(20-54) 金融商品を売却するときのドル・コスト法

 老齢になって年金生活に入り、保有投資信託売却による生活費補填が必要になったら、一定口数の投資信託を定期的に売却するのが、より有利な売却方法となる。これが売却におけるドル・コスト法である。毎回一定金額を得るように定期的に保有投資信託を売却するのは不利な売却法であり、これは避けるべきである。以下に少し変わった方法でこれを説明する。

 資産運用に関する本を読み始めた初期に戸惑った用語の一つが「ドル・コスト法」だった。少し調べると、次の様に理解できた:「ドル・コスト法」とは、投資信託などの金融商品を買うとき、毎回一定額の資金を使って定期的に買い進める、つまり定額積立法で金融商品を買うことを指す。そうすると投資信託の基準価格(以下では価格と書く)が安い時には多くの口数の投資信託を買うことができ、価格が高い時には少ない口数しか買えない。こうして保有投資信託の平均購入単価を、同一期間の投資信託の平均単価よりも低く抑えることができる。単価の変動がランダムで予測できないときには、この定額積立方法が有利な投資信託購入法となる。

 上述のような金融商品購入方法を(簡単に言えば、定額積立購入方法)を「ドルコスト法」という理由がわからないので、少し調べてみた。「ドル」が付くので語源はアメリカの投資用語の筈である。検索してみると、「Dallar Cost Averaging Strategy 」であった。直訳すると、「ドル経費均分戦術」であり、意訳すると「原資均分法」である。つまり、「ドル・コスト法」、別名「原資均分法」、英語では「Dallar Cost Averaging Strategy 」とは、次の文章(1)を指す:
    【一定の時間間隔で 、
     毎回一定量の”原資”を手放し、
     得られる量の”金融商品”を入手し続けるのが、
     ”金融商品”の有利な入手方法である。】 ----- 文章(1)
これには条件が付いていて、その条件文とは
    【単位量の金融商品入手のために手放すべき
     原資の量(つまり商品の単価)が
     ランダムに変動し続けているのならば】 ----- 文章(2)
と表現できる。つまりドルコスト法とは、文章(2)+文章(1)である。

 投資信託を買い進めている時期(つまり現役時代)には
   原資=現金 ----式(1)
   金融商品=投資信託 ----式(2)
とおき、式(1)と式(2)を文章(1)に代入して、
     【一定の時間間隔で 、
      毎回一定量の”現金”を手放し、
      得られる量の”投資信託”を入手し続けるのが、
      ”投資信託”の有利な入手方法である。】   
という文章を得る。これは広く使われている意味での「ドル・コスト法」である。

 次に、年金生活に入り、年金不足分を、現役時代に蓄積した投資信託の売却で賄うときのことを考える。この時には、個人が保有しているのは投資信託であり、これを手放して引き換えに入手するのは現金なので、
   原資=投資信託 -----式(3)
   金融商品=現金 -----式(4)
を文章(1)に代入するとよい:   
     【一定の時間間隔で 、
      毎回一定量の”投資信託”を手放し、
      得られる量の”現金”を入手し続けるのが、
      ”現金”の有利な入手方法である。】  
となる。ここに、「一定量の投資信託」とは、一定口数の投資信託のことである。この文章は文頭に書いた「投資信託を売却するときのドル・コスト法の文章と同一内容である。勿論、文章(1)成立の前提となる文章(2)に式(3)と(4)を代入した文章は満たされている。

 「ドル・コスト法」というのは、源用語に有ったAveragingに対する訳語を省略したために、意味不明な奇妙な用語になっているが、資産運用の世界では広く一般に使われ既に普及した用語なので、今更別の用語に変更するのは混乱を招くので不適正だと思う。でも、「原資均分法」ならば、現役時代の資産蓄積期における投資信託購入にも、また、年金生活に入って資産取り崩し時期における投資信託売却にも共通する考え方とそれを体現する用語の候補として魅力的と思うのだが・・・・。しかし、新しい用語や訳語の決定権はトップランナーにのみ許される権限であり、残念ながら、2番手以下のランナーにはそのような権限は無い。
(2016/3/12/UP)

追補1.  数学をきちんと用いたドル・コスト法の丁寧な説明と、また同時に、「ドル・コスト法の数学論理を投資信託等の売却時に適用すると、一定口数ずつ(一定金額ずつではなく)の売却の方が有利であることが分かる」との説明は、「Kapokの資産運用」というブログに既に書かれているのをみつけた(http://kapokpokpok.blog63.fc2.com/blog-entry-185.html)。但し、Kapok氏のブログの末尾の一文(スポット買いによる取得単価の期待値はドル・コスト平均法の平均取得価額を上回る、すなわち、スポット買いは不利であることが分かります)は、Kapok氏の早とちりまたは勘違いで、間違いです。なぜなら、一括投資における金融商品購入単価の期待値は、(期待値計算における架空の)多数回一括投資の投資金額は一定値の筈なので、ドル・コスト法で購入した金融商品の平均購入単価と一致しますから。
 なお、Kapok氏のブログの「数学を用いた説明」は、前提や比較対象をきちんと記述し、論理&数式の展開を丁寧に書き、”既知の定理”の出典や証明法の引用も元を辿れるように記載されている点など、私には分かり易かった。
(2016/3/16/追記)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック