20-73. 世界の債券指数と株式指数のチャートと統計パラメータ

インデックス投資の基本となる諸指数の常用対数の経時変化を図20-73-1に示した。
この図を利用してもらう為に簡略な説明をしておこう。
なお、このブログでは「対数」は常用対数を意味し、logは底10の常用対数を表す。

本題に戻る。株式指数はMSCI社が公表している三つの、配当再投資を仮定した株価指数(Japan、KOKUSAI、EM;net、standard;ドル建て指数値を円建てに換算)から、三井住友トラストAM社のSMTシリーズの当該投資信託の信託報酬を差引いた値をここでは使っている。

債券指数はSMTシリーズ投資信託基準価格(分配金の再投資を仮定して基準価格を計算しなおしている)を使っている(国内債券、グローバル債券、新興国債券)。更に指数のSMTシリーズ投資信託の生れる前の過去のデータは、該当する公表指数値や投資信託を探して指数の連続性を保つよう定数を掛けて補正し、長期データとしている。長期チャートを作る際には、債券指数値推測に対しては色々と工夫が必要であった。つまり、近似が使われている。チャートが分からないよりは、近似的なものでも推測できている方が遥かによい。

次に、元本a、年利rの金融商品をx年間保有した結果得られる複利の元利合計をyとすると、
y = a * (1 + r)^x  (* は掛算記号、^ はべき乗記号)
となる。この式の両辺の対数を取ると、
log(y) = log(a) + x * log(1 + r)
となる。つまり、金融商品の元利合計(または投資信託の再投資基準価格)の対数を運用・経過年数に対してプロットすると、傾きが log(1 + r) の直線(r が一定としての話)となる。我々が関心を持つのは年利 r だから、このプロットでは傾きだけが重要である。図20-73-1ではこの考え方に基づき、各プロットは上下に平行移動させて、各指数の log(1 + r) を比較しやすいようにしている。

図20-73-1.gif

この図では、右肩上がりの勾配の大きな指数ほど過去の平均年利が大きかったことを示す。

MSCI Japan Net Standard 指数(図中、桃色プロット、日本株)の最近30年間の様に平均的には右肩下がりというのは、分散長期投資するとき、運用損を被る確率が高い。少なくとも最近30年間の長期平均なら、そういう傾向である。でも1970年以降直近までの超長期を見ると右肩上がり。あるいは、2010年以降直近までの中期で見ても日本株は右肩上がりとなっている。こういうプロットを見るとき、どのようなプロット期間が選ばれているかには注意を要する。その意味では、超長期プロットにおける指数変動の傾向を知っておくことが大事である。今後の日本株の指数が過去10年間の延長上を動くのか、あるいは過去30年間の平均の延長上を動くのか、判断は難しい。

図中に赤線で示した日本債券の指数の変化は、他の5つの指数に比べて、上下変動幅が格別に小さい。右肩上がりではあるが傾きは小さい。将に低リスク・低リターンの典型例である。こういう特徴は短期投資に向いている。

これに対して先進外国債券指数(緑プロット)、新興国債券指数(こげ茶プロット)は右肩上がりでやや大きめの傾きではあり、上下変動幅は日本債券に較べるとかなり大きい。この上下変動をドル/円為替レートの対数プロット(図中、黒プロット)と較べると、短期的には平行しており、先進外国債券指数や新興国債券指数の変動の大きな部分が為替変動によりもたらされていると分かる。この図の中のプロット全体を比較して、先進外国債券指数と新興国債券指数は中リスク・中リターンであり、中期的投資に向いている。

長期的には一番大きな傾きで右肩上がりのプロットとなっているのは、MSCI KOKUSAI Net Standard 指数(紫プロット、先進外国株(除く日本))と MSCI EM Net Standard 指数(青プロット、新興国株)である。そして両者とも上下変動幅が大きい。しかしよく見ると、両者の変動の仕方には多少差が有る。2009年頃のリーマンショックからの回復時における変動の様子がかなり異なる。また、2003年以降のIT不況からの回復の傾きも、両者で大きく異なる。これらを勘案すると、両指数への投資は高リスク・高リターンであり、長期投資に向いている。また両者の変動の仕方が異なるので、両者に混ぜ混ぜに投資しておくと、投資全体の評価額の変動を抑えられる。

各指数の長期データの解析を、上の様な定性的コメントから定量的な話に進める。

指数の過去の変化を調べるのは、将来を予測する為である。最も単純には、各指数増分の年利表示は長期的には概ね一定値と仮定して将来を予測する。したがって、過去の指数値の 対数が、直近に向かて直線的に変化しているとみなせる部分(期間)だけをここでは重視する。

図20-73-1のチャートの内、最近から過去に向かって遡り、プロットの平均線が直線とみなせる範囲(期間)を太線で示した。この太線部分のプロットに対する一次回帰線(最小二乗法を使って描いた直線)を点線で、その式を点線に添えて書き込んである。これら太線部分を対象に、対数正規分布という考え方で長期データを解析する。この考え方では、log(1 + r) がその平均値μのまわりでランダムにばらついているとする。「ばらつき」の尺度が標準偏差σである。金融界では金融商品の評価増分の平均値をリターン、増分のばらつきの標準偏差をリスクと呼ぶ。更に、図20-73-1のプロット相互間の相関係数ρも算出して表20-73-1にまとめた。再度確認しておくが r はそれぞれの指数値増加を年利で表したものである。なお、表中で「EM」とは新興国(Emerging Markets)を表す。

表20-73-1μσρ.gif

対数の平均値や標準偏差では、その値のままでは指数値変動の実感的理解が出来ないので、これらの値を年利(対数ではなく、真数)に換算し、これを表20-73-2に示した。

表20-73-2R∑.gif

対数統計の平均値μを年利真数に順当に換算すると、
R = 10^μ – 1
となる。1 + R には年倍率の幾何平均というれっきとした定義と一致する。一方、対数統計の標準偏差σを年利真数に換算する方法は一義的ではない。ここでは正規分布における ±σの幅が確率概ね2/3で起こると期待される幅を表すことを念頭に、
∑ = {10^(μ + σ) - 10^(μ – σ)}/2
で換算した。なお、年利 r が小さいときは、 log(1 + r) ≒ 1 + 0.4343 × r の直線関係になるので、真数の統計値と対数の統計値の換算値は完全一致に近づく。

実際に種々の期待値を計算するときは表20-73-1を使い、年利表示での目安値がほしければ表20-73-2を見ればよい。
(2019/9/15/UP) (2019/9/16/ 一部修正)

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