(3-6) 株高・株安の判断方法(株価のズレ率)

この節の要旨:MSCI World Index の円表示値の長期月次データの対数が直線の周りにばらついていることを基に、この中心直線と株価指数のズレを株高・株安の判断に使うことを検討した。“ズレ率”が10%を越えたら過剰株高/株安と判断できる。過剰株高/株安期は長いときは6年間程度続く。株安期に株式売却の羽目に陥らないよう、現金化前に6年の猶予を持って株式から債券への乗換を計画するべきと考える。
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 J. シーゲル著「株式投資」(日経BP)に、米国の平均株価にインフレ補正を加えた指数の対数の時系列データを長期間(1802年から2001年まで)に亘って年月日に対してプロットすると年利7%前後に相当する傾きの直線プロットになることが示されている。そこで、これに習って以下のようなグラフを作った。

 図3-2-1(2009/9/11/UPの記事)に示されていたように、2000年頃から後、世界の各国の株価の短期変動の相互連動性は極めて高い。収益を求めてお金が世界をかなり自由に移動し始めたためであろう。そこで国内外を含めて株式投資全般への判断基準として、1969年12月末以降の長期間データが無料公開されていて且つ調査の簡単なMSCI World Index,Net(先進23ケ国の税引き配当再投資株価の指数、米ドル表示)を更に円表示に換算した指数を算出しこれを利用する。このMSCI WI Net/\ 指数(円表示)の対数の時系列データをグラフにしたら図3-6-1のようになる。
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  (図をクリックすると拡大図が出てきます)

 このグラフを見ると株価の対数は、大局的には直線(中心線、図3-6-1では赤直線)をなし、その上下に月々の株価が揺動していると理解できる。そこで、この中心直線を1969年12月末から2009年3月末までの39年余りの期間に対して最小二乗法で求めると、年利換算値7.21% に相当する傾きの直線(図3-6-1の赤直線)が求まり、株価はこの直線の周りに散乱・揺動している。

 各時点における株価指数の赤直線からのズレが過剰な株高・株安であると判断する。この過剰な株高・株安を、ズレ率の%表示で図3-6-2に示した。ここに株価のズレ率(ここでは遥動率とも呼ぶことがある)とは、

    ズレ率=(指数値 - 中心線値)/中心線値 (%表示)
    (任意の時点で縦線を引き、この縦線と黒点プロットや赤中心線との交点値を読み取って上式で計算。
     計算は対数値を真数に換算して進める) 

を意味する。
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  (図をクリックすると拡大図が出てきます)

 このズレ率が±10%を越えたら過剰な株安期や株高期に入ったと判断してもよいであろう。図3-6-2を見ると、ズレ率10%以上の過剰株高・過剰株安の期間は案外長く、1996年11月から2003年3月までの6年半の株高期、2002年6月から2005年7月までの3年1ヶ月間の株安期、そしてかなり昔であるが1977年2月から1983年3月までの6年間などが長い期間の例である。図3-6-2を見ると、過剰株高期と過剰株安期が交互に繰り返されて、その間の移行期間に株価が赤直線に近い平均値近傍になる。株価が長期に亘って平均値になっているような株価平穏期のような期間は無い。

 なお、過剰株高・過剰株安期は長くても6年間程度なので、MSCI World Indexデータ採録期間が39年余りあり、線形回帰法により決定する中心直線の計算時期によるブレは、今(2000年以降)となっては さほど大きくはならない。つまり、図3-6-2の株高株安判断は、今後の判断方法として後追い説明(結果に合わせた説明)ではなく、有効な判断基準となると考えられる。
  
 各時点における過剰株高・安が判断できたら、株高期には株式(あるいはその投資信託)を購入せず債券購入(株価と債券価格は逆の値動きをするので)のみにし、株安期には債券購入を少なくして投資金額大半を株式購入に回す。また現金が必要なら、株高期に株式を売却し、株安期には債券を売却する。過剰株安期間は長ければ6年間程度続くので、6年間分の現金必要金額の債券投資を保有しておくべきである。そうすれば、現金の必要に迫られて、株安期に株を売って損失を出すことを避けることができる。特に、投資の現金化期間の前(例えば老後や、多額のお金が必要な子供の大学教育期間)においては、株高期に株式を売って債券(債券は値動きが小さい)に変えておくような配慮が大切である。

 世界株価(つまり、MSCI World Index, Net, 円換算)の長期間平均値からのズレ率(遥動率)が-30%を越えるような超弩級株安期は1969年以降現在までの40年間で3回起こっている。第2次オイルショック直前の1977年2月から1978年1月までの12ヶ月間が最も長く、この間に株価揺動率の最安値として1978年10月の-40%(瞬間値、その1ヶ月前後は-35%)が起こった。その他の-30%以下ズレ率までの先進国平均株価下落は、1995年5月・6月の2ヶ月間(世界資産バブル崩壊の結末期)と、2003年の2月・3月(米ITバブル崩壊の結末期)の2ヶ月間だけである。ズレ率-30%以下までの株価下落はこのように極めて異常な事態であり、かつこの目安で株安は結末期を迎えて回復に向かっている。つまり、超弩級の異常事態ゆえに大規模な対策が打たれて株価は持ち直す(つまり経済が持ち直す)というのが歴史の教える所である。その後に世界の株価がズレ率0%に戻るのには2年から5年を要している。その後は好景気に入り、金融救済の為に投入した多額のお金が原因となって次のバブルが進み、ズレ率+30%を越えると間もなくバブル崩壊を迎えて次なる株価暴落を見る。図3-6-2のグラフは投資家の欲望で巨大化した大蛇が欲と恐怖でのた打ち回っている様を表している(でも、欲と恐怖に駆られるのは投資家だけでなく、人間皆そうなのです)。しかし、その底に流れているのは、人々の向上意欲に支えられた経済の成長であり(図3-6-1の赤線)、我々は基本としてこの底流に着目して資産を運用する。のた打ち回る大蛇も多少利用するが、それはズレ率に応じた投資先の変更(アセットアロケーションの修正)である。

 翻って現時点(2009年10月)で今後の状況を考える。今回の金融危機による株価下落は、2009年2月・3月の最安値はズレ率で-55%を少し越えて、第一回目の底を打った。株価がかなり回復した現時点においても株価ズレ率はまだ-40%で、超弩級株安が続いている。これから再び株価が下落して2番底が来るかもしれないが、再下落が起こっても起こらなくても、今後暫く、株価ズレ率が-30%を越えた超株安の間は、一生に一度有るか無いかと言う程の長期株式投資開始/継続の好機である。一方、1年・2年といった短期投資には全く不向きで、危険極まりない金融状況と考える。2009年10月の今、もし長期投資に回せるお金(10年以上放置できるお金)が有ればこのお金を例えば24等分し、1/24のお金を毎月定期的に株式投資に回す。購入するのは、全世界の株式のみで、債券投資はしない。更に2009年秋の時点では円高なので、外国株式への投資を中心にするのが得策である。円高が続く間は、先進外国株:EM国株の投資信託で、これらを40:27=60%:40%の金額比で購入する。こうしてまだ低迷が続きそうな日本株式への投資を避ける効果も出てくる。円高が収まったら、日本株:先進外国株:EM株を33:40:27 の金額比で投資信託を購入する。世界株価(つまり、MSCI World Index, Net, 円換算)のズレ率が±10%以内の平穏範囲に入ったら、債券への投資も始める。これが、2009年秋以降の暫くの間の投資法(長期運用資金のみを対象とする投資に限る)と考える。(2009/10/11/UP)

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