(20-31) 日米英独の現地通貨建て株価指数の経時変化の比較

 一国の多くの人々がもつ株式投資に対するイメージは、その国の株価の変化の仕方に依存する。また、一国の経済状況も株価変化に反映される。このような観点から、日米英独四ケ国それぞれの代表的株価指数(現地通貨建て)の経時変化を直近数十年分について調べた。こういった種類のデータをcsvフォーマットで簡単に無料で入手できるサイトは大抵アメリカにある。この記事で使うデータの全ても finance.yahoo.com からダウンロードした。

 株価指数や債券指数の変動の時系列データは、指数の対数を運用期間に対してプロットすると判り易いグラフになる(http://williberich.at.webry.info/200906/article_1.html ,  http://williberich.at.webry.info/200910/article_9.html )。その場合、大切なのは指数対数vs運用期間のプロットの傾きであって、
  グラフの傾き = 
      d(指数の対数)/d(運用年数) = 
                (1 + 指数の年利)の対数
である。ここに年利は分率表示であり、たとえば、年利が5%なら、0.05である。そして、複数の指数の対数の運用期間に対するプロットを相互比較するときは、各指数対数時系列データそれぞれの系列毎に任意の定数を加えて、グラフが重り合わないようにそれぞれの曲線を上下方向に平行移動してもよい、大切なのはグラフの傾きだけなのだから。

 こうして、日本=日経225平均(円表示)、英国=FTSE(英ポンド表示)、米国=SP500(米ドル表示)、独国=DAX(ユーロ表示)の四つの株価指数の常用対数の月初値の時系列データを指数評価日に対してプロットして、図20-31-1のグラフを得た。この図には、各株価指数対数の経時変化に対する一次回帰線(点線で表示)と回帰線の数式(式中のxは運用日数を表す;年数ではない点に注意)も示した。

画像
   (図をクリックすると拡大図が出てきます)

 この図から色々なことが見て取れる:
(1) 日本の土地バブル崩壊の株価暴落(1990年)は、他国の株価に殆ど何の影響も与えてない。つまり他国に迷惑を掛けてない。これは多分日本の金融界が鎖国状態で他国の資金流入を止めていたため、そして日本の経済規模が比較的小さかったためと推測される。一方、米国発のITバブル崩壊(2000-2003年)もリーマンショック(2008-2010年)も世界の株価暴落を誘発している。日経平均も引きずられて暴落した。
(2) 図示された各株価指数の一次回帰線の傾きから求まる各国株価指数それぞれの図示期間の平均年利は、
  日本(日経225平均、円建て) -2.6%
  英国(FTSE、ポンド建て)  +5.3%
  米国(SP500、ドル建て)  +7.6%
  独国(DAX、ユーロ建て)  +6.8% 
である。直近30年に亘って、日経平均の利回りが-2.6%というのは、米英独三カ国それぞれの株価指数の利回りが5.3%ないし7.6%と正でかつ充分大きい値であることと比較すると只事ではない、本当に只事ではない。

 よく投資先と投資時期の分散ならびに長期運用が株式投資の王道だと言われ、インデックス運用/パッシブ運用はそれに従っている。米英独ではこの見識は生きている。しかし、この王道に則って日本株式だけに投資していたら、元本が年利-2.6%で減額していたというのが、残念ながら最近30年間の悲惨な実績である。この間の日本株式への投資は、銘柄を上手に絞り込み(誰でもWarren Buffett氏になれるのならいいのだが)、株価暴落時に投資して株価が回復したら売るという短期投資のみが適切な投資ということになる。しかし株価変動の渦中では暴落の底も回復の丘や山も実際には識別できないので、結局のところ、株式投資は”株屋”がやる博打だとの一般的な認識が正しいということになってしまう。

 発展途上国の安い人件費や土地代に追い上げられて日本がデフレで不景気になると聞くが、米英独だって発展途上国の追い上げを受けているのは日本と同様だが、日本のような定常的株価指数下落は起きてない。日本の経済・社会システムの中に何か欠陥が生じて始めていると見るべきだろう。生産性の高い部門で挙げた収益を生産性の低い部分に注込んでしまう回路が太すぎて、日本の経済が疲弊しているような気がする。格差是正とか安全安心というキーワードからは、経済が立ち直るという香りはしてこない、それどころかむしろ只乗りと共同没落の臭いがする。社会主義国・共産主義国が疲弊して行ったのと類似したことが日本でも進み始めているのではないかと心配する。

 最後に、100万円を日経225平均の平均利回り-2.6%で20年間運用していたら59万円になり、原資の6割に減額している。それゆえに日本では株式投資と聞くと、心ある人々は眉を顰めたり一歩退いたりする。一方、1万ドルを米国SP500指数の平均利回り+7.6%で20年間運用していたら、4.3万ドルと原資は4倍以上にもなっている。だからこそ、アメリカ人と話すと「なぜ日本人は貯蓄といえば全部が銀行預金になるのか、どうして株式で運用しないのか」といぶかしむ。直近30年間(一個人の投資にとって、30年は充分長い期間である)の実績で見る限り、自国株式に投資している日本国民は直近30年間については「持たざる民への道」を歩んだのであり、同じ時期に自国株式に投資している米英独三カ国の国民は「豊かな民への道」を歩んだことになる。日本も何とかして「豊かな民への道」を歩めるようになってほしいが、貸借対照表を読み解く力量も経済学の素養も無い身では思い付きを述べる以上のことはできない。

 来年から始まるNISA制度を利用して株式投資の配当と運用益の(長期運用に対する)免税優遇措置を受けようとする場合、上述の大きな差異を意識しておくべきだろう。勿論、過去の実績がそのまま将来に向かって延長されるわけではないが、重い社会的・経済的変革もなくして日本の定常的株価下落傾向が改善することを期待するのは、残念ながら無理と思う。

 上の図20-31-1は現地通貨(日本株は円表示、米株はドル表示など)で見た各国株価指数の経時変化を示しているが、日本人が海外投資する場合は海外株価指数も日本円に換算して評価しておくべきである。なぜなら、日本人は労働で得た円を外貨に換えて海外に投資し、その運用結果を日本円に戻してから生活に使うのだから。先進外国の平均株価指数の日本円換算値の経時変化グラフは、既に図20-29-1(http://williberich.at.webry.info/201307/article_1.html )の黄緑色のグラフで示されている。現地通貨表示の図20-31-1を見ても、或は日本円換算値表示の図20-29-1を見ても、直近30年間の長期株式投資は、日本株のみへの分散投資では大きな損失を被り、海外先進諸国の株への分散投資では収益を得たという結果を示している。

 日本の株価指数が右肩下がりなのは、配当が減額し続け、あるいはまた企業の現在価値(企業の知的蓄積ならびに土地や所有機械等の現在価格など、企業価値の総額)が減額し続けていることの反映である。つまり企業の単位資本金当たりの「儲け」が減少し続けている。国内株価指数の下落をNISAや投資教育などで止める試みなどは的外れであり、それ故に無駄だと思う。
(2013/10/15/UP; 2013/11/4/一部修正ならびに末尾2節を追記)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック