(20-55) 売却益の税は支払繰り延べがお勧め

 運用方針の変化等により金融商品を買い替えたとき、売却収益があったとする。一方、長期保有するつもりの投資信託には評価損があるとする。このとき、税金の支払い時期について二つの選択肢がある。
(1)今年の売却益の税を今(今年年末に)支払う;
(2)評価損のある、ただし長期保有予定の投資信託を一部売却して、前記売却益を打ち消して(損益通算)今年は税金を支払わない。(2)の場合、評価損実現のために売却した投資信託は現在の値下がりした価格で買い戻して保有を続ける。そうすると、将来この投資信託を売却した時の収益は大きくなり(評価損確定のためのクロス取引が無かった場合に比べたとき)、より多額の税を支払うことになる。つまり、(2)の方法は税金支払いの繰り延べであるが、税額は今年の税額よりは大きくなる(なぜなら投資信託の平均購入単価が低くなるから)。

 ここで検討するのは、税を上記(1)のように今支払うのと、(2)のように将来の増額にもかかわらず繰延するのと、どちらが得かという点である。そこで、具体的な計算のために、いくつかの仮定を置く(最終結論は、長期平均利回りが正である限り、仮定した値には依存しない):
1. 長期保有予定の投資信託の、今後の長期平均利回りは4%であるとし、そして15年後に全部売却するものとする;
2. 当該投資信託の現在の評価損は現評価額1万円当たり千円であり、この投資信託を現評価額で300万円分を保有しているとする(つまり現有投資信託の全購入費用は330万円であった);
3. 当該投資信託以外の金融商品の売却益は20万円であるとする。

 (1) (税金を今年支払う場合) 今年の売却益20万円に対する税(分離課税、税率20%)は4万円であり、税金支払い後の残金16万円で長期保有予定の投資信託を購入する。かくして、当該投資信託を現在の評価額で316万円分を保有することになる。これを平均年利4%で運用し、15年後に売却すると
  316万円 × 1.04^15  = 569万0981円  を得る。
売却益は 
  569万0981円 - (330+16)万円 =  223万0981円 であり、
20%の分離課税後、全部で
   569万0981円 - 20%× 223万0981円 = 524万4785円  
を手にできる。

 (2) (税支払い繰り延べの場合) 当該投資信託を現評価額で200万円分売却すると、その売却損失額は
  200万円×(330万円 - 300万円)/300万円=20万円
となり、他の金融商品の収益20万円を損益通算により打ち消すことができる。そして、他の金融商品の売却益20万円と当該投資信託売却で手にした金額200万円、合計220万円で改めて当該投資信託を購入すると、今後保有し続ける投資信託の現評価額は320万円である。またその全購入経費は今回売らなかった分の110万円と今回新たに購入の220万円を合わせて、
  110万円 + 220万円 = 330万円
である。 現評価額320万円の当該投資信託を15年後に売却すると、手にできるのは
  320万円 × 1.04^15 = 576万3019円
となる。購入経費は330万円だったので、収益は246万3019円であり、それに対する20%の税金支払うと、
  576万3019円 - 20%×246万3019円 = 527万0415円
が手元に残る。これは(1)の場合よりも
  527万0415円 - 524万4785円 = 2万5630円
得である。

 結論:税金支払いはできるだけ繰り延べする方が得である。金融商品売却益が出たときは、評価損のある投資信託等を売却して損益通算で全体としての売却益を打ち消し、残金で同じ投資信託を再購入するのは、税金支払い繰り延べに有効な方法となる。

 なお、このようなことが起こるのは、資産運用による収益が複利で増加するためである。もし資産運用が単利でしか増額しないのなら、(1)でも(2)でも、最終的に手にする金額は同一になる。その証明は簡単で、上の数式の中の「×1.04^15」を全て「×1.04×15」に書き換えてみると分かる。
(2016/6/17/UP)

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