(20-61) 老後、金融危機に出会ったら:「世界経済インデックスファンド」の基準価格推移

老後は年金と貯蓄の取崩しで生活する。その場合、手持ちの運用資産の評価額がどのように推移してゆくか知っておきたい。現役なら、投資信託の暴落が起こっても積立投資を続けていれば、暴落を次の高収益の糧にできるが、新しい収入の無い老後では、暴落を収益の糧にはできず、暴落の悲哀を被るだけである。

調査のために選んだのは三井住友トラストAM社の「世界経済インデックスファンド(株式シフト型)」(ここでの略称:株式型)、「世界経済インデックスファンド」(略称:半々型)そして「世界経済インデックスファンド(債券シフト型)」(略称:債券型)の三つのファンドである。株式型は高リスク高リターン、半々型は中リスク中リターン、債券型は低リスク低リターンである。

前回の(20-60)ブログに書いた仮定の下で世界経済インデックスファンドの過去の基準価格を再現計算する。すなわち、次のような仮定(近似)を置く:1)日本:先進外国:新興国の投資ウェイトは、最新の比、日本:先進外国:新興国=10%:55%:35%に固定して計算する; 2)リバランスは毎月末に、無税として行う; 3)基準価格は税引無しの分配金再投資の値を選ぶ;4)信託報酬その他のコストを陽には計算に含めない; 5)2008年以前の新興国債券指数を先進国債券指数で代用する; 6)その他の計算詳細は、ファンドの交付目論見書に従う。 

高リスク高リターンの”株式型”と低リスク低リターンの”債券型”の基準価格の推移を、1987年末(この時以降なら、MSCI-EM株価指数を入手できる)以降に対して計算し、結果を図20-61-1に示す。

画像
(図をクリックすると拡大図が出ます)

この図の実線は、1987年末で積立投資を終え(つまりこの時、定年退職した)そのまま運用資産を放置した場合の、配当込基準価格(つまり運用資産評価額)増加倍率の推移を示す。赤実線は資産全額を”株式型”で運用の場合であり、青実線は”債券型”の場合である。この場合、2017年1月末までの29年間全期を通じて赤実線は常に青実線を上回っている。

しかし赤実線が好成績というのは偶然であって、2000年3月末から放置された場合の倍率推移を点線で図中に示したが、”株式型”の赤点線はその後2017年1月末までの17年間にわたって青点線の”債券型”の運用成績を常に下回っている。2000年3月に65歳で定年退職とすると、2017年には82歳であり、老後生活の後半に入っていて、17年は長い。さらに長期間運用すると、いずれ高リスク高リターンの株式型の基準価格が債券型を追い抜くが、それが退職30年後になっては、その時生きてる確率は低い。

図20-60-1の4本のグラフを見比べると、株式型と債券型に同金額ずつ配分して老後生活に入るのがよかろうと考える。もしかしたら、株式型と債券型のうち、老後生活費補填用としての定期売却に、その時々に値下がりの小さい方(または値上がりの大きい方)を選ぶことが出来るかもしれない。もしできないのなら、素直に半々型の「世界経済インデックスファンド」だけ持って老後生活に入ればいい。これまで欲張って、リスクの大きいことを無視して高リターンの株式型を選んでいたが、必ずしもそれがベストではない。

ここで少し横道にそれる。図20-61-1を見ると、1987年頃は長期投資に適した時期で、その後の評価額上昇は良かったが、これに比べ、2000年以降の投資はこの図の点線グラフが示すように評価額上昇は遅々として進まず、また実線グラフの上下ふらつき幅は最近になって大きくなっている。最近は昔に比べて投資に向かないようになってきている。こういった印象を持つかもしれない。でもこれは大いなる錯誤である。債券や株式は配当・分配金を再投資すると、複利(いわゆる鼠算)で増加する。複利で変動する金融商品価格の長期間推移を見る場合、真数(基準価格そのもの)ではなく、その対数を縦軸に選んでグラフ化しないと、グラフは間違った印象をもたらす。

そこで、図20-61-1の4本のグラフを、縦軸を対数にして描きなおすと図20-61-2のようになる。

画像
図をクリックすると拡大図が出ます)

赤と青の点線グラフは上方に平行移動すると、それぞれ同色の実線に正確に重なる(対数プロットなので当たり前)。赤と青のグラフの右肩上がりの大まかな傾向も(対数グラフの傾きは、年倍率の対数に比例する)、またそれらの短期上下ふらつきの仕方も、図に示された範囲内で長期に見た場合、大きな変化はない。つまり、投資環境の大きな変化は無いと言える(インデックスを通して世界へ分散投資しているからこれが言える)。
(2017/2/17/UP)(2017/2/18/図20-61-1と図20-61-2の間の数パラグラフを一部修正)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック