(20-35) NISA制度をどう使うか

 個人の少額投資の収益を非課税にするNISA制度の運用が2014年正月から始まる。NISA口座の対象は株式や株式投資信託である。なお、税制上は、国内外の株式のみならず債券やRIETやそれらの組合わせの投資信託が株式投資信託に含まれる。具体的には各投資信託の目論見書で確認できる。

 一つのNISA口座は開設後5年間継続して終了する(非課税期間上限が5年)。口座は2014年から2023年までの10年間に各年1口座ずつ追加開設できる。口座開設の制度最後年2023年開設の口座が5年後の2027年末で終了して、NISA制度は終了する。一口座は最長5年で終了し、開設の年の1年間だけ100万円まで投資可能である。一人は最多(時期などに依存する)で5口座(合計金額500万円)まで開設可能。詳しくは、政府の広報(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201306/3.html )に出ている。

 しかし、NISA制度は非課税と引き換えに損失を認めない。その上、投資時期、非課税期間、口座枠非継続などで口座間が区切られているため、変にややこしくて勘違いしやすい。「非課税」につられて投資しても、口座終了時(5年後)に元本割れしていると、その後の投資継続上は余分な増税に終わる。日興証券のNISA説明の「よくある質問」(http://www.smbcnikko.co.jp/nisa/qa/index.html )などにその例が出ている。

 NISA制度は株式等を新規購入して5年間保有することを基本にした制度である。投資の観点からは5年は短かすぎる。投資期間5年なら、元本割れは普通に起こることである。「2年(人や本によっては5年とも)以内に使うお金を投資に回してはならない」といわれている程である。また、投資においては投資先の分散と投資時期の分散が大切なのに、最長5年の制限を気にして正月明け早々に一気に投資して投資時期分散に失敗する動機を与えている。一方で投資時期分散でゆっくりと積立投資をすると結果的には運用期間が短縮されて、これも元本割れの確率の上昇をもたらす。という次第で、NISA口座で購入保有する金融商品の選択幅や投資スタイル(一括投資か積立投資か)は限られたものになる。ここでは、投資信託の基準価格の年間変動倍率の対数が正規分布になっているとの仮説を基に、NISA口座での投資に適した投資信託の選択を行う。

 ある投資信託基準価格(あるいは株価)の1年間の変動倍率の対数(このブログでの「対数」は常用対数を意味する)の平均値 {(1+年利)の対数の平均値}をμ、標準偏差 {(1+年利)の対数の標準偏差} をσとすると、n 年経過の間の株価変動倍率の対数の期待値はn * μ、標準偏差は (√n) * σ になる。n年経過後に投資が元本割れになっている確率は、z を標準正規分布の確率変数として、
 n * μ - z * (√n) * σ < 0 ---- (1)
となる z の出現確率に等しい。不等式 (1) は不等式 (2) のように変形できる:
 z > (√n) * μ / σ ---- (2)

 2013年6月末までのデータに基づく統計パラメータの表20-29-1 (http://williberich.at.webry.info/201307/article_1.html ) に掲載したμとσの値を使って不等式 (2) と標準正規分布表(ネット上で入手 http://staff.aist.go.jp/t.ihara/normsdist.html )に基づき求めた、幾つかのインデックスファンドとそれらを組合せたポートフォリオの5年運用時(つまり、 n = 5 ) の元本割れ確率を下に示した。

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投資信託種別      (√5) μ / σ    5年後元本割れ確率
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国内債券        1.16          12%
先進外国国債     1.11          13%
先進外国株式     0.74          23%
新興国株式      0.51           31%
旧短期         1.66            5%
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ここに「旧短期」とは、μ / σ比最大となるように構築したポートフォリオで、日債:外債:日株:外株:EM株=80:14:0:6:0の投資金額比でインデックスファンドを組み合わせたものあり、μ=0.0087 [真数換算値2.0%], σ=0.0117 [便宜的な真数換算値2.8%]である(参照:表20-29-1の脚注 http://williberich.at.webry.info/201307/article_1.html )。


 結局、NISA口座で運用するのに適したポートフォリオは、「旧短期」ポートフォリオであり、
  日債:外債:日株:外株:EM株=80:14:0:6:0 
の金額比で構成される。2014年の場合はNISA口座運用開始に伴い年初は株価や投資信託基準価格の異常な値上がりもありうるので、2月、3月位の2回に分けて投資すればよいと考えている。この用心深いポートフォリオでも5年後に元本割れになっている確率が5%程度はある。個別株や内外の株式の投資信託といったリスクの大きい金融商品のみをNISA口座で運用するのは元本割れの危険性が大きいのでやめておく方が無難であろう。

 NISA口座で上記「旧短期」ポートフォリオの割合で投資すると言っても、特定口座や一般口座で現在保有する投資信託を売って乗り換えてはならない。なぜなら、乗り換え時点での含み益への20%課税で元本が縮小し、その不利益をNISAの5年間運用への非課税では取り戻せないからである。結局、これから現金を新規に投資する場合だけしかNISA口座は使えない。しかも投資対象は低リスク低リターンのものに限られる。これらNISA口座の不便は次の3点に由来する:(1)5年という短い運用期限、(2)NISA口座での損失を他口座での投資収益と損益通算できない、(3) 一旦売ると空いた枠はもう使えないので、長期運用に不可欠のリバランスができない。

 こうしたことを考えて、NISA口座は作ってはおくが、積極的には使わないことを基本にすることとした。

なお、2014年から2018年までのNISA口座での投資については、5年間の非課税期間終了時に元本割れしていたら、その投資を次のNISA口座に継続すれば(ロールオーバ)、NISA口座での運用期間は10年まで延長できる。運用期間を10年に延長すると、元本割れの確率はかなり低減できて、NISA口座利用の幅は広がる。しかし、5年後のロールオーバ手続きが容易でかつ受付期間にかなりの余裕ないといけない。基本5年の制度に「わざ」を使って10年に延長するのは、5年後の思考や手間に余分な負担をかける。つまり、ロールオーバを必須とする投資方法は、それ自身がリスク(不確実性の幅)の増大をもたらす点に留意しておくべきと考える。
(2013/12/26/UP) (2013/12/28/ロールオーバについて追記)

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