20-76. eMAXISファンドからeMAXIS slimファンドへの乗り換えの定量的検討

インデックスファンド投資において、実質コストが低率なものを選ぶべきで、コスト安のファンドが出てきたらそれに乗り換える(買換える)と良いと考えられる。一方で乗り換え時には、運用益の20.315%が税として差し引かれて運用原資の減額が起こる。定性的には、新旧ファンドのコスト差が大きく、乗り換え時点までの運用益が小さく、かつ乗り換え後の運用期間が長い場合は、乗り換えがお勧めである。ここでは話を一歩進めて、定量的にこの課題を扱い、乗り換えをする・しないの判断基準を計算する。

新旧ファンドが追従を目指す指数(例えば、MSCI-KOKUSAI指数)の長期平均年利を r とする。新旧両ファンドの実質コストの年利表示をそれぞれ c2, c1 とする。そうすると、
  旧ファンドの運用益の年利は r – c1
  新ファンドの運用益の年利は r – c2
(ここにc1, c2 の「1」と「2」はcの添字で、「1」は旧ファンドを、「2」は新ファンドを表す。後に出てくる y1、y2 についても同様である。)
である。大抵の場合は、新ファンドのコストの方が旧ファンドのそれよりも低率であり、
 c1 > c2
である。

現時点で保有している旧ファンドの評価額を a、その内の運用益を b とする。

現時点で乗り換えた場合、旧ファンド売却益から20.315%の税金が差し引かれるので、乗り換え後の新ファンドの原資は
a – 0.20315 * b
となる。
乗り換え後 n年間運用を続けるとすると、運用後の元利合計 y2 は
y2 = (a – 0.20315 * b) * [1 + (r – c2)]^n
になる。

一方で、乗り換えることなく、今後 n 年間を旧ファンドのままで運用を続けた場合の元利合計 y1 は
y1 = a * [1 + (r – c1)]^n
となる。

乗り換える方が有利なのは
y1 < y2   すなわち   1 < y2/y1
になるような n を求めればよい。
両辺の常用対数(底を10とする対数)をとって式を整理すると、
n > -[log{1 – (0.20315 * b/a)}] / [log{(1 + r – c2)/(1 + r – c1)}]    (1)
を得る。この式(1)が乗り換えをする・しないの判断の基準式である。

ここで具体的に計算してみよう。
旧ファンドとして 「eMAXIS先進国株式インデックス」、新ファンドとして 「eMAXIS slim 先進国株式インデックス」を選ぶ。両者はMSCI-KOKUSAI指数追従を目指し、この指数の長期平均年利は、大略 7 % である。すなわち、
r = 0.07
そして、新旧ファンドの実質コストはそれぞれ 0.167%, 0.667%, すなわち、
c2 = 0.00167
c1 = 0.00667
である。
今保有している旧ファンド「eMAXIS先進国株式インデックス」の評価額を1万円、その内の評価益を4750円とする。すなわち
a = 10000
b= 4750
これらの値を、先に求めたnの不等式に当てはめる。
(1)式の分子 = log{1 – (0.20315 * b/a)}
= log{1 – (0.20315 * 4750/10000)}
= -0.0441
(1)式の分母 = log{(1 + r – c2)/(1 + r – c1)}
= log{(1 + 0.07 – 0.00167)/(1 + 0.07 – 0.00667)}
= 0.002037
となり、これを (1) 式に当てはめると、
  n > 21.6
を得る。

上の計算は次のような事を示している。現時点での評価益が評価額全体の47.5%を占めるような「eMAXIS先進国株式インデックス」から、実質コストが安い「eMAXIS slim 先進国株式インデックス」に乗り換えるべきは、今後21.6年以上にわたって投資信託を保有する予定の場合である。21.6年は結構長い。

日本人の平均寿命は85歳辺り、年金生活に入るのは65歳、運用資産取り崩しは65歳から85歳(永眠というわけ)までで、その中央値は75歳。平均的な運用資産取り崩し年齢は75歳が目安となる。その21.6年前となると53歳。およその目安として、53歳以下の人は「eMAXIS先進国株式インデックス」から「eMAXIS slim 先進国株式インデックス」に乗り換えると良い。

余分に:
SBI証券で投資信託を保有している場合を考える。SBI証券は「eMAXIS先進国株式インデックス」保有金額の0.1%のポイント(1ポイント=1円。投信保有総額が一千万円以上なら還元率は0.2%に倍増する)を毎年付与していて、これを考えると実質コストは年利表示で0.1%減額されて
 c1 = 0.667% - 0.1% = 0.00567
となる。
一方、「eMAXIS slim 先進国株式インデックス」保有に対しては、年間、保有金額の0.03%のポイント還元があり、実質コストは
 c2 = 0.167% - 0.03% = 0.00137
となる。新旧両ファンドのコスト差は小さくなるので、n の値は大きくなり、
n = 25.2
となる。

なお、SBI証券のポイントを使うにはT-ポイントカードをSBI証券に登録しなければならない。すると、T-ポイント管理会社には、当該T-ポイントカードユーザの資産状況推測が可能になる。これまでは各ユーザがどのような消費傾向を持つかの情報しか掴めなかったのに、新たにそのユーザの資産状況を掴むことになる。消費と合わせて資産状況までT-ポイント会社に掴まれたくはない場合は、SBIポイント利用をあきらめることになる。

なお、ここで使った実質コストは https://diamond.jp/articles/-/131949  から得た。
r = 0.07 はマンキールの「ウォール街のランダム・ウォーカー」に挙げられている米国株の利回りの長期平均値を使った。
(2020/3/25/UP)

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