もあり、その行使が必要になる。また、家族や個人の想定外緊急事態に備える「生活防衛費」も個人向国債と定期預金で保有しておく。なお、ここで言う「個人向国債」とは、変動金利の償還期間10年の個人向国債である。この変動10年個人向国債は、インフレに進行時には金利上昇が有る筈なので、インフレに強い“定期預金”として働く筈である。しかし最近は、「日銀によるマネタイゼーション」というキーワードに合わせて「金融抑圧」というキーワードがチラホラし始めている。「金融抑圧」というキーワードは、変動10年個人向国債が必ずしもインフレに対して“強く”は振る舞ってくれないかもしれないということを意味している。国の借金がGDPの2倍に達してかつ増額が続いており、一方で少子化なのでこの借金を返す人の数(労働人口)はこれから減少することが確実である。こういった厄介な時代においては、老後資金の蓄積と防衛も厄介なことになる。 

従来の日本円建評価に基づくポートフォリオ(例えば、(20-36)の記事:http://williberich.at.webry.info/201401/article_1.html)に比べると、今回の実質実効為替レート建評価に基づくポートフォリオでは国内債券インデックスファンドへの投資比率が極端に減少し、同時に海外金融商品への投資比率が高くなっている。この投資先の変化をどの程度の時間をかけて行うか、厄介である。半年か1年間くらいで投資比率変更を済ませるのか、5年位の期間を掛けてゆっくりと投資先変更を進めるのか、迷う。

先進国債券から先進国株式や新興国株式への乗換のような海外金融商品間の乗換えは、為替リスクが小さいので、1年間くらいの短期間で乗換えてよいと考える。一方、国内債券から先進国や新興国の株式や債券への乗換えは、為替変動の大波に不利に乗ってしまう可能性が今は高いように思う(今は円安期なので)。5年、7年といった長い期間を掛けて少しずつ乗換えるのがいいのか、それとも多少の損失の可能性を担っても、もっと短い期間の内にポートフォリオ変更を済ませる方がベターなのか、まだ迷う。いずれにしても新しいアセットアロケーションは決まったので、投資比率変更を早く始めるに越したことはない。

最後に、本業に忙しい現役サラリーマンにとって便利なバランスファンド3本を三井住友トラスト・アセットマネジメントが提供している。40歳以下の人は「世界経済インデックスファンド(株式シフト型)」一本に積立投資すれば、ここの記事で提案しているような運用に近い投資が可能になる。このファンドでは、債券:株式=25:75の比率で世界経済に対して各国のGDPに比例した投資ができて、高リスク高リターンであり、運用期間を長く取れる若手向きの投資である。40-50歳のサラリーマン向けには、債券:株式=50:50の比率の中リスク中リターン投資になる「世界経済インデックスファンド」の積立投資、そして60歳以上になったら長い運用期間は取れないので、債券:株式=75:25の比率の低リスク低リターンの「世界経済インデックスファンド(債券シフト型)」の積立投資にすればよいと考える。定年退職後になって暇ができてくれば、生涯収支概算表を作り、自分自身の貯蓄とその取り崩し予定に適したポートフォリオを組み立てて運用を進めればよいと考える。
(2014/11/26/UP) (2014/11/30/一部修正) (2014/12/4/一部追記)

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