(20-19) ハイリスク・ハイリターンと長期投資―その2

 ハイリスク・ハイリターンのポートフォリオへの投資には長期運用が必須であり、短期間の運用しかできないお金は低リスク低リターンのポートフォリオに投資しなければならない。この一般的な表現を、インデックス運用の場合の例で調べ、短期間とか長期間とかはどれくらいの年数かを具体的に見る。

 まず、(20-14)節で構築し、表20-14-2に纏めた超短期ポートフォリオ(年倍率の常用対数の統計パラメータ:μ=0.0030, σ=0.0025, μ/σ=1.22)と中期ポートフォリオ(μ=0.0120, σ=0.0176, μ/σ=0.682)それぞれに100万円を一括投資し、その後放置(Buy and Hold) したときの評価額(すなわち元利合計)の推移を、対数正規分布に基づいて推計したものを図20-19-1に示した。グラフは95%確率で出現が期待される範囲を(上限、下限を実線で、期待値(平均値)を破線で;短期ポートフォリオを黒線で、中期ポートフォリオを黄緑線で)表示している。具体的には前節の式20-18-3を用いて、z = 2 で上下限を、z = 0 で期待値を計算した。

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   (図をクリックすると拡大図が出てきます)


 この図から判る最も大事なことは、運用期間20年以上においては、低リスク低リターンの超短期ポートフォリオの95%出現確率上限(2本の黒実線の内、上側の黒実線)が、より高リスク高リターンの中期ポートフォリオの95%出現確率下限(下側の黄緑実線)よりも下になっていることである。簡単に言えば、超短期ポートフォリオ運用成績の幸運上限が、中期ポートフォリオの運用成績の不運下限よりも悪い成績になる。よって、低リスク低リターンのポートフォリオで長期運用するのは不適切な運用であり、長期運用は高リスク高リターンのポートフォリオで運用すべきである。

 一方、3年程度の短期間の運用期間しか取れないお金の場合には、超短期ポートフォリオに投資していれば下限でも元本まで戻っているが、中期ポートフォリオでは下限が元本の95%まで下がっており、投資時期が少し不運なら運用結果が元本割れになってしまう。従って、短期間運用しかできないお金は低リスク低リターンのポートフォリオで運用すべきである。

 以上を纏めると、よく言われているように、「長期間運用できるお金は高リスク高リターンのポートフォリオに投資するのが良く、短期間運用しかできないお金は低リスク低リターンのポートフォリオに投資し、2年(5年と言う人も居る)以内に使う予定のお金をリスク商品に投資してはならない」と言うことになる。更に付け加えれば、高リスク高リターンのポートフォリオでは運用初期に元本割れに出くわすこともよくあるが、これは長期間運用後に高リターンを手に入れるための代償であって、元本割れしてもそのままリバランスしながら運用を続けなければならない(続けざるを得ない)」。ただし、高リスク高リターンのポートフォリオは充分に検討された(投資先が世界の株や債権に合理的に分散されているべきである)ものでなければならない。高リスク高リターンのポートフォリオへの投資は、“積立投資”を利用して投資時期を分散しておくと(ドルコスト法)、投資初期の元本割れを小さく抑えることができる。表20-14-2に掲載した推奨投資時期分散期間よりも少し長い期間(表に掲載期間の1.5~2倍くらい)を取った方が良いように感じ始めている。

 なお、大恐慌直前のアメリカ株への幅広い分散投資を、辛抱強くそして配当を再投資しながら保有し続けていたら、購買力で評価すると、大恐慌の暴落開始後7年前後で元本は回収できた筈とのProf. Shiller (Yale Univ.) の研究が2009/4/28のNew York Timesに 紹介されているらしい(http://williberich.at.webry.info/201107/article_2.html )。辛抱強い長期運用が如何に大切かという実例である。

 次に、リスク・リターンの高低と成績の運用期間依存性をもっと丁寧に調べる。(20-14)節で構築し、表20-14-2に纏めた超短期、短期、中期、長期、超長期の五つのポートフォリオそれぞれに100万円を一括投資し、その後リバランスもせずに保有を続けた場合の評価額の推移を対数正規分布に基づいて推計した結果を図20-19-2に示した。実線は95%出現確率の評価額範囲の上限と下限を、破線は期待値(平均値)を表し、ポートフォリオの区別はグラフ線の色で示した。超短期ポートフォリオ:黒、 短期:青; 中期:黄緑; 長期:柿色; 超長期:赤。

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この図は込み入って見難いので、運用初期の20年間の部分を拡大して、図20-19-2(拡大)として下に示した。

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 高リターンの超長期ポートフォリオは必然的に高リスクであり、それ故、評価額推計下限(95%出現確率の範囲の下限)は25年という長い間にわたって元本割れしたままである。不運でも幸運でもない、普通の平均的な運用結果なら投資25年後には100万円の元本が340万円余の元利合計になっている。なお、(20-14)節の表20-14-2に載せた“適した”運用期間は、ポートフォリオによるが z = ±1.4 ~ ±1.7 (出現確率 83 ~ 91%)の下限でも元本割が無いという条件で選んでいる。

 運用ポートフォリオを選ぶ場合には、まず投資しようとするお金の寝かせておける期間(つまり運用期間)を判断し、次に平均的な成績(期待値、図20-19-2の破線グラフ)を参考にしながらも、不運なときの下限(図20-19-2の実線グラフ)をよく見て判断するのが良い。平均的な成績(期待値、破線グラフ)のみ、すなわちリターン(μ)のみを見て運用先を選ぶと大火傷を負う可能性が高くて危険である。

 最後に長期運用とリスクの関係について、ここならびに前節、(20-18)節、に記載したこととは全く異なる見解が、ブログ「ホンネの投資教室」に「第三十四回 資金運用における短期と長期について (1) 」というタイトルの記事として書かれている。「長期運用の利点は、投資信託の購入手数料が運用年数全体にに分散されて、1年当たりの手数料が軽減されることだけである。“長期運用のメリットは、厳密には、この点だけだ。”」と書かれている。これは間違っている。この記事はリターン零でリスクが非零の投資信託を仮定して長期運用のリスクを論じたために間違った結論を導いてしまった。だって、リターン零の投資信託に投資したら、長期運用だろうと短期運用だろうと、運用成果の期待値は当然ゼロになり、投資するメリットが無いのは自明でしょう。弘法も筆の誤りというべきか?
(2012/4/5/UP)

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