(20-62) 各国の株価指数の長期推移を比較する:個人向け国債は将来も無リスクか?

一カ月くらい前の新聞に「ダウ平均最高値更新」という見出しが出ていた。一方、日経平均は1989年末(バブル崩壊直前)に4万円(38,915円)だったが、今はその半値の2万円周辺で推移している。日米の株価指数の長期間推移の差は余りにも大きい。なお、ここでいう「長期」とは、一人の人間が現役で働ける期間が40-50年なので、その1/4、10年程度もしくはそれ以上の期間を指す。

株式はお金の貸し借りの一形態であり、利息(配当)は有るとき払いであり、しかも元本保証も無い。その代わり、株式の長期平均での元利合計は銀行預金よりはかなり多くなるのが辻褄の合う話だと考える。それゆえ長期的には、配当込み株価指数はダウ平均のように上昇するのが当たり前で、日経平均のように長期的に下落か横這いが続くのは異常だと考える。

「アメリカは良い、日本は良くない」では能が無い。そこで、先進各国の平均株価の長期推移を比較して、そこから何が見えてくるかを調べることにした。

世界各国の株価指数を手軽に調べるに適しているのはMSCI社のホームページであり、そしてMSCIの株価インデックスは多くの投資信託会社が指標として採択していて信頼度も検証済みである。

MSCIインデックスにはPrice, Gross, Netの三つがあるが、ここでは税引前配当再投資を前提として算出されるGross指数を使う。その心は、元利合計の推移が投資先や預金先の選択基準になるからである。Standard指数を使うが、これは大型株と中型株を合わせた量(その国の全株式の85%)を対象とする指数である。

比較の対象国は、G7構成国(日本、米国、カナダ、英国、仏国、独国、イタリア)、そしてGDPの大きなその他の先進国(MSCI指数の分類上の先進国)としてスイスとオーストラリアを付け加えた。次に2010年ユーロ危機を引き起こした問題国群、ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペインを経済状態の悪い国として比較のために選択した。この4か国とイタリアを含めた計5か国が2010年ユーロ危機の問題国であった。これら各国の指数に加えて、先進国平均という意味で、MSCI KOKUSAI指数も調べる。KOKUSAI指数は日本以外の先進22か国(アメリカ、・・・、香港、シンガポール、イスラエル)の平均株価指数であり、そのうちの66%を経済規模の大きな米国が占める。

上記13か国(と地域)の株価指数がMSCI社ホームページ上に出揃うのは1987年12月末(これは日本のバブル崩壊3年前)分以降なので、この時以降2017年2月末まで29年2カ月間の月次データをもとに各国の株価指数を比較する。MSCI GROSSドル建指数に、その時々のドル円為替レートを掛けて得た円建指数について、月間値上がり倍率の常用対数の分布を調べた。その結果から各国株価指数上昇の平均年利(指数(対数ではなく真数)では幾何平均)と”年利換算”標準偏差(平均値周りでのばらつき幅:末尾「補足」参照)を求めた。13か国それぞれの平均年利をその”年利換算”標準偏差に対してプロットしたものを図20-62-1に示した。

画像
(図をクリックすると拡大図が出ます)

ユーロ危機の問題国家をこの図の中では赤で示した。危機の引き金を引いたギリシャの株価指数は大幅に変動しつつ、長期平均としては年利-0.8%で減額を続けてきた。イタリア、ポルトガル、アイルランドの株価指数上昇率は正ではあるが他の先進諸国に比べてかなり悪い。スペインの株価指数の長期平均の値上がり率は8%で悪くないが、しかし2008年リーマンショック以降は2017年現在まで株価指数は回復してなく、中期的には経済状況は良くない(MSCI社のホームページでスペインのGROSS指数のチャートを調べると分かる)。

一方、スイス、アメリカ、カナダ、オーストラリアのMSCI GROSS指数の上昇は年利7.5%以上、標準偏差は26%以下である。なお年利7.5%なら、10年間で株価指数値は2倍以上、30年間なら8倍以上になる! ヨーロッパ内の先進国、イギリス、フランス、ドイツの株価指数上昇は北米の国よりやや年利が低いが、でも6%以上の平均年利で標準偏差は28%以下である。ドイツの平均年利と標準偏差は思ってたよりは悪い。

KOKUSAI指数は年利7.4%、標準偏差20%である。

日本のMSCI GROSS指数の直近29年2カ月間の値動きは、平均年利-0.8%、標準偏差20%である。日本のMSCI株価指数は小幅な変動を伴いつつ、ゆっくりと減額を続けている。ユーロ危機の際の問題児国家よりも日本の経済の方がよほど問題を抱えている。

上記のように日本の株価指数が長期にわたって低下を続けている上に、国債残高はGDPの2倍を超え、年金の純債務はGDPの3倍を超えているとのことである。

1990年末の日本資産バブル崩壊後、日本の株価指数は長期減額を始めてしまい、一向に回復しない。この問題を解き明かす力の無い身では、ここから先は、我家の家計を守るという対策話になる。

”もしもの時”のための”生活防衛資金”として 半年ないし2年間分の生活費程度を無リスク金融商品で保有しておくのが望ましいとされていてる。無リスク金融商品の代表は円定期預金や個人向け国債(変動、10年)である。でも上述のような経済状況では、これら無リスク金融商品が購買力ベースでみても無リスクであるという好ましい状況が何時まで続くかということに不安を感じてくる。「金利をコントロールする」、「インフレが望ましい」という二つの文章は、「変動金利の個人向け国債ならインフレが進んでも安心」とは言えないという意味にも解釈できる。個人向け国債(変動、10年)でも安心できないのなら、金利がもっと低い定期預金はなおさら安心できない。次の項で無リスク金融商品の代替を考える。


--- 補足:対数統計の平均値μと標準偏差σの真数換算について ---

株価指数の1年当たりの値上がり倍率の常用対数のデータ集団について、平均値μと標準偏差σが求まったとする。値上がり倍率の対数が正規分布している場合、任意の1年間の値上がり倍率の常用対数が μ ± σ の範囲内(それゆえ、幅は 2σ )に入る確率は概ね2/3である。この確率2/3の範囲を真数に換算すると
10^(μ - σ) ~ 10^(μ + σ) 
である。この指数(真数)で表した年利の幅の1/2は  [10^(μ + σ) - 10^(μ - σ) ]/2 である。本文中で「”年利換算”標準偏差」と表現しているのはこの「[10^(μ + σ) - 10^(μ - σ) ]/2 」のことであり、株価指数そのもののランダム変動の幅の目安となる。

次に、株価指数値上がり倍率の対数の平均値μを真数に換算すると、10^μ となる。この値は真数の値上がり倍率の相乗平均である。この相乗平均を年利で表すと、10^μ – 1 となる。本文中の平均年利はこの「10^μ – 1」を表す。なお一般に、
  相乗平均≦相加平均 
である。

最後に、余分かも知れないが、「%」という”単位”について: 
「%」の文字は「100で割る」という演算(計算手順)を表す
と理解されているので、「%」の文字を「÷ 100」に、相互に書き換えることが出来る。例えば、
0.05 = 5 ÷ 100 = 5%
(第二等号部分で、 ÷100 = % を代入した)
となるので、
 0.05 = 5%
という等式が書ける。
したがって常用対数統計の平均値について、例えばμ = 0.012 のとき、
10^μ – 1 = 10^ 0.012 – 1 = 0.028 = 2.8%
となる。

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